2021年08月18日

貿易統計21年7月-輸出は緩やかな増加基調を維持

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

1.輸出入ともに高い伸び

財務省が8月18日に公表した貿易統計によると、21年7月の貿易収支は4,410億円の黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:1,946億円、当社予想は4,157億円)を上回る結果となった。コロナ禍で前年に大幅に落ち込んだ反動で、輸出入ともに前年比で高い伸びとなったが、輸出の伸び(前年比37.0%)が輸入の伸び(同28.5%)を上回ったため、貿易収支は前年に比べ4,558億円の改善となった。輸出の伸びは6月の前年比48.6%からは大きく低下したが、これは前年の落ち込みが6月(前年比▲26.2%)から7月(同▲19.2%)にかけて緩やかになっていたためで、輸出が実態として大きく減速しているわけではない。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比25.2%(6月:同37.2%)、輸出価格が前年比9.5%(6月:同8.3%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年2.1%(6月:同8.2%)、輸入価格が前年比25.9%(6月:同22.6%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 季節調整済の貿易収支は527億円(6月は▲627億円の赤字)と2ヵ月ぶりの黒字となった。輸出が前月比▲0.0%の横ばいとなる一方、輸入が同▲1.6%の減少となった。

7月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=71.8ドル(当研究所による試算値)となり、6月の69.2ドルから上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は60ドル台後半で推移しており、通関ベースの原油価格は8月も70ドル台前半となることが見込まれる。

2.欧米向けの輸出が回復

21年7月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比19.5%(6月:同79.8%)、EU向けが前年比40.0%(6月:同25.9%)、アジア向けが前年比20.4%(6月:同26.1%)、うち中国向けが前年比12.1%(6月:同23.6%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 21年7月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲1.1%(6月:同4.8%)、EU向けが前月比6.3%(6月:同▲3.5%)、アジア向けが前月比1.1%(6月:同▲0.6%)、中国向けが前月比▲2.5%(6月:同4.9%)、全体では前月比▲0.9%(6月:同0.0%)となった。

7月は米国向けが前月比でマイナスとなったが、7月の水準を4-6月期と比較すると、米国向けが2.6%、EU向けが6.0%上回る一方、アジア向けは▲0.0%のほぼ横ばいとなっている。輸出の牽引役となっていたアジア向けが減速する一方、ワクチン接種の進捗に伴う行動制限の緩和によって景気の回復基調が鮮明となっている米国、EU向けが伸びを高めている。世界的な設備投資の回復やデジタル関連需要の拡大を背景に、資本財、情報関連財を中心として輸出は緩やかな増加基調を維持している。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年08月18日「経済・金融フラッシュ」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【貿易統計21年7月-輸出は緩やかな増加基調を維持】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

貿易統計21年7月-輸出は緩やかな増加基調を維持のレポート Topへ