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日本政府は2020年10月の臨時国会で、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指すことを宣言した。さらに2030年に向けた温室効果ガスの削減目標について、気候サミットにおいて2021年4月22日、菅義偉首相が演説し、2030年度の温室効果ガス削減目標を「2013年度から46%削減し、さらに50%の高みに向け挑戦を続けていく」と宣言した。当初26%削減としたものを大幅に引き上げた。一層、政府はESG投資を促進していくと予想される。
ESG投資促進が期待されているのは確定給付企業年金である。企業型確定拠出年金でも、母体企業が投資先の選択肢として、ESG関連の投資信託を用意することは出来る。しかしながら、加入者が個別に運用先を決める確定拠出とは異なり、一括で運用を行う確定給付企業年金の方がESG投資のインパクトが期待できる。ESG投資評価の方法として図表1のような7つの代表的な方法がある。これを大別すれば、特定の基準に基づきスクリーニングをして投資対象を絞り込む方法、特定のテーマに基づいて投資対象を決定する方法、その他の手法(ESG統合型、エンゲージメント型)の3つに分類することができる。
1-3 アセットオーナーは、最終受益者の視点を意識しつつ、その利益の確保のため、自らの規模や能力等に応じ、運用機関による実効的なスチュワードシップ活動が行われるよう、運用機関に促すべきである。
原則1-3では、アセットオーナーとしての責任が明記されている。企業年金制度のステークホルダーは、母体企業と加入者・受給者である。母体企業の方針でESG投資を行うことになったとしても、それにより資産運用のボラティリティが高まることは避ける必要がある。確定給付企業年金で重要なことは、企業外部に資金拠出することで年金原資を確実に確保すること、将来の年金給付の源泉としてのリターンを確保すること、の2点にある。例えば、リスクの高いインパクト型投資を行うとすれば、加入者・受給者への相応のアカウンタビリティをアセットオーナーとしての母体企業は果たさなければならないであろう1。ESG投資を先行して行っているセコム企業年金基金、キッコーマン企業年金基金は、スチュワードシップ・コードの受け入れだけでなく、ESG要因を投資判断に取り込む国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)に署名し、自社の年金資産の運用に関する基本方針に、組み込んでいる。ただし、国際的な投資原則に準拠している企業年金制度は国内ではまだごく少数である。国内外の原則に準拠した形で基本方針の作成を行うことは、必然的に企業年金制度内のガバナンスを高めることにも繋がる。ESG投資が、スチュワードシップ・コードを含めた諸原則への準拠を促進し、企業年金制度のガバナンスを高めることを期待したい。
1 スチュワードシップ・コードの原文および現在の受け入れ機関投資家リストは金融庁「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会(https://www.fsa.go.jp/singi/stewardship/index.html)から入手できる。
(2021年07月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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