2021年05月14日

景気ウォッチャー調査(21年4月)~感染再拡大や緊急事態宣言再発出により景況感は大幅に悪化

経済研究部 准主任研究員   山下 大輔

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1.景気の現状判断DIは2か月ぶりに低下、先行き判断DIは2か月連続の低下

現状判断DI・先行き判断DIの推移 5月13日に内閣府が公表した2021年4月の景気ウォッチャー調査(調査期間:4月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は39.1と前月から9.9ポイント下落した。また、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は41.7と前月から8.1ポイント低下した。現状、先行きともに大きな落ち込みとなった。
地域別でみても、現状判断DI(季節調整値)は、全国12地域の全てで前月よりも悪化した。前月からの下落幅が最も大きかったのは四国(前月差▲16.6ポイント)であった。他方、先行き判断DIは東北を除く全国11地域で前月よりも悪化した。四国が最も下落幅が大きかった(前月差▲13.5ポイント)。四国の下落幅が大きかったのは一部の県で感染者数が過去最多を記録するなどの感染拡大の影響などがその要因とみられる。

今回の結果からは、一部地域に対して4月25日から緊急事態宣言が実施されたことを含む、感染再拡大による景況感の悪化が示された。なお、景気の現状水準判断DI(季節調整値)も前月から4.2ポイント下落の32となり、厳しい状況が続いている。
地域別現状判断DI・先行き判断DIの前月差/現状判断DIと現状水準判断DIの比較

2.景気の現状判断DI(季節調整値):全ての内訳で低下

現状判断DI(季節調整値)は、4月に9.4まで落ち込んだ後に、5月から6か月連続で改善し、10月には50を超えた。その後の感染拡大により、11月から下落に転じ、21年1月には31.2まで落ち込んだが、2月、3月と大幅上昇に転じていた。しかし、急激な感染再拡大と一部地域に対する休業要請を伴う緊急事態宣言再発出やまん延防止措置発出などにより、4月は大きな落ち込みとなった。
現状判断DI・回答者構成比 景気の現状判断DIの回答者構成比をみても、悪化と回答した割合(「悪くなっている」と「やや悪くなっている」の回答の合計)が急増し(3月:25.2%→4月42.5%)、その分だけ、改善と回答した割合(「良くなっている」と「やや良くなっている」の回答の合計)(3月:29.5%→4月:15.0%)と現状維持(「変わらない」)と回答した割合 (3月:45.4%→4月:42.5%)が減少しており、急速な悪化が伺える。
現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は35.4(前月差▲11.9ポイント)、企業動向関連は45.8(同▲5.0ポイント)、雇用関連は49.4(同▲7.5ポイント)であり、内訳の全てで3か月ぶりの低下となった。企業動向関連や雇用関連は再び50を割った。また、家計動向関連や企業動向関連の内訳全てで低下したが、家計動向関連の飲食の落ち込みが大きかった(前月差▲20.5ポイント)。家計動向関連では、小売(前月差▲13.1ポイント)やサービス(同▲9.3ポイント)の落ち込みも大きかった。
現状判断DIの内訳の推移/現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
回答者のコメントの多くは感染拡大や緊急事態宣言再発出の悪影響に関するものであったが、巣ごもり需要などによる好調さに言及するコメントもあった。

<感染再拡大や緊急事態宣言再発出の悪影響に関する主なコメント>
  • 観光業界においては、Go To Travelキャンペーン再開のめどが全く立たず、観光支援事業においても先行きが見通せない状況である。都市部での緊急事態宣言の発出により、店頭への来店及びオンラインによる予約も減少し、更にキャンセルが続出している。(四国・旅行代理店)
  • 酒屋なので、これまでも時短営業で非常に悪かったが、ここにきて酒を飲むこと自体を駄目と言われているので、最悪である(南関東・食料品製造業)
  • 4月は異動等もあり、歓送迎会のシーズンで、本来なら夜に団体での予約があるのだが、今月は1件もない。世間では、外に飲みに行くという行為自体が悪のように見られているので、飲食業としてはどう対応するのがいいのか、本当に分からなくなってきている(南関東・一般レストラン)。
  • 休業要請に伴う営業の自粛により、売上がゼロになるだけでなく、ゴールデンウィークから母の日に掛けて積上げていた、商材の在庫リスクも高まっている。さらに、当社だけでなく、取引先の雇用にも影響が出ている(近畿・百貨店)。
  • 新型コロナウイルスの影響で、一般店舗や飲食店の空きが増えている(近畿・不動産業)

<巣ごもり需要に関する主なコメント>
  • 一時、家飲みや家庭内飲食は落ち着いていたが、新型コロナウイルスの感染急拡大に伴い、顕著に増えている。ただし、前年のようなパニック買いの動きは見られない(近畿・スーパー)
  • 通信、放送共に契約者数が前年同期比を上回っている。特に放送において新メニューが好評で、契約者数の増加につながっている(北陸・通信会社)。
  • 来客数は前月及び前年と比較すると減少傾向であるが、相変わらず巣籠り需要で1度の来店で購入する客単価は、増加している。店頭とは別に地震後の復旧に伴い、開業した事業所関係の客が新規に増加し、景気は若干良くなっている(九州・その他専門店[コーヒー豆])。
  • 電子商取引の発送が好調で、新たな需要も出ている。企業からの受注量は微減であるが、個人市場は好調である(中国・輸送業)。
 
<コロナ対策のための政策効果に関する主なコメント>
  • 新型コロナウイルス感染拡大による自粛に加え、飲食店への時短営業要請の影響で、国や自治体の支援金を活用している人も多く、そうした対策が支えていると感じている(九州・新聞社[求人広告])。
  • 緊急事態宣言により、小売業者は更なる減収が予想され、卸売業を始めとする様々な取引先への影響が大きくなる。行政の支援策に手詰まり感もあり、融資支援メニューも少ない。これまで1年しのいできたが、先が見通せない取引先が増加している(北陸・金融業)。

3.景気の先行き判断DI(季節調整値):全ての内訳で低下

2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は、20年7月に感染拡大への懸念で大きく落ち込んだ後に、11月を除いて上昇を続けていたが、21年3月から2か月連続で大きく低下した。
先行き判断DI・回答者構成比 景気の先行き判断DIの回答者構成比でみても、悪化と回答した割合(「悪くなる」と「やや悪くなる」の回答の合計)(3月:26.4%→4月:37.6%)と現状維持(「変わらない」)と回答した割合(3月:46.9%→4月48.1%)は増加し、改善と回答した割合(「良くなる」と「やや良くなる」の回答の合計)(3月:26.7%→4月:14.3%)は減少した。
先行き判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は40.0(前月差▲9.0ポイント)、企業動向関連は45.3(同▲5.6ポイント)、雇用関連は45.5(同▲7.5ポイント)であり、全てで下落した。であり、50超えを継続している。家計動向関連の内訳では、飲食の落ち込みが大きかった(前月差▲11.7ポイント)。
先行き判断DIの内訳の推移/先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
回答者のコメントからは、変異株への懸念や感染拡大を繰り返す状況の長期化への懸念などが多く見られた。その他、ワクチンやオリンピック、巣ごもり需要に言及するコメントなどもあった。

<変異株に言及した主なコメント>
  • 新型コロナウイルスは当分収まりそうもないし、また、変異ウイルスが身近に迫っているような感覚も、客の様子からうかがえる。前年の今頃に比べると、緊迫感が数倍増しているような気がする。この先がまだまだ心配である(南関東・タクシー運転手)
  • 新型コロナウイルスとの共存で、暮らしに感染対策が定着しつつあるなか、ワクチンが経済活性化の切り札とされてきた。しかし、供給や接種は遅々として進んでおらず、変異株の感染の急拡大によって3度目の緊急事態宣言が発出された。企業業績には大きな痛手となるため、株価が下落しているように、先行きの不安感が強く、景気の回復が見通せない状況である(近畿・百貨店)

<コロナの長期化の影響に関する主なコメント>
  • 新型コロナウイルスの感染拡大が長引いていることから、取引先の投資意欲がかなり減退している。これまでは様子見の状況にあったものが、現在は投資や経費の削減にかじを切っている雰囲気がうかがえる(北海道・その他サービス業[ソフトウェア開発])。
  • 3度目の緊急事態宣言が発出されたが、休業補償や契約終了の話は、以前の緊急事態宣言時よりも少ない。コロナ禍の状況に、企業側も慣れてきた印象を受ける(近畿・人材派遣会社)
  • これだけ飲食がたたかれると、スタッフの採用にも影響が出ており、維持のための採用もままならない状態である。売上が立たない分は借金でまかなってきたので、元金返済が始まると多少景気回復したくらいでは追い付いていかない(沖縄・その他飲食[居酒屋])。
  • 景気の悪化が長期にわたり継続しているため、個人的な財源を少しでも手元に置いておきたいと思う人が多くなっているようである。それに慣れてしまうと新型コロナウイルスが終息した後でも、思い切った消費にはつながらなくなることが予想される。(近畿・一般レストラン)

<ワクチン、東京オリンピック・パラリンピックへの期待に言及した主なコメント>
  • 東京オリンピック需要もあり、大型テレビの販売が期待できる。それと同時に、夏に向けて空調関係を中心に白物の動きも出てくる。新型コロナウイルス禍によりトレーニング機器や調理関係の商材も引き続き良い流れで推移すると見込んでいる(南関東・家電量販店)。
  • ワクチン接種への期待感があり、景気回復のきっかけとなることが見込まれる(四国・競輪競馬)。
  • 新型コロナウイルスのワクチン接種が進むことや東京オリンピックの話題が出てくることで、新型コロナウイルスの報道が落ち着き、消費が回復する。(中国・一般小売店)
 
<今後の巣ごもり需要への期待に言及した主なコメント>
  • 家で過ごす時間が多いため、エアコンや空気清浄機の販売に期待したい(北陸・家電量販店)。
  • 前年の今頃は、テレワークやリモートによる影響でパソコン、また巣籠り需要による白物家電の売行きが良かったが、今年は様子が変わり購入が止まっている。新型コロナウイルスの終息がみえない状況で、景気が落ち込んでいくのではないかと危惧している(九州・家電量販店)。
  • 春になってから人出も増えてきたが、新型コロナウイルス感染者が全国的にも増えているし、新型コロナウイルスのワクチンが行き届かないと安心できないため、しばらくはまだまだ巣籠り需要が続き、書籍の売上は良い状態が続く(東海・その他専門店[書籍])。
 
4月調査の結果は、急激な感染再拡大や一部地域に対する休業要請を含む緊急事態宣言再発出による景況感の急激な悪化を示すものであった。現状では感染が全国に広がりつつあるようにも見受けられ、来月調査の調査期間(5月25日~月末)までに感染状況が好転しない限り、来月調査では景況感は更に悪化する可能性が高い。他方、回答者のコメントにもあるように、在宅時間の増加で恩恵を受ける業種もあり、二極化が進むとみられる。感染収束までは今後も感染状況に景況感が左右される状況が続くだろうが、短期的な動きだけでなく、回答者からのコメントで言及された投資意欲の減退などの、感染拡大を繰り返す状況の長期化による影響にも留意する必要があるだろう。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

山下 大輔 (やました だいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2021年05月14日「経済・金融フラッシュ」)

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