2021年10月05日

ESGへの取り組みから期待される効果

中央大学 総合政策学部   佐々木 隆文

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ESG投資が拡大する中、ESGに取り組むことにより得られる効果に関する関心が高まっている。これまでに行われた膨大な先行研究ではESGへの取り組みと企業パフォーマンスとの間にプラスの関係があることを示唆するものが多いがファイナンス分野の研究では懐疑的な見方も残っている。そこで我々は日本企業がどのような効果を期待してESGに取り組んでいるのかを直接アンケート調査により調べることにした。以下では本調査のポイントについて紹介する1
図表1は、環境、従業員、社会(従業員以外)、ガバナンスそれぞれについて、将来の利益水準、将来の利益の安定性(リスク)に及ぼす影響をまとめたものである。具体的にはそれぞれに関連する設問に関する得点の平均値をカテゴリー毎に求めている。点数は0から4の5段階であり、点数が高いほど良い影響(利益の増加、利益を安定性させる)を示す。まずパネルAの将来の利益水準への影響を見ると、環境、従業員、社会、ガバナンス全てで平均値が2を大きく超えており、企業はESGへの取り組みが将来の利益にとってプラスであると考えていることを示している。サーベイ回答企業にはESGに積極的な企業が多い可能性に留意する必要はあるが、ESGへの取り組みが周囲からの圧力という消極的な理由ではなく、将来への投資として行われていることを示唆している。とりわけ従業員に関する平均値が高くなっているが、このことは従業員の満足度が企業パフォーマンスの向上につながることを示している近年の研究とも整合的である。
図表1:ESGへの取り組みが将来の利益水準、利益の安定性に及ぼす影響
次にパネルBの将来の利益の安定性への影響を見てみよう。まず注目されるのは環境、従業員、社会、ガバナンスの全てにおいてパネルAよりも平均値が高くなっていることである。このことはESGへの取り組みがもたらすベネフィットのうち、将来のリスクの低下が特に大きいことを示唆している。こうした結果はESGへの取り組みが、ステイクホルダーとの関係を改善し、消費者の買い控えやストライキなどのネガティブなイベントが生じる可能性を低下させるという先行研究の議論と整合的である。また、環境に関する取り組みについては、気候変動の物理リスクや移行リスクの影響を緩和する期待がうかがえよう。

図表2はESGへの取り組みが消費者、従業員、投資家の行動に及ぼす影響を調べたものである。選択肢は0から4の5段階であり、点数が高いほど良い影響を示している(2がニュートラル)。まずパネルAの環境への対応について見ると、全ての平均得点が3を超えており、環境問題への積極的な取り組みがステイクホルダーの行動に好影響を及ぼすと考えている企業が多いことが分かる。また、従業員(パネルB)、社会(パネルC)についても得点は全て3を超えている。従業員を対象とした取り組みが従業員行動に良い影響を及ぼすとの回答は予想通りであるが、消費者行動、投資家行動にも良い影響を及ぼすと考えている企業が多いことは注目されよう。また、社会における消費者行動の得点は他のカテゴリーにおける消費者の得点よりも高くなっている。社会貢献は事業活動と関連が薄いとの懸念もあるが、一般消費者にも内容が分かりやすいものが多い。社会貢献による企業イメージの向上が消費者の支持につながるとの期待が垣間見える。他方、ガバナンスについては予想通り、投資家行動のスコアが高くなっている。ここでの結果はESGへの取り組みがステイクホルダー行動の改善を通じて企業自身にベネフィットをもたらすことを示唆している。そのような効果を高めるためには投資家のみならず従業員、消費者といったステイクホルダーに対してもESGへの取り組みを分かりやすく伝えることが重要であろう。
図表2:ESGへの取り組みがステークホルダー行動に及ぼす影響
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中央大学 総合政策学部

佐々木 隆文

研究・専門分野

(2021年10月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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