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- 無理数について(その3)-無理数はどのようなところに現れてくるのか-
コラム
2022年01月04日
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はじめに
無理数が現れてくる状況
一般の方々にとって、無理数で最も有名なものとしては、√2とπ(円周率)とe(ネイピア数)が挙げられるのではないか、と思われる。
√2は、1辺が1の正方形の対角線の長さである。πは、直径が1の円周の長さである。eは、自然対数の底として、指数関数に使用されている。
ところが、無理数は他にも数多くの場面で現れてくる。以下では、これらについて紹介する。
√2は、1辺が1の正方形の対角線の長さである。πは、直径が1の円周の長さである。eは、自然対数の底として、指数関数に使用されている。
ところが、無理数は他にも数多くの場面で現れてくる。以下では、これらについて紹介する。
なお、研究員の眼「黄金比φについて(その1)-黄金比とはどのようなものなのか-」(2020.11.10)で報告したように、以下の「黄金比φ」も無理数である。
さらには、研究員の眼「白銀比τ等について-白銀比とはどのようなもので、どんな場面で使用されているのか-」(2020.12.14)で報告したように、以下の「白銀比τ」も無理数である。
であり、無理数の定番トリオである√2とπとeが全て含まれている。
「独立な同一の分布に従う確率変数の算術平均の分布は、元の確率変数に標準偏差が存在するならば、元の分布の形状に関係なく、変数の数が多数になったとき、正規分布に収束する」という中心極限定理により、大標本の平均値の統計では、正規分布が仮定されることが非常に多くなる。従って、正規分布は統計学上極めて重要なものとして位置付けられ、大変有用なものとなっている。
正規分布を用いることで、各種の検定や推定が行われることになる。
「独立な同一の分布に従う確率変数の算術平均の分布は、元の確率変数に標準偏差が存在するならば、元の分布の形状に関係なく、変数の数が多数になったとき、正規分布に収束する」という中心極限定理により、大標本の平均値の統計では、正規分布が仮定されることが非常に多くなる。従って、正規分布は統計学上極めて重要なものとして位置付けられ、大変有用なものとなっている。
正規分布を用いることで、各種の検定や推定が行われることになる。
三角関数に現れる無理数
指数関数・対数関数に現れる無理数
同じく、証明等は示せないが、以下の数は超越数になっている。
・0でない代数的数aに対するea (よって、en(nは整数)は超越数である)
・0でない代数的数a、bに対するe(aπ+b)
・代数的数α(≠0、1)に対するlogα
最後の例からわかるように、対数関数で表現される数にも、無理数が溢れている形になっている。
・0でない代数的数aに対するea (よって、en(nは整数)は超越数である)
・0でない代数的数a、bに対するe(aπ+b)
・代数的数α(≠0、1)に対するlogα
最後の例からわかるように、対数関数で表現される数にも、無理数が溢れている形になっている。
ギリシアの3大作図問題
ギリシアの三大作図問題については、以前の研究員の眼「ギリシアの3大作図問題-数学を通じて、ギリシアという国の歴史的位置付けの重みを再認識してみませんか-」(2017.6.19)で報告した。
そこで述べたことを繰り返すと以下の通りとなる。
「定規とコンパスによって作図可能となるには、作図のために必要な点が、(作図可能な数で表された)1次方程式や2次方程式を繰り返し解いて得られる範囲にあることが必要で、そのような条件を満たさない点がある場合には、作図不可能ということになる。」
以上を「ギリシアの3大作図問題」に当てはめてみると、以下の通りとなる。
問題1(円積問題)
半径1の円の面積はπ(円周率)なので、この円と同じ面積を持つ正方形の1辺の長さは√π となる。πは超越数で代数的数ではないので、上記の条件を満たしていない。
問題2(立方体倍積問題)
与えられた立方体の1辺の長さを1とすると、求めたい立方体の1辺の長さXは、X3=2 ということになるが、これは3次方程式であることから、上記の条件を満たしていない。
問題3(角の3等分問題)
与えられた角をθとすると、cos(θ/3)が分かれば、そこから直線を立てて、半径1の円との交点を求めることで、角を3等分できることになる。
A=cos θ、 X=cos(θ/3)とすると、cosの3倍角の公式(高校の数学で学んだ記憶がある人もあると思われる)により、4X3-3X-A=0 となる。これも3次方程式であることから、上記の条件を満たしていない。
このように、ギリシアの3大作図問題には無理数が現れてくることになっている。
先の研究員の眼で報告したように、問題2(立方体倍積問題)と問題3(角の3等分問題)は1837年に、フランス人数学者ピエール・ローラン・ヴァンツェル(Pierre Laurent Wantzel)によって解決され、問題1(円積問題)は、1882年にドイツ人数学者フェルディナント・フォン・リンデマン(Carl Louis Ferdinand von Lindemann)によって、πの超越性の証明が行われたことで解決した。古代ギリシアの時代に素朴に感じられた問題が、2000年の時を経て、やっと解決された形になっている。
そこで述べたことを繰り返すと以下の通りとなる。
「定規とコンパスによって作図可能となるには、作図のために必要な点が、(作図可能な数で表された)1次方程式や2次方程式を繰り返し解いて得られる範囲にあることが必要で、そのような条件を満たさない点がある場合には、作図不可能ということになる。」
以上を「ギリシアの3大作図問題」に当てはめてみると、以下の通りとなる。
問題1(円積問題)
半径1の円の面積はπ(円周率)なので、この円と同じ面積を持つ正方形の1辺の長さは√π となる。πは超越数で代数的数ではないので、上記の条件を満たしていない。
問題2(立方体倍積問題)
与えられた立方体の1辺の長さを1とすると、求めたい立方体の1辺の長さXは、X3=2 ということになるが、これは3次方程式であることから、上記の条件を満たしていない。
問題3(角の3等分問題)
与えられた角をθとすると、cos(θ/3)が分かれば、そこから直線を立てて、半径1の円との交点を求めることで、角を3等分できることになる。
A=cos θ、 X=cos(θ/3)とすると、cosの3倍角の公式(高校の数学で学んだ記憶がある人もあると思われる)により、4X3-3X-A=0 となる。これも3次方程式であることから、上記の条件を満たしていない。
このように、ギリシアの3大作図問題には無理数が現れてくることになっている。
先の研究員の眼で報告したように、問題2(立方体倍積問題)と問題3(角の3等分問題)は1837年に、フランス人数学者ピエール・ローラン・ヴァンツェル(Pierre Laurent Wantzel)によって解決され、問題1(円積問題)は、1882年にドイツ人数学者フェルディナント・フォン・リンデマン(Carl Louis Ferdinand von Lindemann)によって、πの超越性の証明が行われたことで解決した。古代ギリシアの時代に素朴に感じられた問題が、2000年の時を経て、やっと解決された形になっている。
最後に
今回は、無理数がどのようなところに現れてくるのかについて報告してきた。
無理数と言われると、何か難しいものでとっつきにくいものだと感じてしまうと思われる。ところが、無理数は社会の中に満ち溢れていて、それを多くの人が、それと認識することなく利用している。また、それらの無理数の利用により、多くの恩恵を受けている。
√2もπもeも、それらが無理数であることは、数学的には重要なことで、そのためにそれを表す特別な数学記号も存在していたりする。ところが、殆どの人にとっては、これらの数を厳密に知っている必要はなく、何となくこんなものだよね、というぐらいで、√2なら1.41ぐらい、πなら3.14ぐらい、eに至ってはそのおおまかな水準すらも十分に認識されているとは思われず、ましてやこれらが無理数であることは大きな意味を有していないものと思われる。
それでも基本的には何ら問題は起こっていない。理論的には厳密な分析が行われていく必要はあるが、現実世界においては近似値や、結果だけを知っていれば、それだけで十分である。
以上、今回は3回にわたって、無理数について報告してきた。今回のレポートを契機に、無理数に少しでも親しみを持っていただければと思っている。
無理数と言われると、何か難しいものでとっつきにくいものだと感じてしまうと思われる。ところが、無理数は社会の中に満ち溢れていて、それを多くの人が、それと認識することなく利用している。また、それらの無理数の利用により、多くの恩恵を受けている。
√2もπもeも、それらが無理数であることは、数学的には重要なことで、そのためにそれを表す特別な数学記号も存在していたりする。ところが、殆どの人にとっては、これらの数を厳密に知っている必要はなく、何となくこんなものだよね、というぐらいで、√2なら1.41ぐらい、πなら3.14ぐらい、eに至ってはそのおおまかな水準すらも十分に認識されているとは思われず、ましてやこれらが無理数であることは大きな意味を有していないものと思われる。
それでも基本的には何ら問題は起こっていない。理論的には厳密な分析が行われていく必要はあるが、現実世界においては近似値や、結果だけを知っていれば、それだけで十分である。
以上、今回は3回にわたって、無理数について報告してきた。今回のレポートを契機に、無理数に少しでも親しみを持っていただければと思っている。
(2022年01月04日「研究員の眼」)
中村 亮一のレポート
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