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2021年07月14日
1――少子高齢化の進展、社会保障制度の持続可能性に課題も
2021年5月11日に発表された国勢調査の結果によって、中国における少子高齢化の進展が浮き彫りとなった。この10年間で、労働の中核となる15-59歳の生産年齢人口の割合が6.8ポイント減少に転じる一方、60歳以上の高齢者の割合は5.4ポイント上昇、高齢者数は48.6%増加し、人口に占める割合は18.7%となった。出生率の低下も深刻化している。中国は2016年に二人っ子政策に移行したにもかかわらず、1人の女性が一生の間に何人の子を産むかを表す合計特殊出生率 は1.3と、日本(1.34)以下となった 。1世帯あたりの平均人数は2.62人と3人を割り込む状態となっている。
このような状況を受けて、5月31日、中共中央政治局は第3子の出生を認める方針を発表した。この方針の先には、産児制限の全面撤廃を見据えているのであろう。今回は政府による子育てサポート、就労支援策なども発表されるなど、中国が歴史的に実施してきた人口政策は大きな転換点を迎えている。少子高齢化の進展は国の財政、安全保障のみならず、高齢者を現役世代で支える社会保障制度の維持にも大きな影響を与える点にも留意が必要である。
このような状況を受けて、5月31日、中共中央政治局は第3子の出生を認める方針を発表した。この方針の先には、産児制限の全面撤廃を見据えているのであろう。今回は政府による子育てサポート、就労支援策なども発表されるなど、中国が歴史的に実施してきた人口政策は大きな転換点を迎えている。少子高齢化の進展は国の財政、安全保障のみならず、高齢者を現役世代で支える社会保障制度の維持にも大きな影響を与える点にも留意が必要である。
2――加入者10億人、中国が抱える世界最大規模の公的年金制度
高齢化が進む中で懸念されるのが、自身が高齢となった場合、生活を支える公的年金制度がどうなっているかであろう。政府は現在の第14次5ヵ年計画において、高齢化問題への対応を国家戦略に位置付けるとしており、第三子出産容認もその一環と考えられる。また、年金については、省(自治区・直轄市)単位で管理されている年金積立金の全国統合、定年退職年齢(受給開始年齢)の段階的な引き上げや、個人年金などの民間保険の積極的な活用が計画されている。
中国政府は、2021年2月、第13次5ヵ年計画(2016-2020年)の成果として、「2020年末までの公的年金制度の加入者総数は9.99億人1、加入率は90%を超えた。加入者数の規模は世界の公的年金制度の1/3を占め、世界最大規模の年金制度となった」2と胸を張った。人口規模から考えれば世界最大規模というのは理解できるが、実質的に老後の生活を支え得る状況になっているのであろうか。
以下では、それを推察する参考の1つとして、金融系メディアと年金専門の保険会社による『年金発展指数(2020)報告』(2021年6月発表、以下「報告」とする)3を概観してみる。報告は、年金制度(都市の会社員を対象とした強制加入の「都市職工年金」)の状況を3地域に分類して調査している。3地域は、(1)北京・天津・河北省といった首都圏の三大行政区、(2)長江デルタ地域(上海市、江蘇省、浙江省など長江河口の三角洲を中心とした地域)、(3)珠江デルタ地域(珠江河口の広州市、深圳市などを含む三角地帯)となっている。
1 中国の公的年金制度は大きく分けて2種類あり、主に都市の会社員を対象とした都市職工年金(公務員を含む)と、都市部の非就労者・農村部住民を対象とした都市・農村住民年金で、その加入者の合計数となる。なお、強制加入の都市職工年金は全体の45.7%を占める一方、任意加入の都市・農村住民年金は54.3%を占めている。
2 中華人民共和国中央人民政府「我国基本医療保険覆盖超過13億人 基本養老保険覆盖近10億人」(2021年2月12日)
http://www.gov.cn/xinwen/2021-02/12/content_5586882.htm、 2021年7月6日アクセス
3 『年金発展指数(2020)報告』は、中国銀行保険報と長江養老保険会社が調査を実施し、政府系シンクタンクである中国社会科学院の世界社保研究センターが学術的なサポートをして作成された。年金に関する現状について、地域を主に3つに分類してており、地域間格差を確認することができる点が特徴。3地域とは、(1)北京・天津・河北省といった首都圏における三大行政区、(2)長江デルタ地域、(3)珠江デルタ地域となっている。調査は、3地域のうち経済規模と人口規模が大きい上位18都市を抽出し、16-59歳に対して実施。有効回答件数は5,254件。有効回答件数のうち、上海、北京、深圳といった大規模都市からの回答が38.65%、次いで、広州、蘇州、杭州、南京からの回答が28.38%を占めている。職業別では企業就労者が61.84%、公務員が21.36%、自営業者などが14.56%、失業が2.25%。年齢別では30-34歳が最も多く30.59%、次いで25-29歳が26.44%、35-39歳が20%、40-44歳が11.29%となっている。ただし、年齢構成については調査した地域に基づいており、中国全体の人口構成比に基づいた調整はされていない模様。
中国政府は、2021年2月、第13次5ヵ年計画(2016-2020年)の成果として、「2020年末までの公的年金制度の加入者総数は9.99億人1、加入率は90%を超えた。加入者数の規模は世界の公的年金制度の1/3を占め、世界最大規模の年金制度となった」2と胸を張った。人口規模から考えれば世界最大規模というのは理解できるが、実質的に老後の生活を支え得る状況になっているのであろうか。
以下では、それを推察する参考の1つとして、金融系メディアと年金専門の保険会社による『年金発展指数(2020)報告』(2021年6月発表、以下「報告」とする)3を概観してみる。報告は、年金制度(都市の会社員を対象とした強制加入の「都市職工年金」)の状況を3地域に分類して調査している。3地域は、(1)北京・天津・河北省といった首都圏の三大行政区、(2)長江デルタ地域(上海市、江蘇省、浙江省など長江河口の三角洲を中心とした地域)、(3)珠江デルタ地域(珠江河口の広州市、深圳市などを含む三角地帯)となっている。
1 中国の公的年金制度は大きく分けて2種類あり、主に都市の会社員を対象とした都市職工年金(公務員を含む)と、都市部の非就労者・農村部住民を対象とした都市・農村住民年金で、その加入者の合計数となる。なお、強制加入の都市職工年金は全体の45.7%を占める一方、任意加入の都市・農村住民年金は54.3%を占めている。
2 中華人民共和国中央人民政府「我国基本医療保険覆盖超過13億人 基本養老保険覆盖近10億人」(2021年2月12日)
http://www.gov.cn/xinwen/2021-02/12/content_5586882.htm、 2021年7月6日アクセス
3 『年金発展指数(2020)報告』は、中国銀行保険報と長江養老保険会社が調査を実施し、政府系シンクタンクである中国社会科学院の世界社保研究センターが学術的なサポートをして作成された。年金に関する現状について、地域を主に3つに分類してており、地域間格差を確認することができる点が特徴。3地域とは、(1)北京・天津・河北省といった首都圏における三大行政区、(2)長江デルタ地域、(3)珠江デルタ地域となっている。調査は、3地域のうち経済規模と人口規模が大きい上位18都市を抽出し、16-59歳に対して実施。有効回答件数は5,254件。有効回答件数のうち、上海、北京、深圳といった大規模都市からの回答が38.65%、次いで、広州、蘇州、杭州、南京からの回答が28.38%を占めている。職業別では企業就労者が61.84%、公務員が21.36%、自営業者などが14.56%、失業が2.25%。年齢別では30-34歳が最も多く30.59%、次いで25-29歳が26.44%、35-39歳が20%、40-44歳が11.29%となっている。ただし、年齢構成については調査した地域に基づいており、中国全体の人口構成比に基づいた調整はされていない模様。
3――年金の加入状況は、就労者数をベースに考えると地域格差が顕著。会社員が強制加入する「都市職工年金」は首都圏が90%を超えるのに対して、珠江デルタ地域は66%に留まる。
報告に基づいて、年金の加入状況を確認してみる。年金の加入状況を計る上で、報告では、当該都市の都市職工年金の加入者数をその都市の企業(個人経営を含む)で働く就労者数で除して算出している。企業で働く会社員のうち、実質的にどれほどが年金に加入しているのかを示していると言えよう。
それに基づくと、全国平均の加入状況は74.17%であった。3地域別にみると、首都圏三大行政区においては92.77%と高い一方、長江デルタ地域では70.17%、珠江デルタ地域は66.21%と低く、地域差が大きいことが分かる(図表1)。政治のお膝元である首都圏三大行政区は9割を超える一方、製造業、IT産業などを中心に若年層が人口の多くを占める珠江デルタ地域では、7割にも達していない状況にある。強制加入の年金制度においても、地域によっては加入が進んでいない点から、今後、年金受給に際しても地域差が発生すると推察される。
一方、中国では、年金保険料を支払う上での負担度も各地域によって異なると言えよう。年金の保険料率について、現行では基本的に雇用主負担が16%、従業員負担が8%の合計24%となっている。しかし、中国では年金制度を管轄している各市の高齢化率、積立金の運営状況などを考慮した上で調整をすることも可能となっている。
図表2は、首都圏三大行政区(北京市、天津市、河北省)、長江デルタ地域(上海市、江蘇省、浙江省、安徽省)、珠江デルタ地域(広東省)を構成する直轄市・省において、1人あたりの平均年金保険料が前年の在職職員平均給与のうちどれくらいを占めるかの負担度と、それぞれの高齢化率を示したものである。市・省ごとの平均給与の状況にもよると思われるが、天津市、上海市といった高齢化が進んだ都市では負担度が28.97%、27.63%と高くなっている。一方、高齢化率が相対的に低い広東省は規定の24%よりも負担度合が低い17.41%となっており、高齢化と負担度合には一定の相関性があると考えられよう。負担度が最も高い天津市(28.97%)と最も軽い広東省(17.41%)を比較した場合、その差は11ポイント以上もあり、負担の多寡の差も大きい。
また、図表1と図表2から、負担度の高い首都圏三大行政区の加入割合が高いにもかかわらず、負担度が低い珠江デルタ地域の加入割合が低いといった現況が、年金積立金の全国統合を阻む理由の1つと推察される。
それに基づくと、全国平均の加入状況は74.17%であった。3地域別にみると、首都圏三大行政区においては92.77%と高い一方、長江デルタ地域では70.17%、珠江デルタ地域は66.21%と低く、地域差が大きいことが分かる(図表1)。政治のお膝元である首都圏三大行政区は9割を超える一方、製造業、IT産業などを中心に若年層が人口の多くを占める珠江デルタ地域では、7割にも達していない状況にある。強制加入の年金制度においても、地域によっては加入が進んでいない点から、今後、年金受給に際しても地域差が発生すると推察される。
一方、中国では、年金保険料を支払う上での負担度も各地域によって異なると言えよう。年金の保険料率について、現行では基本的に雇用主負担が16%、従業員負担が8%の合計24%となっている。しかし、中国では年金制度を管轄している各市の高齢化率、積立金の運営状況などを考慮した上で調整をすることも可能となっている。
図表2は、首都圏三大行政区(北京市、天津市、河北省)、長江デルタ地域(上海市、江蘇省、浙江省、安徽省)、珠江デルタ地域(広東省)を構成する直轄市・省において、1人あたりの平均年金保険料が前年の在職職員平均給与のうちどれくらいを占めるかの負担度と、それぞれの高齢化率を示したものである。市・省ごとの平均給与の状況にもよると思われるが、天津市、上海市といった高齢化が進んだ都市では負担度が28.97%、27.63%と高くなっている。一方、高齢化率が相対的に低い広東省は規定の24%よりも負担度合が低い17.41%となっており、高齢化と負担度合には一定の相関性があると考えられよう。負担度が最も高い天津市(28.97%)と最も軽い広東省(17.41%)を比較した場合、その差は11ポイント以上もあり、負担の多寡の差も大きい。
また、図表1と図表2から、負担度の高い首都圏三大行政区の加入割合が高いにもかかわらず、負担度が低い珠江デルタ地域の加入割合が低いといった現況が、年金積立金の全国統合を阻む理由の1つと推察される。
4――年金については、前年の平均給与の6割ほどが支給されるものの、地域格差は大きい。定年退職後は家計の支出について、5割が「現在の支出の40-60%に縮小」と考えている。
一方、年金がどれくらい支払われるのかの規模感を確認してみる。中国において、年金支給は加入している市の平均給与も加味して算出されるため、そもそも地域格差をうみやすい構造となっている点に留意が必要である。報告においては、市ごとに支給される年金の平均受給額が当該市の前年の平均給与に対してどれほどの割合になるかで算出されている。
3地域をみると、高齢化率が相対的に高い首都圏を中心とした三大行政区は56.97%、長江デルタ地域では49.64%と低い一方、若年層が人口の多くを占めており、受給者数の人口に占める割合が低い珠江デルタ地域では69.13%と高くなっている。全国平均(57.95%)と比較しても、珠江デルタ地域は11ポイント以上高く、地域によって受給にも大きな格差があることが分かる。
また、それに呼応するように、定年退職後の支出は現在と比較してどれくらいの規模を考えているかについては、40-49%の規模まで縮小が28.97%と最も多く占め、50-59%の規模まで縮小が24.88%を占めるなど、全体の5割が支出を40-60%ほどの規模まで縮小と考えている(図表4)。しかしながら、少子高齢化が更に進み、年金制度を支える生産年齢人口が減少し続ければ、前年の平均給与の6割ほどである現状の支給水準が維持されるかも不透明である。支出を39%以下と大幅に縮小するという回答も16.35%を占め、定年退職後の生活や支出については控える傾向にある点がうかがえる。
3地域をみると、高齢化率が相対的に高い首都圏を中心とした三大行政区は56.97%、長江デルタ地域では49.64%と低い一方、若年層が人口の多くを占めており、受給者数の人口に占める割合が低い珠江デルタ地域では69.13%と高くなっている。全国平均(57.95%)と比較しても、珠江デルタ地域は11ポイント以上高く、地域によって受給にも大きな格差があることが分かる。
また、それに呼応するように、定年退職後の支出は現在と比較してどれくらいの規模を考えているかについては、40-49%の規模まで縮小が28.97%と最も多く占め、50-59%の規模まで縮小が24.88%を占めるなど、全体の5割が支出を40-60%ほどの規模まで縮小と考えている(図表4)。しかしながら、少子高齢化が更に進み、年金制度を支える生産年齢人口が減少し続ければ、前年の平均給与の6割ほどである現状の支給水準が維持されるかも不透明である。支出を39%以下と大幅に縮小するという回答も16.35%を占め、定年退職後の生活や支出については控える傾向にある点がうかがえる。
5――定年退職後に向けた準備は4割が「考えていない」。ただし、定年退職後、8割は「何らかの仕事をする必要がある」と考えている。ライフプランのサポートや、個人年金の必要性の訴求など民間保険の活用の余地は大きい。
では、定年退職後の生活に向けた準備はどう考えているのであろうか。報告では定年退職後の生活について「考えたことがない」が40.37%を占める一方、「考えたいが、どうしたらいいか分からない」が23.77%を占めた(図表5)。この結果については、調査対象が3地域の中でも上位・大規模都市が中心となっており、年齢構成としても30代と若年層が半数を占めていること点も影響しているかと思われる。しかし、上掲の年金に関する状況を考えると、現役世代から定年退職に向かうまでのライフプランのサポートや、定年退職後の生活を考えた個人年金加入への訴求など民間保険の活用の余地は大きいであろう。
また、直近では2035年の年金積立金枯渇問題や、政府による受給開始年齢の引き上げの本格検討などの報道が相次ぎ、若年層を中心に自身が高齢となった場合、年金が本当に受給できるのかとった不安も散見される。報告によると、定年退職後の再就職などについては、「必ずする必要がある」が21.20%と2割を占め、「おそらくする必要がある」(32.26%)、「一定程度する必要がある」(26.55%)を含めるとおよそ8割が何らかの仕事をする必要があると考えていることが分かる(図表6)。
また、直近では2035年の年金積立金枯渇問題や、政府による受給開始年齢の引き上げの本格検討などの報道が相次ぎ、若年層を中心に自身が高齢となった場合、年金が本当に受給できるのかとった不安も散見される。報告によると、定年退職後の再就職などについては、「必ずする必要がある」が21.20%と2割を占め、「おそらくする必要がある」(32.26%)、「一定程度する必要がある」(26.55%)を含めるとおよそ8割が何らかの仕事をする必要があると考えていることが分かる(図表6)。
この点から、年金制度の現状から、定年退職後または高齢となった際の再就職・再就労に対する意識が高まりつつある点がうかがえる。加えて、政府による現役世代への子育てサポートが強化され、現在それを担っている高齢者自身が就労しやすい環境となった場合4、年金受給開始年齢の引き上げへのこれまでの強い反発も緩和されていく可能性もあろう。
これまでの報告の内容から、中国の年金制度は地域による格差が大きく、その背景には制度の構造上、負担、受給の両面において格差をうみやすい仕組みになっている点がうかがえた。加えて、一人っ子世代の世帯が社会の中核をなしていく中で、一人っ子の夫婦(2人)が、それぞれの両親(4人)と自身の子ども(1人)を現実的に支える状況に移行している。そういった一人っ子世代が、今後の生活への準備をどうするべきか迷いながらも、自身の定年退職後を意識した際に、「就労」という選択を想像し始めている点もうかがえる。中国では、各地域によって制度が分立し、格差が大きいゆえに、その補完となりうる民間保険の役割は大きい。今後、定年退職を迎えるまでのライフプランや、その後の生活設計の提案など、役割を発揮する余地は大きいであろう。
4 丁紅衛・王麗(2021)「中国における女性就業の変化とその要因分析-「一人っ子政策」の撤廃を背景に」では、祖父母世代からの育児支援が女性の市場参加を推進する効用が見られ、「中国健康栄養調査」(1989~2004年)のパネルデータを用いた実証研究では、祖父母世代が孫世代の世話をすることで、若い世代の親の市場労働時間を増やし、労働参加の機会コストである育児コストを減らすことができるとしている。出典は愛知大学現代中国学会『中国21』vol.54、198頁
これまでの報告の内容から、中国の年金制度は地域による格差が大きく、その背景には制度の構造上、負担、受給の両面において格差をうみやすい仕組みになっている点がうかがえた。加えて、一人っ子世代の世帯が社会の中核をなしていく中で、一人っ子の夫婦(2人)が、それぞれの両親(4人)と自身の子ども(1人)を現実的に支える状況に移行している。そういった一人っ子世代が、今後の生活への準備をどうするべきか迷いながらも、自身の定年退職後を意識した際に、「就労」という選択を想像し始めている点もうかがえる。中国では、各地域によって制度が分立し、格差が大きいゆえに、その補完となりうる民間保険の役割は大きい。今後、定年退職を迎えるまでのライフプランや、その後の生活設計の提案など、役割を発揮する余地は大きいであろう。
4 丁紅衛・王麗(2021)「中国における女性就業の変化とその要因分析-「一人っ子政策」の撤廃を背景に」では、祖父母世代からの育児支援が女性の市場参加を推進する効用が見られ、「中国健康栄養調査」(1989~2004年)のパネルデータを用いた実証研究では、祖父母世代が孫世代の世話をすることで、若い世代の親の市場労働時間を増やし、労働参加の機会コストである育児コストを減らすことができるとしている。出典は愛知大学現代中国学会『中国21』vol.54、198頁
(2021年07月14日「基礎研レター」)
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
片山 ゆきのレポート
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