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- ECB政策理事会-新戦略のもとフォワードガイダンスを大幅修正
2021年07月26日
(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- 成長率とインフレ率の回復は良好な資金調達環境に依然として依存している
- 市場金利は前回の理事会から低下した
- 多くの企業・家計に対する資金調達環境は引き続き良好な水準にある
- 企業や家計に対する貸出金利は歴史的に低水準にある
- 企業はコロナ禍の第一波で借入を増やした結果、十分に資金があり、これは企業への貸出が鈍化している理由を部分的に説明している
- 対照的に家計への貸出は底堅い
- 我々の貸出動向庁舎は企業および家計への信用状況は安定していることを示している
- 流動性は引き続き豊富にある
- 同時に企業の株式発行コストは依然として高い
- 多くの企業や家計はコロナ禍を乗り切るために多くの債務を負っている
- したがって、経済の悪化は金融の健全性を脅かし、銀行の財務諸表(balance sheets)の質にも響く可能性がある
- 財務諸表の疲弊と資金調達環境の厳格化が互いに強まることを避けることは引き続き必要不可欠である
(結論)
- 要約すれば、ユーロ圏経済は力強く回復している
- しかし見通しは、引き続きコロナ禍とワクチン普及の進展に依存している
- インフレ率の足もとの上昇は大部分が一時的と見られる
- インフレ基調は緩やかに上昇すると見られるが、中期的なインフレ率は目標を依然として下回っている
- 我々の政策手段はフォワードガイダンスの変更を含めて、経済の強固な回復と、究極的には2%のインフレ目標の達成を支援するものである
(質疑応答(趣旨))
- フォワードガイダンスの変更について。2週間前は全会一致ではなかったと聞いているが、本日はどうだったか。全会一致だったか、反対意見があったのか。2週間前に議論した内容と今回のガイダンスはどのように違うのか
- 金融政策の枠組みとしての新戦略の採用は全会一致だった
- フォワードガイダンスを戦略の意図に合わせて修正する必要があるという点も全会一致だった
- 政策金利のフォワードガイダンスの調整については、全会一致ではなかったが、大多数(overwhelming majority)の合意だった
- フォワードガイダンスは3つの重要な基準(key criteria)からなっている
- 1つ目はインフレ率が見通し期間が終わるより前に2%に達する見込みであること
- 2つ目は残りの見通し期間にわたって持続していること
- 3つ目はインフレ基調について、実際に、中期的な2%のインフレ率達成と整合的であるような十分な進展が見られること
- デルタ株について。デルタ株によってコロナ禍が長期化するリスクがあるか。デルタ株はリスク評価に適切に織り込まれているか
- 6月時点での見通しでは、実際に7-9月期に封じ込め政策が一部継続され、10-12月期にも一部残るという前提が置かれている
- 観測データは4-6月期の見通しと整合的で、7-9月期の強い成長が見込めそうである
- 感染予防策によって昔のように感染が経済への悪影響を及ぼさないようになっており、その要素であるワクチンの動向を注視している
- 国によって状況は異なるが、過去の感染拡大を経験したことで、市民や政府、衛生当局が、経済への影響を損なわずに健康を守るという対応をすることに慣れつつある
- 今日の内容を市場がどう解釈するかについて。明らかに金利と金融政策について、より低くより長くするだろうという点でハト派と見られるが、どうか
- 3つの重要な基準を考慮しているということをできる限り伝えたいと思っている
- より低くより長くというつもりはなく、拙速な引き締めを我々の誰も意図していないと言いたい
- 3月末に終了するPEPPとその変更の可能性について議論したか、他のプログラムへの移行が必要と考えているかについて聞きたい
- インフレ率とその他の要素が6月の見通しと整合的であることから、これまでと比べ大幅な加速したペースを維持することを決定したが、PEPPのプログラムそれ自体についての議論は時期尚早であり、議論していない
- インフレ率とその他の要素が6月の見通しと整合的であることから、これまでと比べ大幅な加速したペースを維持することを決定したが、PEPPのプログラムそれ自体についての議論は時期尚早であり、議論していない
- 2%を見通し期間で達成すべきと述べたが、最新の6月の見通しのインフレ率は2%の目標よりも離れている。これについて何をするつもりがあるか。より強力な対応策が必要ではないか
- 我々が経済のすべての部門について良好な資金調達環境を維持できるようにしているという点で変化していない
- 我々はインフレで実現したいことを阻害する引き締めには対抗しようとしている
- 危機の途中であるため、PEPPのいかなる出口も時期尚早であると考えているが、目標はコロナ禍前の状況に戻りつつあり、見通しも戻りつつある
- 見通し期間が終わるかなり前について。あなたは見通しの中間地点に言及したが、これは見通し1年目というよりも2年目と見たらよいのか
- 見通し期間は年終盤にはシフトするので、1年目、2年目というのはやや誤解を招く。そのため、見通し期間の中間地点という方を好む
- しかし、これは決定事項(cast in stone)を意味しない。実際の基準の採用は概して理事会が判断する事項である
- 6月までのガイダンスはインフレ見通しが確実に収束するとなっており、私にとっては誤解しやすい表現だった。現在は、理事会がインフレの収束を観測するとなり、当初の私の理解ではインフレの効果的な計測が問題になるように思われたのだが、違うか
- 見通し期間での2%というのは予測に基づいたもので、つまりスタッフ見通しにより提示されて、理事会により判断される
- 整備について言っている訳ではない
- PEPPの新型コロナ危機が去ると判断するまで実施するという言及について。中央銀行の人たちがコロナ禍の終了を判断するための情報とは何か、どのような基準を使うのか
- 科学者や専門家により、また雇用、製造業、サービス業、貿易についての事実を観察することによって、危機についての経済的な情報を知ることができる
- ワクチンや市民の行動によりコロナ危機が早く去ることを期待している
- 理事会はフォワードガイダンスを修正し、金利についての持続的な行動にコミットメントしたが、より強力な行動については言及がなかった。これはあなたがすでに述べた手段が十分に強力であることを意味しているのか
- よく知っている通り、我々はフォワードガイダンスだけを使うのではない
- 道具箱にある他の手段や、現在利用している手段についても使われる
- TLTROについて。声明ではTLTROは魅力的な資金源だが、重要な役割を果たしているとはしなかった。TLTROによる資金供給はどの程度重要なのか
- TLTROについては今回議論の対象にならなかった
- 合理的な条件で実施しているものの最近は依然ほど需要が大きくない。この一部は企業が十分な流動性をすでに確保しているためだと見られる
- 協調しておきたいのは、投資のための資金需要が回復している点である。この動向について注視していきたい
- コロナ禍のインフレへの影響が解消するまでは時間を要すると述べたが、それはPEPPの購入ペースがすぐに鈍化することを期待すべきではない、ということを意味しているか
- 我々がコミットしている良好な資金調達環境とインフレ見通しに対する評価に依存する
- 9月に見通しを公表する予定なので、現時点での判断は時期尚早であると考えている
- PEPPが終了し将来の資産購入策で保有制限の自主規制が再開された場合、それによる制約を懸念している人たちについて、何を伝えたいか
- この特定の問題については議論していないし、伝えることはない
- この特定の問題については議論していないし、伝えることはない
- 新戦略により、金利をできるだけ長くできるだけ低く維持し、欧州の財務相を市場金利から守ることを目標にしているとも言えそうだ。この点では、ECBの財務上の優位性を示す新戦略といえる
- 新戦略は金利を長期にわたって低くするということを意図している訳ではない
- 2%の物価目標を意図している
- 銀行の計算によれば、ECBは去年実施したように、ユーロ圏の21年の財政赤字全体をファイナンスできる可能性がある。新規発行国債のネットでの買い越しは本当に財政ファイナンス(monetary state financing)ではないのか
- それは事実に反すると言いたい
- 問題は、財政ファイナンスなのか、財政上の優位性なのかという点ではないと思う
- 条約の中に安全網(safeguards)があるのだと思う
- 我々がしたことについて、するべきではなかったとは思わない
- 今日のフォワードガイダンスに賛成しなかった人の主張を簡潔に教えてほしい
- その人達に聞いた方が良いと思う。彼らの主張について私から言いたいとは思わない
- 私にとって重要なのは、第1に、とても友好的で、オープンで、本質的な議論ができたという点である
- 第2は憲法や枠組みにあたる戦略が理事会メンバーの全会一致によって採択された点である
- ごく少数のメンバーだが、彼らに聞くのが最も良いと思う。おそらくあなたは探しあてるだろうし、とても興味を惹かれるだろう
- 少なくとも理事会のメンバーの一人が、中期というのは2・3年ではなく、状況による(state dependent)と言ったことが記録されているが、これに同意するか
- はい。我々は2つの異なる時間を扱っている
- フォワードガイダンスがよりどころにしている多くは、実際の見通し期間である
- 中期的な期間というのはおそらくこれを越えており、インフレ計算には関係しない他の要因である雇用や気候変動といったことを考慮する必要がある
- インフレ見通しは来年以降1.5%以下となっている。新しいフォワードガイダンスにもとづけば、金融緩和をすぐに拡大するということを意味することにならないか。新しいフォワードガイダンスだけで十分なのか
- 9月の四半期毎の見通しがどうなるかを確認し、必要があればすべての手段を調整するつもりである
- 9月の四半期毎の見通しがどうなるかを確認し、必要があればすべての手段を調整するつもりである
- ユーロ圏で急上昇する住宅価格について。ここ15年で最速のペースだと思う。これは懸念になるか、新しく注目する持ち家の帰属家賃に関連して何か考えるべきことがあるか
- フォンデアライエン欧州委員会委員長に、統計局(Eurostat)の帰属家賃を指数に反映させるという仕事を加速させるように依頼して欲しい旨について書簡を送った
- その間、我々は利用できる代替指標を使って考慮する
- この件については、少し会合で議論している
- APPについて。金利についてのフォワードガイダンスと並行して、よりフォワードガイダンスと紐づくようにするという議論はあったか
- APPと金利の関係については議論しなかった。
- APPと金利の関係については議論しなかった。
- 一時的なインフレについて。目標をやや上回っても良いという意味についてもう少し教えてほしい。また、目標を長期に下回ったらどうなるのか、さらなる行動を行う必要となる点があるのか
- よく、オーバーシュート(overshooting)と呼ばれるが、適度な(moderate)オーバーシュートを認めるということを言っている
- 適度な、という点もまた判断の要素となる
- 適度なオーバーシュートとその反対となる過度な(excessive)オーバーシュートについて数値的な基準を設けるつもりはない
- 金利の調整について、全会一致ではなかったという事だが、何か教えてもらえる意見はないか
- フォワードガイダンスの調整についての反対意見はあったが、私はそれについて深掘りはしない
- あなたが、仕事として誰が何と言ったかについて明らかにするものだと思っている
- 資産購入のガイダンスについて、他の中央銀行がそれぞれのフォワードガイダンスを検討しはじめていることへのリスクはないのか、その場合、ECBは他の中央銀行と同調(sync)することからはずれるのか
- (言及なし)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2002年 東京工業大学入学(理学部)
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
(2021年07月26日「経済・金融フラッシュ」)
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【ECB政策理事会-新戦略のもとフォワードガイダンスを大幅修正】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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