2021年04月19日

わが国の不動産投資市場規模(2)~オフィスは「投資適格不動産(71.0兆円)」の4分の3、住宅は「投資適格不動産(30.4兆円)」の6割が「東京23区」に集積。

金融研究部 主任研究員 吉田 資

株式会社価値総合研究所 パブリックコンサルティング第3事業部 主任研究員 室 剛朗 

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3. 住宅の資産規模の推計結果

3-1. 概要
住宅の「収益不動産ストック」を把握するため、(1)「収益不動産」、(2)「投資適格不動産」のカテゴリーに分類し、推計を行った(図表-7)。
図表-7 「収益不動産」の定義(住宅)
まず、住宅の資産規模は、「収益不動産」で約64.9兆円、「投資適格不動産」で約30.4兆円と推計された(図表-8)。

各カテゴリーにおけるJ-REITの保有比率を確認すると、「収益不動産」で5.4%、「投資適格不動産」で9.4%となった。前述の「オフィス」におけるJ-REITの保有比率(「収益不動産:9.2%」、「投資適格不動産:11.9%」)と比較した場合、住宅の比率は低い水準に留まっている。
図表-8 住宅の「収益不動産」の市場規模
次に、住宅の市場回転率を確認する。RCAによれば、2020年の住宅の取引額は、約1.0兆円(前年比+60%)と大きく増加した。また、取引額に占めるクロスボーダー取引の割合は63%であった(図表-9)。

英国やアジアの多くの国では、土地のリース・ホールド(借地権の一種)が多いのに対し、日本では、土地の所有権が認められていること等から、住宅に対する海外投資家の関心は従前より高い。加えて、コロナ禍のもと、賃料変動が小さく安定収益を志向する投資家の関心が高まったことで海外資金が流入し、2020年は「住宅」の取引が活発であった。
図表-9 住宅の取引額(2007年~2020年)
2007年から2020年の住宅の年間取引額は、平均0.6兆円であった。これに基づく市場回転率は、「収益不動産」で0.9%、「投資適格不動産」で2.0%と推計される(図表-10)。前述のオフィス(「収益不動産:2.1%」、「投資適格不動産:3.1%」)と比べて、住宅の市場流動性は低いようだ。
図表-10 住宅の市場回転率
3-2. エリア別にみた住宅の「収益不動産ストック」
住宅の「収益不動産(64.9兆円)」をエリア別にみると、「東京都」が約26.8兆円(占率41%)とも大きく、次いで「大阪府」が約7.8兆円(12%)、「神奈川県」が約6.1兆円(9%)、「愛知県」が約2.9兆円(4%)、「埼玉県」が約2.6兆円(4%)、「福岡県」が約2.5兆円(4%)と推計された(図表―11)。「東京都」の割合が最も高いものの、「オフィス」と比較すると集積度は低く、地方都市も一定の市場規模を有していることが確認できる。
図表-11 住宅の「収益不動産」の市場規模(単位:兆円)
続いて、住宅の「投資適格不動産(30.4兆円)」をエリア別にみると、「東京23区」が約17.2兆円(占率57%)と最も大きく、次いで「大阪市」が約3.2兆円(10%)、「名古屋市」が約1.5兆円(5%)、「横浜市」が約1.5兆円(5%)、「福岡市」が約1.5兆円(5%)と推計された(図表―12)。「投資適格不動産」の約6割が「東京23区」に集積していることになる。
図表-12住宅の 「投資適格不動産」の市場規模(単位:兆円)
次回は、「商業施設」と「物流施設」、「ホテル」の推計結果について、詳細に報告した上で、不動産投資市場の拡大可能性について考察する。
参考図表1 「オフィス」 「コア投資不動産」の資産規模(単位:兆円)
 
 

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金融研究部

吉田 資 (よしだ たすく)

株式会社価値総合研究所 パブリックコンサルティング第3事業部 主任研究員 室 剛朗 

(2021年04月19日「不動産投資レポート」)

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