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- 新型コロナウイルスと各国経済-英国の変異種による感染拡大と経済活動状況
2021年01月27日
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図表9は、1回目のロックダウンを実施した4月と2回目のロックダウンを実施した11月の産業別の経済の落ち込みを前年同月比で見た図となっている。ここからは、1回目・2回目のロックダウンによる影響は、いずれも住居・飲食業や芸術・娯楽業などの対面サービス産業で大きいことが分かる。また、2回目のロックダウンについては、ほとんどの産業で、1回目のロックダウンより経済への影響が軽微であること、特に経済シェアの大きい製造業や卸・小売業において、2回目のロックダウンの落ちこみがかなり軽微にとどまっていることが特徴として挙げられる。
なお、3回目のロックダウン(21年1月)については、統計データが公表されるのはまだ先になるが、行動制限の強さに鑑みると2回目のロックダウンよりもやや落ち込みが大きくなる可能性も小さくないだろう。
以上の状況をまとめると、イングランドで実施された封じ込め政策は、特に「ロックダウン」とよばれる政策を実施した時期において、いずれも人々の混雑量や交通量などを低下させていることが分かる。イングランドではロックダウンを3回実施しているが、人々の行動を制限した強度では、1回目が最も厳しく、続いて3回目、2回目の順番になっていると言えそうである。
なお、3回目のロックダウン(21年1月)については、統計データが公表されるのはまだ先になるが、行動制限の強さに鑑みると2回目のロックダウンよりもやや落ち込みが大きくなる可能性も小さくないだろう。
以上の状況をまとめると、イングランドで実施された封じ込め政策は、特に「ロックダウン」とよばれる政策を実施した時期において、いずれも人々の混雑量や交通量などを低下させていることが分かる。イングランドではロックダウンを3回実施しているが、人々の行動を制限した強度では、1回目が最も厳しく、続いて3回目、2回目の順番になっていると言えそうである。
5――イングランドの感染状況
まず、イングランド(図表10)の感染者(青線)を見ると、9月以降増加してきた感染者数は、3段階の警戒レベルによる制限を導入(10月14日、ベージュ部分)しても増加が続き、2回目のロックダウン後にようやく感染者が減っていることが分かる。しかし、2回目のロックダウン解除後から年末にかけて再び感染者が急増している。感染率(赤・紫・茶線)を見ると、特に変異種(赤線)を中心に感染が拡大していたことが読み取れる。感染者数、感染率ともに、ようやく3回目のロックダウン前後にピークアウトしたものを見られるが、それでもまだ足もとの水準は2回目のロックダウンに突入した際の水準を上回っている。
この間のロンドンの状況を見ると(図表11)、2回目のロックダウンでは感染者数で明確にはピークアウトしていなかったことが分かる。2回目のロックダウン終了後には感染者数が激増し、2回目のロックダウン期間中の6倍程度にまで達している。なお、感染率で見ると、この期間の増加はほぼ変異種によるものである可能性が示唆されている。
以上の状況からは、封じ込め政策による感染者数の減少効果は、3回目のロックダウンを経てようやく顕在化してきたと言える(なお、後述するワクチン接種効果の可能性もある)。
一方で、2回目のロックダウンを緩和した直後に感染急増が見られたことに鑑みると、3回目のロックダウンを緩和すると再び感染が急増することも考えられ、政府は封じ込め政策を容易には緩和しにくい状況と言えるだろう。
10 市中の感染状況の把握を目的としており、病院や介護施設などに関連する人は対象となっていない。ONSの調査についての方法論はhttps://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/healthandsocialcare/conditionsanddiseases/methodologies/covid19infectionsurveypilotmethodsandfurtherinformationを参照。保険省が実施している検査・追跡(NHS Test and Trace)との違いはhttps://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/healthandsocialcare/conditionsanddiseases/articles/comparingmethodsusedinthecoronaviruscovid19infectionsurveyandnhstestandtraceengland/october2020を参照。
11 Ct値にかかわらず、N遺伝子、ORF1ab遺伝子で陽性だが、S遺伝子で陽性でないものを変異種として推計。
この間のロンドンの状況を見ると(図表11)、2回目のロックダウンでは感染者数で明確にはピークアウトしていなかったことが分かる。2回目のロックダウン終了後には感染者数が激増し、2回目のロックダウン期間中の6倍程度にまで達している。なお、感染率で見ると、この期間の増加はほぼ変異種によるものである可能性が示唆されている。
以上の状況からは、封じ込め政策による感染者数の減少効果は、3回目のロックダウンを経てようやく顕在化してきたと言える(なお、後述するワクチン接種効果の可能性もある)。
一方で、2回目のロックダウンを緩和した直後に感染急増が見られたことに鑑みると、3回目のロックダウンを緩和すると再び感染が急増することも考えられ、政府は封じ込め政策を容易には緩和しにくい状況と言えるだろう。
10 市中の感染状況の把握を目的としており、病院や介護施設などに関連する人は対象となっていない。ONSの調査についての方法論はhttps://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/healthandsocialcare/conditionsanddiseases/methodologies/covid19infectionsurveypilotmethodsandfurtherinformationを参照。保険省が実施している検査・追跡(NHS Test and Trace)との違いはhttps://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/healthandsocialcare/conditionsanddiseases/articles/comparingmethodsusedinthecoronaviruscovid19infectionsurveyandnhstestandtraceengland/october2020を参照。
11 Ct値にかかわらず、N遺伝子、ORF1ab遺伝子で陽性だが、S遺伝子で陽性でないものを変異種として推計。
6――ワクチン接種の状況
変異種による感染拡大が見られる英国では、昨冬から、やむを得ず経済活動の制限を実施しながら、感染拡大防止に重点を置いた政策を実施しているが、ワクチン普及も感染拡大防止に大きく寄与する可能性もある。先進主要国の中では、ワクチン接種でリードする国でもあるだけに、今後の動向が注目されると言えるだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年01月27日「基礎研レター」)

03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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