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ESGに関する投資といっても、その投資スタンスは多様である。Global Sustainable Investment Review 2020によれば、かつては倫理・社会・環境面で課題を抱える業種や企業を投資対象から外すことを狙いとしたネガティブ・除外スクリーニングによるESG投資が中心であったものが、2020年には通常の運用プロセスにESG要因を体系的に組み込むESGインテグレーションによる投資のプレゼンスが急速に拡大している(図表1)。欧州や豪州、カナダでは総運用資産の4割をESG投資にあてており、米国では35%、日本では25%の割合にのぼる。
これらの課題を解消するべく、さまざまな動きが進展し始めている。その1つは、ESG開示情報をめぐる国際的標準化・統合化の動きである。たとえば、欧州ではEUで進展しているサステナブル・ファイナンスの共通言語としての役割を果たすことが期待され、2019年8月にはEUタクソノミーが公表されている。また財務情報の国際的標準化・統合化の推進を行ってきたIFRS財団がサステナビリティ情報の国際的標準化・統合化を促進する国際持続可能性基準審議会(ISSB)の設定に向けて動き始めるなど開示情報をめぐる標準化・統合化に向けての基盤は整備されつつある。
また近年では、企業が社会や環境に与える負荷やその外部性を定量化する取り組みが進展しつつある。企業が仮に環境や社会に対して過度な負担をかけて事業活動を行っており、かつそうした負荷による受益者と負担者が異なるにもかかわらず市場取引を通じて適切な調整が行われない場合には、社会や環境に関する持続可能性が損なわれていく可能性が高まる。一方で、そうした環境に対する負荷を通じて事業活動で利益を得ている企業が明確に識別される状態になれば、税制・規制に基づく将来負担の枠組みが整備されたり、ステークホルダーからのネガティブな評価が生じたりすることで、当該企業は中長期的には何らかの負担をせざるを得なくなる可能性が高い。そうした経済的影響を定量的に測定し、その負担を持続的に軽減する取り組みを進展させることで、気候変動に伴うリスクを低減させることが可能となる。水資源や人権問題などの領域でもそうした外部性を貨幣評価する取り組みが進展している。
一橋大学大学院 経営管理研究科
加賀谷 哲之
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(2021年09月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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