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- 中国経済の現状と22年の注目点-全人代、不動産規制、ゼロコロナ政策に注目!
1. 中国経済の概況
2. 需要別・産業別の分析
3. 全人代
財政政策に関しては、コロナショックに見舞われた20年には「積極的な財政政策はさらに積極的かつ効果的なものにする」として、財政赤字(対GDP比)を「3.6%以上」としたのに加えて、地方特別債を3.75兆元、感染症対策特別国債を1兆元発行するなどコロナ対策を明確に打ち出した。しかし、コロナ禍が峠を越えた21年には「積極的な財政政策は質・効率の向上を図り、さらに持続可能なものにする」として、財政赤字(対GDP比)を「3.2%前後」に引き下げたのに加えて、地方特別債を3.65兆元に引き下げ、感染症対策特別国債の発行を止めるなどコロナ対策で緩んだ財政規律を引き締めて、持続可能性を高めた(図表-9)。そして、5年に1度の共産党大会を今秋に控える22年は、経済成長の勢いが鈍化してきたことを踏まえて景気重視のスタンスで臨むのか、それとも長期的な視点から財政の持続可能性を高めるスタンスを堅持するのか、注目される。
4. 不動産規制
これに危機感を持った中国政府は「住宅は住むためのものであって投機のためのものではない」と繰り返し主張するとともに、20年8月には不動産会社に対して守るべき「三道紅線」と呼ばれる財務指針を示した。具体的には(1)総資産に対する負債の比率が70%以下、(2)自己資本に対する負債の比率が100%以下、(3)現金の短期債務に対する比率が1倍以上の3つの財務指針である。さらに20年12月には、中国工商銀行や国家開発銀行など地場系大型銀行に対して、不動産向け融資が全体の40%、個人向け住宅ローンが全体の32.5%を上限とするなどの「総量規制」を導入すると表明することとなった。しかし、21年に入り両措置が実行に移されると、中国恒大集団が経営不安に陥るなど、不動産業が国内総生産(GDP)を押し下げる事態となった(2ページの図表-2)。そして、中国政府は21年12月にローンプライムレート(1年)を引き下げるなど景気に配慮する姿勢を強めている。
5. ゼロコロナ政策
そして、世界ではCOVID-19に対する政策が二極化してきた。西欧諸国がCOVID-19を終息させることは不可能と判断して、COVID-19の生存を許容し、ワクチンや治療薬でコントロールしながらも社会経済活動を維持する“ウィズコロナ”政策に転換し始めた。一方、中国ではCOVID-19の生存を許さず、「四早(早期発見、早期報告、早期隔離、早期治療)」を旗印とした厳格な行動制限でその終息を目指す“ゼロコロナ”政策を堅持している。そして、人権のなかでも生存権をとりわけ重視する中国は、COVID-19で多くの犠牲者をだした西欧諸国を、自由権を重視し過ぎて生存権を軽んじていると主張しつつ、“ゼロコロナ”政策を頑固なまでに堅持してきた。
一方、中国でも“ウィズコロナ”政策に転換する前提条件は整いつつある。ワクチンの完全接種率が8割を超えた上、飲み薬の供給にもメドが立った1 。景気悪化を食い止める上では、“ウィズコロナ”政策に転換して消費を促進するのが有効で、そうすれば「不動産を短期的景気刺激手段に使わない」で景気悪化を食い止める道が拓ける。また、シンガポールが“ウィズコロナ”政策に転換するなど世界の流れに変化が見られ、北京冬季パラリンピックが終了すればさらに制約が減る。
現時点でCOVID-19をインフルエンザ並みに取り扱う(エンデミック)と主張するのは世界でも西欧諸国の一部だけで、ワクチン接種が進まず“ウィズコロナ”の前提条件が整わない途上国を考慮するWHOは「エンデミックと呼べる段階には入っていない」としており、世界の主流ではない。しかし、途上国で前提条件が整い、WHOがパンデミックからエンデミックへと認識を変更すれば、中国にとっては“ゼロコロナ”から“ウィズコロナ”に政策転換する大義名分ができる。
1 医薬品供給を支援する国際組織「医薬品特許プール(MPP)」は1月20日、製薬27社が米メルクの飲み薬「ラゲブリオ(一般名モルヌピラビル)」の後発薬を途上国向けに供給することで合意したと発表した。27社には中国5社が含まれる。
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三尾 幸吉郎
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(2022年01月28日「Weekly エコノミスト・レター」)
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