2021年08月06日

OPECプラス減産縮小・デルタ株拡大でも原油価格が高止まるワケ

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. WTI先物は7月前半に2年9カ月ぶりの高値となる1バレル75ドル台に乗せたが、その後軟調となり、足元では70ドルの節目を割り込んでいる。この背景には、予想を超えるOPECプラスの減産縮小決定とデルタ株を中心とする主要国でのコロナ感染拡大がある。
     
  2. しかし、足元のWTI先物は69ドル台と昨年末の水準を20ドル余り上回っており、底堅さがうかがわれる。(1)根強い需要回復期待、(2)需給調整弁としてのOPECプラスの存在、(3)イラン核合意を巡る協議の難航、が原油価格の下支え要因になっているためだ。
     
  3. 原油相場について先行き半年程度の見通しを考えると、今後も高止まりが予想される。需要面では今後も欧米主要国で大規模なロックダウンが回避されるとともに、世界におけるワクチン普及とそれに伴う経済活動正常化の広がりが原油需要の回復に寄与することが見込まれる。また、供給面ではOPECプラスが調整弁としての機能を維持することが期待される。需要の動向を慎重に見極め、必要であれば減産縮小ペースを調整するだろう。イラン核協議の早期合意は見込みづらいが、仮に合意に至って同国が増産に踏み切る場合でも、OPECプラスが減産を拡大して吸収を図ると考えられる。OPECプラスは概ね60ドルから80ドルを適正レンジと見なしていると推察されることから、レンジを外れる場合には減産幅の調整が図られる可能性が高い。従って、メインシナリオとしては、60ドル台後半~70ドル台前半を中心に推移すると予想している。
     
  4. ただし、原油価格の不確実性も高止まりするだろう。コロナの動向は不透明感が強いうえ、OPECプラスに関しても不協和音が表面化して最悪枠組みが瓦解するリスクが残る。さらに、最近ではイランを巡る地政学リスクが高まっている。不確実性が高いうえ原油価格はボラティリティが高いだけに、急変動するリスクも念頭に置いておく必要がある。
原油価格(WTIと東京ドバイ)
■目次

1.トピック:減産縮小・デルタ株拡大でも原油価格が高止まるワケ
  ・原油価格の下落要因
  ・原油価格の下支え要因
  ・原油価格の高止まりは続く見込み
2.日銀金融政策(7月):気候変動オペの骨子素案を公表
  ・(日銀)現状維持
  ・評価と今後の予想
3.金融市場(7月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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