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EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関する意見をECに提出(4)-助言内容(報告と開示)-
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例えば、以下の勧告や提案を行っている。
(1) RSRの頻度と期限
3年に1回の完全なRSRの提出の最小要件を維持するとともに、一般的な比例原則のフレームワークへのリンク、NSAが適切な場合に完全な報告書を要求する可能性を含めるとともに、SFCRの発行に合わせて、提出期限を18週間に延長する。
(2)内容と構造
報告書が初めて提出されるとき(新会社又はいくつかの重要な変更後)及び継続的に含まれるRSRの要素を明確にするとともに、RSRをさらに簡素化及び合理化する(静的情報と動的情報の区別、ORSA(リスクとソルベンシーの自己評価)との重複を削減、QRTによって完全に又は部分的にカバーされている情報の削除等)。
一方で、グループレベルでは、重要なグループ内アウトソーシングの取り決めに関する情報等の新しい要件も追加する。
また、委任規則の条項が「完全な説明(full description)」に言及している場合に何を期待するかについての期待を明確にするためのガイドラインを発行することを提案している。
EIOPAは、単一のSFCRを開示するグループが、いくつかの条件の下で、単一のRSRを監督者に報告できるようにすることを提案している。
7.24 RSRの頻度と期限に関して、EIOPAは、委任規則第312条で次の修正を提案している。
・一般的な比例原則のフレームワークへのリンクを含める。
・NSAが適切な場合に完全な報告書を要求する可能性を含める。
・SFCRの発行に合わせて、期限を18週間に延長する。
7.25 EIOPAは、3年に1回の完全なRSRの提出の最小要件を維持することにより、監督上のコンバージェンスを達成するためのL3ツールを導入し、この可能性を議論された一般的な比例フレームワークにリンクすることを提案している(第8章を参照)。
7.26 RSRの内容と構造に関して、EIOPAは委任規則の次の修正を提案している。
・報告書が初めて提出されるとき(新会社又はいくつかの重要な変更後)及び継続的に含まれるRSRの要素を明確にする。
・RSRをさらに簡素化及び合理化する。
o重要な変更に焦点を当てる–静的情報と動的情報の区別
o ORSAとの重複を減らし、ORSAでカバーされていない場合に適用できる情報を明確にする。
o QRTによって完全に又は部分的にカバーされている情報を削除する。
・SFCRで提案された修正(ビジネスとパフォーマンス、ガバナンスのシステム、ソルベンシー目的の評価、資本管理とリスクプロファイル)に沿って報告書の構造を5から4セクションに修正し、報告書に必要な情報を合理化する。
・第314条を削除–移行情報の要件
7.27グループレベルでは、上記の修正も適用されるが、新しい要件もある。重要なグループ内アウトソーシングの取り決めに関する情報。さらに、要求された情報の一部は、グループレベルでの自己資本の利用可能性の評価を可能にするのに適切なものでなければならないことを明確にする必要がある。
7.28 EIOPAは、委任規則の条項が「完全な説明(full description)」に言及している場合に何を期待するかについての期待を明確にするためのガイドラインを発行することを提案している。委員会がそのような明確化が委任規則で定義されるべきであると信じる場合、EIOPAは完全な説明に対処する条項が現在の説明を基礎として使用することによって別々に追加されることを勧告している。
7.29単一のRSRの可能性に関して、EIOPAは、以下の条件下で単一のRSRの提出を許可する新しい条項を提案している。
・公正に正当化された場合に拒否できる、関係するNSAによる合意が必要となる。承認され、その内容が単独の監督者にとって満足のいくものでない場合、承認を取り消すことができる。
・カレッジのレベルで合意された場合、各NCAに単一のRSRを提出するのは各単独保険会社の責任であり、各NCAは、単一のRSRがあったかのように、関連する子会社に関する単一のRSRの特定の部分を監督する権限を持ち続ける。コンプライアンス違反の問題はカレッジと共有されるため、子会社への要求は同時にグループの監督者によって親会社に提出される。
・グループ内の子会社の情報は個別に識別可能である必要があり、各子会社は単一のRSRで明確に識別される特定のセクションを持っている必要がある。これにより、対象となる子会社に関する情報が少なくなることはない。
・フォーマット:単一のRSR(RSRとして)は、人間が読める形式で送信する必要がある。つまり、テキストと数字の検索機能を備えたPDFファイルで送信する必要がある。
・言語:グループ監督者によって決定された1つ又は複数の言語での単一の定期的な監督報告書。監督者が複数の加盟国の監督当局で構成される場合、グループ監督者は、関係する他の監督当局及びグループ自体に相談した後、単一SFCRの場合と同じように、追加の言語にしかなり得ない監督カレッジで合意されているように、関係する他の監督当局によって最も一般的に理解される別の言語での報告を要求することができる。単一の定期的な監督報告の対象となる子会社のいずれかが、公用語がその報告が報告されている言語と異なる加盟国に本社を置いている場合、関係する監督当局は、その子会社に関連する情報をその加盟国の公用語に翻訳した報告書に含めることを要求する場合がある。
・締め切りはグループSFCRと同じである。RSRの情報は、SFCRの情報を補完する。つまり、SFCRの公開前にRSRを受け取ると、付加価値が低下する。単一のSFCRの場合、保険契約者に宛てられた部分のみが、単独の期限内に公開される必要があることに注意する必要がある。
7.30整合性の理由から、ソルベンシーII指令第35条は、現在委任規則第304条でのみ導入されているRSRの概念を導入するように修正される可能性がある。
7.31単一のRSRを実装するために、EIOPAは委任規則に次の修正を提案している。
・単一のRSRの構造と内容に関する新しい条項
・締め切りはグループSFCRと同じ
・単一のRSRの言語要件を含めるための第374条の修正
7.32ソルベンシーII指令及び委任規則の修正に関する詳細な提案は、分析背景文書の付録7.1に含まれている。
3―まとめ
これらの見直しによって、次回のレポートで報告する「比例性」の適用拡大により、小規模の保険会社等の負担は軽減される可能性が高いが、内部モデルを適用している大規模で複雑な保険会社については、内部モデルの信頼性の確保を図るために、その情報収集を進める目的で、より一層の報告を求められていくことになることが想定されている2。
次回のレポートでは、「比例性」に関する助言内容について報告する。
2 EIOPAは、2020年10月2日に、ソルベンシーIIにおける内部モデルの分散化に関する欧州全体での比較研究を開始すると公表し、この比較研究のためのデータ要求等を行っている。この内容については、保険年金フォーカス「EIOPAがソルベンシーIIにおける内部モデルの分散化に関する調査を開始」(2020.10.21)で報告した。
(2021年02月03日「保険・年金フォーカス」)
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