2021年12月29日

中国経済:景気指標の総点検(2021年冬季号)-10-12月期成長率は鈍化見込みも、景気評価点は4点に改善!

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

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1. 中国経済の概況

(図表-1)中国の実質成長率(季節調整後) 中国では21年7-9月期の経済成長率(季節調整後、実質)が前期比0.2%増(年率0.8%増程度)と、4-6月期の同1.2%増(年率4.9%増程度)から減速した(図表-1)。20年1-3月期にはコロナ禍で前期比年率32.9%減程度に落ち込んだが、財政金融政策をフル稼働させたことで、20年4-6月期には同50.2%増程度と一気に持ち直してコロナ前(19年10-12月期)の水準を回復、20年下半期(7-12月期)も同10%増を超える高成長を続けた。しかし、21年に入ると財政金融政策が引き締め方向に変化したことを背景に、インフラ投資が鈍化し、不動産開発業では資金繰りが苦しくなって中国恒大集団が経営不安に陥り、21年1-3月期の実質成長率は前期比年率0.8%増程度、4-6月期は同4.9%増程度、そして7-9月期は同0.8%増程度と、中国経済は低水準で一進一退の動きとなっている(図表-1)。
他方、消費者物価(CPI)は21年11月に前年同月比2.3%上昇となり、21年の抑制目標(3%前後)に近付いてきた。資源エネルギー価格は依然として高値水準にあり、これまでCPIを押し下げる要因となっていた豚肉価格は、アフリカ豚熱(ASF)で急騰する前の水準に戻っているため、今後は2%台の上昇が定着することになりそうである。そして、インフレが経済成長を実質的に蝕み始めており、21年7-9月期には名目成長率を4.9ポイントも押し下げることとなった。なお、食品・エネルギーを除いたコアCPIは前年同月比1.2%上昇と、今のところ安定している(図表-2)。

なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、ここもと陝西省で国内感染が急増している。但し、新規確認症例は無症状を含めても300人以下に留まっており、14億の人口を抱える割には少ないと言える。また、死亡者は21年1月26日以降1年弱に渡ってゼロとなっており、重症症例も21年12月27日時点で12人と少なく、趨勢的にも減少傾向にある(図表-3)。
(図表-2)中国の消費者物価(品目別)/(図表-3)COVID-19の状況

2. 供給面の3指標

2. 供給面の3指標

鉱工業生産(実質付加価値ベース)の推移を見ると(図表-4)、21年1-2月期には前年同期にコロナ禍で落ち込んだ反動で前年同期比35.1%増と極めて高い伸びを示したが、その後は反動増の効果が薄れるにつれて伸びが鈍化し、9月には同3.1%増まで減速した。しかし足元では、10月が同3.5%増、11月が同3.8%増と少し持ち直してきている。パンデミックの影響で半導体不足に直面した自動車生産の推移を見ると(図表-5)、8月にはコロナ前の対19年同月比13.3%減に落ち込んだ。しかし、9月以降は解消に向かい、10月は対19年同月比1.5%増、11月も同0.3%減と、コロナ前の生産水準まで戻ってきている。
(図表-4)鉱工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の推移/(図表-5)自動車生産の推移
一方、PMIの動きを見ると、製造業PMI(製造業購買担当者景気指数)は、21年3月の51.9%をピークに7ヵ月連続で低下していたが、11月には50.1%とやや持ち直した。予想指数は10月が53.6%、11月も53.8%と低下しているが、コロナ前(19年)と比べるとほぼ同水準である(図表-6)。他方、非製造業PMI(非製造業商務活動指数)は、8月にはコロナ感染が再発したため47.5%と拡張収縮の境界(50%)を大きく下回ったものの、9月には50%を回復した。しかし、その後の改善の勢いは鈍く、予想指数もコロナ前(19年)の水準(60%前後)に届いていない(図表-7)。中国政府が三重の圧力1のひとつに挙げた“弱気の予想”は依然として解消していないようだ。
(図表-6)製造業PMI/(図表-7)非製造業PMI(商務活動指数)
 
1 2021年12月に開催された中央経済工作会議では、国内経済は需要の縮小、供給の打撃、弱気の予想という三重の圧力に直面しているとして危機感を示した

3. 需要面の3指標

3. 需要面の3指標

個人消費の代表指標である小売売上高を見ると(図表-8)、21年1-2月期にはコロナ禍で落ち込んだ反動で前年同期比33.8%増と極めて高い伸びを示したが、その後は反動増の効果が薄れるにつれて伸びが鈍化し、8月には同2.5%増まで減速した。しかし足元では、9月が同4.4%増、10月が同4.9%増、11月が同3.9%増と持ち直し傾向にある。但し、依然としてコロナ前(19年)の伸び(8%前後)には遠く及ばず、低水準に留まっている。また、中国恒大集団の経営不安で注目される不動産市場では、分譲住宅販売が5ヵ月連続で前年割れに落ち込んでいる(図表-9)。そして、住宅関連消費(家電・家具など)には暗雲が立ち込めたままである。
(図表-8)小売売上高の推移/(図表-9)分譲住宅の販売面積の推移
投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)を見ると(図表-10)、21年1-3月期にはコロナ禍で落ち込んだ反動で前年同期比25.6%増と高い伸びを示したが、4-6月期には反動増が薄れて同5.3%増(推定2)に減速、そして7-9月期には同3.1%減(推定)、10-11月期も同4.2%減(推定)と落ち込んでいる。10-11月期の内訳を見ると、製造業は前年同期比8.8%増(推定)とプラスを維持しているが、不動産開発投資は同6.5%減(推定)、インフラ投資は同4.0%減(推定)と前年割れだ。財政金融政策の縮小や不動産規制(三道紅線など)が影響したものと見られる。

一方、輸出(ドルベース)の状況を見ると(図表-11)、21年1-2月期には反動増もあって前年同期比60.4%増と極めて高い伸びを示し、その後も2割程度の伸びを維持している。但し、価格転嫁の影響を除いた数量ベースを見ると、21年7月以降は1割前後まで伸びが鈍化してきている。
(図表-10)固定資産投資(除く農家の投資)/(図表-11)輸出(ドルベース)の推移
 
2 中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
【その他の4指標と景気の総括】
以上で概観した供給面3指標と需要面3指標に、電力消費量、道路貨物輸送量、工業生産者出荷価格、通貨供給量(M2)を加えた10指標に関して、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○”、下向きであれば“×”、横ばいなら“-”として一覧表にしたのが図表-12である。
(図表-12)景気評価総括表(〇×表)
現在の景気の方向性を表す評価点(〇の数)を見ると、21年6~8月には3ヵ月連続で景気が減速していることを示す1点(10点満点)に留まったが、11月には横ばい圏で推移していることを示す4点まで改善してきた。より詳細に需要面3指標の推移を見ると、消費の代表指標である小売売上高は、コロナ感染が断続的に発生したことで冴えない動きとなっており、足元では10月に一旦“〇”になったものの11月には“×”に戻っている。投資の代表指標である固定資産投資は、5月から7月にかけては失速気味だったが、足元では4ヵ月連続で“〇”と持ち直してきている。また、パンデミックを追い風に昨年4月以降13ヵ月連続で“○”を記録していた輸出も、足元では“×”が目立ってきている。次に供給面3指標の推移を見ると、鉱工業生産は2ヵ月連続の“〇”で、製造業PMIも“×”から“-”に転じており、製造業には底打ちの兆しがある。また、非製造業PMIも6ヵ月ぶりに“〇”に転じている。最後にその他の景気指標の推移を見ると、電力消費量と道路貨物輸送量は4月以降8ヵ月連続で“×” と低迷しており、工業生産者出荷価格も一進一退の動きである。一方、通貨供給量(M2)は9月までは“×”が目立っていたが、10月以降2ヵ月連続で“〇”となっており、社会融資総量も伸びを高めたことから、金融政策は緩和気味に微調整されたと考えられる(図表-13)。また、中国人民銀行(中央銀行)は12月20日、1年のローンプライムレート(贷款市场报价利率)を0.05ポイント引き下げて3.8%とした。

なお、電力の供給不安3は解消に向かっているものの、電力消費量は依然として低迷を続けている(図表-14)。また、貨物輸送量はコロナ前(19年)のレベルまで回復しているものの、ヒトの動きを示す旅客輸送数の戻りは鈍く、コロナ感染が収まると小幅に持ち直し、コロナ感染が再発すると落ち込むという展開が繰り返されている(図表-15)。また、工業生産者出荷価格(PPI)は21年に入って急騰し、物価変動を除いた実質ベースの経済成長率を押し下げる要因となっていたが、11月には一旦上昇が止まった。但し、消費者物価(CPI)に波及するにはタイムラグがあり、小幅ながらも消費財が上昇し始めていることから、インフレへの警戒は怠れない(図表-16)。
(図表-13)通貨供給量(M2)と社会融資総量/(図表-14)電力消費量の推移
(図表-15)貨物輸送量と旅客輸送数/(図表-16)工業生産者出荷価格(PPI)
最後に、鉱工業生産、サービス業生産、建築業PMIの3つを説明変数として、実質成長率を推計した「景気インデックス」を確認しておこう。コロナ禍に見舞われた20年2月の「景気インデックス」は前年同月比12.8%減に落ち込んだ。しかし、コロナ禍が峠を越えた20年4月にはプラスに転じ、21年1月にはコロナ禍の反動増もあって同21.7%増の高成長となった。しかしその後は、21年10月が前年同月比3.7%増、11月が同4.0%増と前四半期(4.9%増)よりも低いため、22年1月17日に発表される10-12月期の成長率は前四半期を下回る可能性が高い。
 
3 中国における電力の供給不安に関しては、「中国経済の現状と今後の注目点-電力不足、不動産規制、コロナの3点に注目!」Weekly エコノミスト・レター 2021-10-29の4ページを参照ください
 
 

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経済研究部   上席研究員

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

研究・専門分野
中国経済

(2021年12月29日「Weekly エコノミスト・レター」)

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