2021年10月13日

英国雇用関連統計(9月)-休業者もコロナ禍前の水準に

経済研究部 准主任研究員   高山 武士

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1.結果の概要:雇用環境は緩やかな改善が続く

10月12日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【9月】
失業保険申請件数1前月(216.39万件)から5.11万件減の211.28万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は5.2%となり、前月(同5.4%)から低下した。

【8月(6-8月の3か月平均)】
失業率は4.5%で前月(4.6%)から低下、市場予想2(4.5%)と同じだった(図表1)。
就業者は3241.6万人で3か月前の3218.0万人から23.5万人の増加となった。
増減数は前月(18.3万人)から増加したが、市場予想(+25.0万人)は下回った。
週平均賃金は、前年同期比7.2%で前月(8.3%)から減速したものの、市場予想(7.0%)は上回った(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:給与所得者や休業者はコロナ禍前の水準まで正常化

まず、失業保険申請件数と同じく9月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は21年7-9月の平均で110.2万件となり3か月連続で調査開始後の最高記録を更新、労働需要の強い状況が継続している(図表3)。

給与所得者データ3では、9月の給与所得者が2918.0万人となり8月から20.7万人増えた(図表4)。20年12月以来10か月連続の増加で、累計の増加数は109.4万人とコロナ禍後の減少数(累計97.2万人)を上回った。産業別に見ると、8月の増加は居住・飲食や事務サービス業が主導した。また、月あたり給与額(中央値)については前年同月比5.2%で8月(5.7%)からは減速したが、引き続き高めの伸び率を維持している(図表4・5)。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)給与取得者データの推移
次に8月までのデータでは、6-8月期の失業率が4.5%とやや低下した(前掲図表1)。前月比で見ると、4-6月期から3か月連続で就業者の増加、および、失業者と非労働力人口の減少が継続している。改善幅が大きくないため、労働参加率は63.3%でコロナ禍前のピーク(19年12月-20年2月:64.4%)まで依然として距離があるものの、雇用環境は少しずつ改善している。労働時間も31.5時間(前年同期差+4.3時間)、フルタイム労働者で36.1時間(同+4.0時間)であり、こちらもコロナ禍前の水準まではやや距離があるが、改善が続いている(前掲図表2)。

6-8月の平均賃金は前年同期比7.2%(実質は4.7%)とやや減速したものの、ベース効果の影響で高めの伸び率が続いている。コロナ禍前と比較できる2年前比でも7.3%(実質は4.0%)となり、(低所得雇用の減少といった)構成効果なども影響し高い伸び率が続いている(図表5)。
(図表5)賃金・給与所得の推移〔2年前比〕/(図表6)英国の雇用統計(週次データ)
最後に週次データを確認すると(図表6)、8月後半にかけ休業者数がコロナ禍前の水準(250万人程度)まで低下している。政府の雇用維持政策は7月から雇用主負担が始まっており(9月末に終了する予定)、休業者の職場復帰が進んできた可能性がある(図表6)。英国政府は雇用維持政策の利用者(一時帰休者)を8月末時点で130万人と公表しており(速報値、前月との比較で26万人減)、引き続き支援策への需要が見られるが、雇用環境の正常化は着実に進んでいると言える。
 
3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   准主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

(2021年10月13日「経済・金融フラッシュ」)

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