2021年03月17日

日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは11ポイント上昇の1と予想、非製造業との格差が鮮明に

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

文字サイズ

■要旨
 
  1. 3月短観では、大企業製造業で前回に続いて景況感の大幅な回復が示されると予想する。中国向けをはじめとする輸出の増加や巣ごもり需要の拡大、円高の是正が追い風になる。一方、非製造業では「Go To トラベル」の停止や緊急事態宣言再発令に伴う対面サービス需要の落ち込み、原材料費の増加を受けて、景況感が弱含むと予想。景況感の動向に関して、製造業と非製造業の格差が鮮明になりそうだ。
     
  2. 先行きの景況感は総じて改善が示されると予想している。国内外でコロナワクチンの接種が進み、経済活動が回復に向かうことが期待されているほか、国内では緊急事態宣言全面解除後の需要回復に対する期待もある。ただし、国内外で感染力が強いとされるコロナ変異株の流行が拡大していることが景況感の改善を抑制するだろう。
     
  3. 2020年度の設備投資計画(全産業)は、前年度比4.8%減へ下方修正されると予想。投資余力の低下や緊急事態宣言の再発令が下押し圧力になる。新たに調査・公表される2021年度の設備投資計画は、2020年度に計画されていた投資の一部が先送りされることで、前年度比1.0%増と3月調査としては異例のプラスになると予想。ただし、あくまでも先送り分の計上に過ぎず、投資意欲が大幅に改善しているわけではない点には留意が必要になる。投資が実行されるかどうかもコロナの収束動向次第の面が強く、不透明感が否めない。
     
  4. 今回の短観では、とりわけ緊急事態宣言再発令の悪影響を強く受けている対面サービス業の景況感が注目される。また、今後の雇用環境や倒産動向を図るうえで、雇用人員判断DIと資金繰り判断DIの動向も注目点になる。企業の間で人手余剰感や資金繰り懸念が高まる兆しが出ていないかがポイントになる。さらに、新たに公表される2021年度の事業計画では、収益・設備投資について来年度にどれだけの回復が見込まれているかが明らかになる。
(図表1)日銀短観業況判断D.I.の予測表
■目次

3月短観予測:製造業は外需・巣ごもりが追い風に、非製造業は緊急事態宣言が逆風に
  ・大企業製造業の景況感は3期連続の改善へ
  ・今年度設備投資計画はさらに下方修正へ
  ・注目ポイント:雇用人員判断・資金繰り判断、新年度計画など
  ・日銀金融政策への影響
Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは11ポイント上昇の1と予想、非製造業との格差が鮮明に】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは11ポイント上昇の1と予想、非製造業との格差が鮮明にのレポート Topへ