2022年02月07日

インドネシア経済:21年10-12月期の成長率は前年同期比+5.02%~成長率は3期連続のプラス成長、内外需ともに拡大

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

文字サイズ

インドネシアの2021年10-12月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.02%増(前期:同3.51%増)と上昇し、市場予想2(同+4.81%)を小幅に上回る結果となった。

10-12月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内外需の拡大が成長率上昇に繋がった(図表1)。

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比3.55%増(前期:同1.02%増)と伸びが加速した。費目別に見ると、輸送・通信(同5.34%増)がプラスに転じたほか、ホテル・レストラン(同2.82%増)、食料・飲料(同3.24%増)、住宅設備(同3.09%増)、保健・教育(同2.99%増)がそれぞれ上昇した。

政府消費は前年同期比5.25%増(前期:同0.62%増)となり、伸びが加速した。

総固定資本形成は前年同期比4.49%増(前期:同3.76%増)と伸びが加速した。建設投資(同2.48%増)と自動車(同3.62%増)が揃って鈍化したものの、機械・設備(同13.46%増)が二桁増となった。

純輸出は成長率寄与度が+1.02%ポイントとなり、前期の+1.30%ポイントから小幅に縮小した。まず財・サービス輸出は前年同期比29.83%増(前期:同29.16%増)と大幅な増加が続いた。輸出の内訳を見ると、財輸出(同30.95%増)とサービス輸出(同9.80%増)がそれぞれ高い伸びを維持した。また財・サービス輸入も同29.60%増(前期:同29.95%増)と大きく増加した。
(図表1)インドネシア実質GDP成長率(需要側)/(図表2)インドネシア 実質GDP成長率(供給側)
供給項目別に見ると、主に第三次産業と第二次産業の拡大が成長率上昇に繋がった(図表2)。

まず成長を牽引する第三次産業は前年同期比4.11%増(前期:同2.18%増)となり、伸びが加速した。内訳を見ると、構成割合の大きい卸売・小売(同5.45%増)をはじめとして保健衛生・社会事業(同12.16%増)や運輸・倉庫(同6.87%増)、情報・通信(同6.21%増)は堅調な伸びを続けたほか、ホテル・レストラン(同4.95%増)と行政・国防(同0.98%増)、ビジネスサービス(同0.89%増)がプラスに転じた。一方、金融・不動産(同0.08%増)は鈍化した。

第二次産業は前年同期比4.78%増(前期:同4.49%増)と伸びが加速した。内訳を見ると、鉱業(同5.15%増)が鈍化したものの、構成割合の大きい製造業(同4.92%増)と建設業(同3.91%増)、電気・ガス・水供給業(同7.52%増)が上昇した。

第一次産業は前年同期比2.28%増(前期:同1.43%増)と小幅に上昇した。
 
1 2022年2月7日、インドネシア統計局(BPS)が2021年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

10-12月期GDPの評価と先行きのポイント

インドネシア経済は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に2020年に経済が停滞して、実質GDP成長率が前年比▲2.07%と減少した。感染第1波の長期化によりインドネシア政府が各種行動制限を継続したため経済活動の再開が遅れてマイナス成長が続いていたが、昨年4-6月期以降は前年同期の落ち込みからの反動増(ベース効果)や経済活動の再開によって押し上げられ、2021年の成長率は前年比+3.69%に上昇、2年ぶりのプラス成長となった。

今回発表された10-12月期の成長率は前年同期比5.02%増となり、前期の同3.51%増から上昇した。この成長率上昇は感染状況の改善に伴う経済活動の再開が進んだ影響が大きいとみられる。インドネシアでは昨年6月中旬頃からデルタ株の感染が広がり感染第2波が発生すると、7月中旬には1日あたりの新規感染者数が5.6万人に達した(図表3)。しかし、政府が7月初旬に人口の多いジャワ島と観光地のバリ島に緊急活動制限(PPKMダルラット)を実施し、出社を原則禁止するなど人の移動を大幅に制限したことやワクチン接種の加速が奏功して感染状況は改善に転じ、10-12月期は新規感染者数の期中平均が500人台で落ち着いて推移した。政府は8月から出社や商業施設営業に対する制限を次第に緩和し、12月にはジャワ・バリ両島の活動制限のリスク区分を最も低いレベル1に引き下げた。こうして活動制限が段階的に緩和されたことにより、10-12月平均の小売・娯楽施設への人流はコロナ前と比較して6%増(7-9月平均:約12割減)と改善するなど(図表4)、10-12月期は経済活動が回復することとなった。結果として、10-12月期はベース効果による成長率の押上げ効果が弱まるなかでも民間消費(前年同期比+3.83%)と総固定資本形成(同+4.49%)は伸びが加速した。また先進国経済の回復による石炭などのコモディティ需要の拡大が財輸出(同+30.95%)の追い風となり、成長率の押し上げ要因となった。

しかし、インドネシアではオミクロン株の出現により年明けから感染状況が再び悪化しており、足元の新規感染者数は1日3万人台に達している。政府はオミクロン株への警戒感から12月に入って入国隔離期間を強化、1月にはジャワ・バリ両島で実施している緊急活動制限(PPKM)のリスク区分をレベル2に引き上げている。オミクロン株は感染力が強い一方で重症化リスクは低いとみられているが、感染急拡大で重症者数が増えれば感染対策の更なる強化を余儀なくされる恐れがある。現在インドネシア経済にはオミクロン株による感染拡大と中国経済の減速、世界的な物価上昇、そして今後は米金融政策の利上げ開始など逆風が吹き始めている。こうした不確実要素がインドネシア経済の回復を妨げるリスクに注意する必要がありそうだ。
(図表3)インドネシアの新規感染者数の推移/(図表4)インドネシアの外出状況
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2022年02月07日「経済・金融フラッシュ」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【インドネシア経済:21年10-12月期の成長率は前年同期比+5.02%~成長率は3期連続のプラス成長、内外需ともに拡大】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

インドネシア経済:21年10-12月期の成長率は前年同期比+5.02%~成長率は3期連続のプラス成長、内外需ともに拡大のレポート Topへ