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1.新型コロナウイルス感染症の状況
そして直近(7月28日)の状況は、確認症例(累計)92,811人、治癒退院87,288人、死亡4,636人で、現存感染者は887人である。また、現存感染者のうち重症症例は23人、確認症例に含まれない現存無症状感染者は411人、経過観察中の濃厚接触者は14,009人などとなっている(図表-3)。日本に比べると新規感染確認は小振りだが、3月末と比べれば増加しており、海外からの輸入症例が増え、国内感染に波及する気配もあるため、今後の動きを注視する必要がある。
1 中国における新型コロナウイルス感染症の感染爆発とその対策、そして政府や社会の動きに関する詳細に関しては、「中国におけるコロナ禍との闘いを振り返って~今後の政策運営にどう影響するのか?」ニッセイ基礎研レポート、2020-10-30を参照ください
2.中国経済の概況
コロナ前(19年10-12月)の実質GDPを100とした指数を見ると(図表-5)、コロナ禍で混乱した20年1-3月期には91.3と経済は急収縮することとなった。しかし、財政金融両面から新型コロナ対策を実施したことや厳格な防疫管理でコロナ禍を早期に収束させたことが奏功し、4-6月期には100.4と早くもコロナ前の水準を上回った。その後も散発的なコロナ感染はあったものの小振りに収まったため、7-9月期には103.2、10-12月期には106.3、21年1-3月期には106.8、4-6月期には108.2と右肩上がりで回復してきた。
一方、2021年上半期の消費者物価(CPI)は前年比0.5%上昇だった。原油高で輸送用燃料が同8.2%上昇したものの、アフリカ豚熱(ASF)が沈静化したことで豚肉が同19.3%下落したことで相殺される形となった。食品・エネルギーを除くコア部分で見ても同0.4%上昇に留まり、21年の抑制目標(3%前後)を下回る水準にある。他方、工業生産者出荷価格(PPI)は、図表-6に示したように上昇し始めており、2021年上半期には前年比5.1%上昇した。特に原材料が同10.4%上昇しており、企業利益を圧迫する恐れがでてきた。
3.投資・消費・輸出の動き
4.今後の注目点
第一に輸出の先行きである。昨年はパンデミックが中国の輸出にとっては思わぬ追い風となり、今年上半期の輸出も好調だった。このまま輸出の好調が持続すれば、中国国内の鉱工業生産を促進し、景気回復にとって強力な支援材料となるが、足元では防疫関連品にピークアウトの兆しがでてきただけに、予断を許さない(図表-14)。世界でワクチン接種が進めば昨年来の追い風が止まる可能性がある一方、強力な変異株の登場などでパンデミックが長引いて追い風が続く可能性もある。
第四に不動産市場の行方である。住宅ローンに対する総量規制が始まったため、21年上半期の不動産向け融資は急減速することとなった(図表-17)。さらに減速するようだと、不動産開発投資が減少したり、不動産価格が下落したりする恐れもでてくるだけに、不動産市場は要注意だ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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三尾 幸吉郎
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(2021年07月30日「Weekly エコノミスト・レター」)
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