2022年03月08日

住宅価格は上昇加速。オフィス空室率は上昇一服も賃料下落が継続-不動産クォータリー・レビュー2021年第4四半期

基礎研REPORT(冊子版)3月号[vol.300]

金融研究部 准主任研究員   佐久間 誠

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2021年の国内経済は一進一退の動きとなった。住宅市場は、価格が騰勢を強めるなか、販売状況は底堅く推移している。

オフィスセクターは、東京都心の空室率上昇に一服感もあるが、賃料下落が続いている。東京23区のマンション賃料はピークアウト感がみられる。物流賃貸市場は、首都圏・近畿圏ともに需給環境は良好である。

1―経済動向と住宅市場

2021年10-12月期の実質GDPは、前期比+1.3%( 前期比年率+5.4%)と2四半期ぶりのプラス成長になった。2021年9月末の緊急事態宣言の解除を受けて、外食、宿泊などの対面型サービス消費が高い伸びとなったことに加え、供給制約の緩和に伴う自動車販売の増加などから、民間消費が成長を牽引した。

ニッセイ基礎研究所は、昨年12月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2021年度が前年比+2.7%、2022年度+2.5%、2023年度+1.7%を予想する。実質GDPが消費税率引き上げ前の直近のピーク(2019年4-6月期)に戻るのは2023年4-6月期の見通しである。また、コアCPI上昇率は、2021年度が前年比0.0%、2022年度+0.9%、2023年度+0.7%と予想する。

2021年10-12月の新設住宅着工戸数は22.0万戸( 前年同期比+6.1%)となった。2019年同期比では▲1.4%となり、コロナ禍前の水準近くまで回復した。

2021年10-12月の首都圏のマンション新規発売戸数は14,156戸(前年同期比+4.8%)と増加した。2021年の販売戸数は33,636戸(前年比+23.5%)となり、2019年の水準(31,238戸)を上回った。

東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2021年10-12月の首都圏の中古マンション成約件数は9,737件(前年同期比▲0.5%)と高水準で推移している。2021年通年の成約件数は39,812件と2019年の38,109件を上回り、過去最高を記録した。

日本不動産研究所によると、2021年11月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前年比+11.7%となり(26カ月連続上昇)、データが公表されている93年6月以降で最大の上昇率となった[図表1]。
[図表1]不動研住宅価格指数(首都圏中古マンション)

2―地価動向

国土交通省の「地価LOOKレポート(2021年第3四半期)」によると、全国100地区のうち上昇が「40」(前回35)、横ばいが「30」(36)、下落が「30」(29)となった。同レポートでは、「住宅地では、マンションの販売状況が堅調で上昇している地区が増加した。商業地では、新型コロナウイルス感染症の影響により、下落している地区があるものの、再開発事業の進展等により、上昇に転じた地区がある」としている。

3―不動産サブセクターの動向

1│オフィス
三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」によると、2021年第4四半期の東京都心部Aクラスビルの空室率は3.2%(前期比▲0.1%)に低下したが、成約賃料は30,696円(前期比▲12.1%、前年同期比▲11.5%)と2014年第4四半期の水準まで下落した[図表2]。三幸エステートは、「中心部以外においては、リーシング活動が長期化し募集床が現空となったビルで、賃貸条件を引き下げて後継テナントの誘致を促進する動きが広がっている」としている。
[図表2]東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
ニッセイ基礎研究所・クロスロケーションズ「オフィス出社率指数」によると、東京都心部のオフィス出社率は2021年12月末に75%まで回復し、感染拡大の第2波以降のレンジ(45~65%)の上限を上回った[図表3]。2022年1月前半は70%以上の水準を維持しているが、1月後半はオミクロン株の拡大により、再びオフィス出社を抑制する企業が増えている。
[図表3]東京のオフィス出社率指数と新規陽性者数の推移
2│賃貸マンション
東京23区の転出超過が継続するなか、東京23区のマンション賃料はピークアウト感がみられる。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2021年第3四半期の賃料は前年比でシングルタイプが▲2.4%、コンパクトタイプが▲0.9%、ファミリータイプが▲2.8%となった[図表4]。住民基本台帳人口移動報告によると、2021年の東京23区の転入超過数は▲14,828人と、1996年以来の転出超過となった。
[図表4]東京23区のマンション賃料
3│商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターでは、緊急事態宣言の解除を受けて、百貨店の売上やサービス消費が増加した。商業動態統計などによると、2021年10-12月の小売販売額(既存店、前年同期比)は百貨店が+7.0%、スーパーが▲0.9%、コンビニエンスストアが+0.1%となった。

ホテルセクターは、緊急事態宣言解除に伴い、回復の足取りが強まった。宿泊旅行統計調査によると、2021年12月の延べ宿泊者数は、2019年対比で▲15.6%となり、「Go Toトラベル」キャンペーンの恩恵から最も回復した2020年11月の▲25.2%を上回った[図表5]。このように、新規感染者数の減少に伴いホテル市況は回復に向かったが、2022年に入ってからは、オミクロン株の感染拡大を背景に、再び経営環境の厳しさが増している。
[図表5]延べ宿泊者数の推移(2019年対比)
CBREによると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2021年12月末)は前期比▲0.3%低下の2.3%となった[図表6]。2021年通年の新規需要は54万坪と前年の46万坪を上回り、3PL企業をはじめ幅広い業種からの需要が見られたとのことである。近畿圏の空室率は1.2%(前期比▲0.6%)と、6四半期連続で低下した。
[図表6]大型マルチテナント型物流施設の空室率

4―J -REIT(不動産投信)市場・不動産投資市場

2021年第4四半期の東証REIT指数は前期比▲0.3%下落した。セクター別では、オフィスが▲3.4%、住宅が+3.2%、商業・物流等が+2.0%となった。12月末時点で、NAV倍率は1.1倍、分配金利回りは3.5%となっている。

J-REITによる2021年第4四半期の物件取得額は4,380億円(前年同期比+6%)、1-12月累計で1兆5,969億円(+15%)となった。アセットタイプ別の取得割合は、オフィス(46%)、物流施設(24%)、住宅(13%)、商業施設(11%)、底地ほか(6%)、ホテル(1%)の順となり、オフィスが3年ぶりにトップに返り咲いた。

2021年のJ-REIT市場を振り返ると、東証REIT指数は+15.8%上昇し、国内株式の上昇率(+10.4%)を2年ぶりに上回った[図表7]。銘柄数は61社(▲1社)に減少したが、市場時価総額は17.0兆円(+18%)に拡大し、運用資産額も21.2兆円(+5%)となった。一方、オフィス市場を中心に賃貸市況の調整局面が継続したため、市場全体の予想1口当たり分配金はほぼ横ばい、1口当たりNAVの成長率も+3%に留まった。
[図表7]2021年のJ-REIT市場(まとめ)
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金融研究部   准主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

(2022年03月08日「基礎研マンスリー」)

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