コラム
2021年03月30日

計算の順番-ここではさらりと読み流してほしい

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩

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今年の大学の数学の入試問題をみていたら、なぜか数年前に話題になっていたある話題を思い出した。小学生レベルの簡単な問題である。(掛け算記号の省略があるから中学生レベルか。)
 
問題  6÷2(1+2)=?
 
これだけである。頓智の問題ではない。まともな計算問題である。

小中学校以来の計算ルールは

・原則として左から計算する。
・カッコ内は先に計算する。
・掛け算・割り算は足し算・引き算より先に計算する。
・掛け算の記号は省略できる。

ということだろうか。それによれば、

(?) 6÷2(1+2)= 6÷2×(1+2)= 6÷2×3= 9 (答)  (「9派」と呼んでおく)

とするのだろう。しかし特に計算を日常的にしている人であればあるほど何か違和感があって、そうはしないのではないか。私も引っ掛かる派である。
 
(?) 6÷2(1+2)= 6÷2(3)= 6÷6= 1 (答)    (「1派」と呼んでおく)

のほうが実感にあうと思うのだが。

類似の式として 「2x÷2x」と書かれているのを見たら、これは1とみるのが自然なのではなかろうか?(この際「x=0の場合は・・」などというツッコミはなしで。)

2x÷2x = 2×x÷2×x = x2 とみること(人)があるだろうか。(これは後述)
 
違和感の原因は

・割り算の記号を使用している。(もう少し進んだ数学では分数表示をするから、あまり見かけない?)

・数値どうしの掛け算であって、文字式ではないのに掛け算記号を省略している。また掛け算を省略する際もせめて「・」くらい書くものだろう。(書いてもまったく解決しないが)
・「2x」のような掛け算記号を省略したものは、一体のものか?計算を省略したものか?
というところだろうか。というわけで、最初の問題(の問題点)は、2(1+2)が一体なのか、計算なのかはっきりしないために、
最初の問題(の問題点)1
なのかあるいは
最初の問題(の問題点)2
なのかも、はっきりしないということである。
 
ところで、式を入力して計算できる関数電卓ならどちらの答えを出してくれるのか。

エクセルだと掛け算記号がどうしても必要だから、まぎれさせてくれないので、面白く(?)ない。グーグルの電卓機能だと「9」となる。ちなみに「2π÷2π」と入力してみると、「9.86…」と返ってくるので、(上記の「2x÷2x」のxにπを代入したものとして答えπ2 とする人(電卓?)が実際いるわけだ。どうも筆者には納得できかねるのだが・・・。)。

「2π÷(2π)」なら、もちろん「1」と出る。なお「6÷(1+2)」は「2」となり、「6÷1(1+2)」と入力すると「18」となる(ますます違和感あり!)。

なんにせよ「掛け算省略とみなし、左から計算」で一貫はしている。(しかし「1派」の筆者は、この電卓を敬して遠ざけることにしたい!)
 
これがもし、マークシート式などの試験問題として出題されたら答えはどちらだろうか(実際に高校入試では、文字式の計算として類似の問題はよくでているように見える)。答えはひとつしか認められないだろうし、計算過程、補足、説明など一切書くことはできない。こういう単発のクイズ的な出題が全く意味のないものであって、考えている状況や背景があっての数式ではないかとも思う。実際の現場?では、問題の意味をその都度確認すればよいし、必要なら ( )をつけるなりして、意図する計算を明確にすれば解決すると思う。

なお、これに関して文部科学省の中学校学習指導要領をざっとみてみたが、明確な記載は見当たらないようだ(筆者の見落としかもしれないし、何らかの解釈があるのかもしれない。)。
 
この話は、数年前に台湾で議論になったのがきっかけだそうで、もとは「9が正解」という教訓を意図したらしいが、意外に「9派」と「1派」はほぼ半々だったようだ。あるいは曖昧なら( )を使うなどしてもっときちんと書けとも。日本でも一部で話題となり、いろいろな立場(数学そのものの記法、決めている主体、教育の仕方など)があり、これだけで「炎上」に近い議論になるらしい(だからここでしないで下さい。)。筆者はこれまで計算が必要な業務に従事し、数学の本を比較的多く見てもいるが、この種の計算で曖昧さを感じたことは、ない。皆様も余計な議論に時間を割く余裕もないだろうから、そんな話もあるのか程度に、ここではさらりと読み流してほしい。
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保険研究部   主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1987年 日本生命保険相互会社入社
     ・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
     2012年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2021年03月30日「研究員の眼」)

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