コラム
2021年04月01日

宝くじの法律-日本で、「1等・前後賞合わせて30億円」の宝くじは可能か?

保険研究部 主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   篠原 拓也

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コロナ禍で様々なイベントが中止、延期、無観客となる中、宝くじへの注目度が高まっている。巣ごもり生活でネット購入が浸透して、若者や女性など、購入する層が拡大しているという。

宝くじには、年に5回行われるジャンボ宝くじに代表される普通くじ(開封くじ)やロト、ビンゴ、ナンバーズといった自分で数字を選ぶ数字選択式宝くじ、削ったその場で当たりがわかるスクラッチ(被封くじ)など、いくつかの種類がある。普通くじや数字選択式宝くじは、ネット購入が可能だ。

ところで、宝くじには、どういうルールがあるのだろうか。たとえば、宝くじの会社を設立して、オリジナルの宝くじをつくり、人々にくじを発売して、抽せんを行い、当せん金の支払いをする──といった事業を行うことはできるのか。少し、法令をみていくこととしたい。

◇ 宝くじはどんな目的で発行されるのか

そもそも、宝くじは、どういう法律のもとで行われているのか。日本では、宝くじは、「当せん金付証票法」(1948年制定)に基づいて発行される。普通くじは法律上、「当せん金付証票」となる。

数字選択式宝くじやスクラッチも、この法律に基づき発行される。このうち、ロト7やロト6のようにキャリーオーバーの仕組みがあるものは、法律上、「加算型当せん金付証票」となる。

当せん金付証票法の目的は、「浮動購買力を吸収し、もつて地方財政資金の調達に資すること」(第1条/この法律の目的)とされている。つまり、地方財政のために行われているわけだ。また、宝くじの発売主体は、都道府県と20の政令指定都市の67団体とされている。

当せん金の総額は、その発売総額の5割相当額を超えてはならないとされている(加算型当せん金付証票の場合は、その額にキャリーオーバーによる加算金を加えた額を超えてはならない)。これは、地方財政資金の調達という目的を踏まえての規制といえる。

◇ 海外の高額宝くじを国内で買うのは違法?

ところで、この法律に基づかずに、宝くじを独自につくって事業を行うことはできるのだろうか。じつは、日本では刑法第187条により、富くじの発売、取次ぎ、授受をした者は、犯罪(富くじ罪)として罰せられる。

このため、宝くじを勝手に作って発売したり、海外の高額宝くじを国内で通信販売などにより購入したりすることは“違法”となる。

なお、刑法には、第35条(正当行為)に、「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」という規定がある。国内で発売される宝くじは、当せん金付証票法という根拠法があり、この規定に該当するため、違法性がしりぞけられているわけだ。

ちなみに、MEGA BIG、BIG、totoなどのスポーツ振興くじは、「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」(1998年制定)に基づいて発行される。これらは法律上、「スポーツ振興投票券」となる。いずれも根拠法があるので、違法ではない。

◇ 海外の宝くじに比べて当せん金の最高額が少ないのはなぜか

海外のメディアでは時々、「宝くじで7億ドル(約770億円)を超える高額当せんが出た」といったニュースが流れることがある。「そんなに高額の当せん金を手にした人は、この先、一体どうなってしまうのだろうか」などと、余計な心配をしてしまう人もいるだろう。

日本では現在、宝くじの当せん金の最高金額は、年末ジャンボ宝くじの1等・前後賞合わせて10億円、ロト7でキャリーオーバー発生時の1等10億円となっている。スポーツ振興くじのMEGA BIGは、キャリーオーバー発生時に1等最高12億円とされている。実際にこれまでに何回か、1等12億円が出ている。

こうした当せん金の最高金額は法律で規制されている。当せん金付証票法では、つぎの規定がある。

「証票金額(くじの金額)の50万倍に相当する額を超えてはならない。ただし、総務大臣が当せん金付証票に関する世論の動向等を勘案して指定する当せん金付証票については、(中略)証票金額の250万倍(加算型当せん金付証票で加算金のあるときにあつては、500万倍)に相当する額を超えない範囲の額とすることができる」(第5条/当せん金付証票の当せん金品の限度 第2項)

この規定に基づいて、年末ジャンボ宝くじの場合は、総務大臣の指定により250万倍までとされている。1枚300円の宝くじの場合、最高金額は7億5000万円までとなる。現在の10億円は、1等7億円と、前後賞1億5000万円×2本の合計だから、法律の範囲内となる。

もし1枚300円の宝くじの1等当せん金を8億円などに引き上げるには、法改正が必要となる。日本では「1等・前後賞合わせて30億円」といった超高額の当せん金の宝くじはできないわけだ。

ちなみに、スポーツ振興投票の実施等に関する法律にも、その施行令で、同様に最高金額が規定されている。1枚300円のMEGA BIGについては、キャリーオーバー発生時の1等当せん金の最高金額は、法令上500万倍の15億円が限度とされている。

◇ 当せん金は本当に税金が一切かからないのか

宝くじについて、当せん金は所得税非課税なので「当せんした人は全額を受け取ることができる」という話がよく知られている。確かに、当せん金付証票法では、「当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない」(第13条)と規定されている。個人住民税についても課税対象の所得とみなされないため、課税されない。

ただし、当せん金に税金が一切かからないというわけではないので、注意が必要だ。

たとえば、「宝くじに当たったら半分あげるよ」といった冗談を家族に言う人は多いと思われるが、もし本当に当せんして、当せん金を家族に分配すると、その家族には贈与税がかかる。

また、宝くじを仲間と共同で購入する「グループ買い」の場合、代表者が当せん金全額を一旦受け取り、あとで共同購入したメンバー各人に分配すると、これも贈与税の対象となる。

このようなケースでは、当せん金を購入者全員で受け取り、受け取った全員が「宝くじ当せん金支払証明書」をもらっておいたり、代表者が委任状を用意しておいたり、といった事前準備をしておく必要があるようだ。詳細については、事前に税金の専門家に相談しておいたほうがよいだろう。

また、法人が購入した宝くじが当せんした場合、当せん金は益金に算入されて、法人税がかかる。法人税は非課税とはされていないためだ。やはり注意が必要といえるだろう。

◇ 警察に届けた遺失物の宝くじが当せんしていたら?

最後に、当せん金付証票法の条文の中に、一風変わった規定があるので紹介しよう。

「当せん金付証票の当せん金品の債権は、これを行使することができる時から1年間行使しないときは、時効によつて消滅する」(第12条/特別措置)

つまり、宝くじの当せん金の時効は1年とされていて、支払期日を過ぎると、受け取ることができなくなるわけだ。

そこで、もし、当せんしている宝くじが遺失物として警察で管理されている場合、そのまま時効を迎えると、当せん金は受け取れなくなる。こうした事態を避けるために、「警察署長は、(中略)時効により消滅するおそれがある場合に限り、(中略)当せん金品の支払又は交付の請求をしなければならない」という規定がおかれている。

この条文は、第11条の2 第2項として規定されている。「第11条の2」という条番号からわかるとおり、これは、1948年のこの法律の制定時からあったのではなく、1954年の法改正時に追加された条文だ。その条文追加の経緯を調べてみると、当時、話題になった1つの事件が浮かんできた。

〈大阪・岸和田市で起きた事件〉
戦争で夫を失った女性が、安い月収で宝くじを売りながら生活していた。そんな中、たまたま拾った宝くじが当たっていることを知りながら、落とした人が喜ぶだろうと考えて、わざわざ警察まで届けた。

警察では、警察署長が債権保全のために民法の規定に従って忠実に管理義務を履行しようとした。しかし、当時の法律に基づくと、この宝くじの当せん金の支払いや交付は請求できなかった。

やがて、このくじは時効を迎えてしまい、遺失物として届け出た女性は、謝礼金などを1円も受け取れなかった。当時、この事件は話題となり、国会でも審議された。法改正の理由が次のように述べられている。

(前略)このことは、法律の甚だしき不備欠陥ともいうべきでありまして、正しい者の味方たるべき法律が却って善行者を抑圧し、結局正直者だけが馬鹿を見る結果となり、為に遵法精神は地を払い、社会道徳頽廃(たいはい)の因を作るものといわねばなりません。もともと当せん金附証票のごときは極めて紛失しやすい性質のものでありますから、岸和田市におけるこういつた事例は、今後も必ずしも絶無とは思われないのであります。(以下略)

【1954年5月6日の参議院大蔵委員会での発議者の説明】
もし、この法改正がなされないままだったとしたら、社会道徳頽廃の原因となったかどうかはさておき、このような経緯で、この条文は追加された。

遺失物として管理している宝くじについて、当せん金の時効消滅が近づいたら、法律に従って警察署長が支払い請求をするはずだ。つまり、当せん金の時効を心配する必要はない。

したがって、街中で宝くじの落とし物を拾ったら、遵法精神を遺憾なく発揮して、すぐに警察に届けるべきと思われるが、いかがだろうか。
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保険研究部   主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品、保険計理

(2021年04月01日「研究員の眼」)

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