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成長戦略としての「カーボン・ニュートラル」ー各国で進むグリーン戦略、日本は巻き返せるか
基礎研REPORT(冊子版)1月号[vol.286]

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次
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1―菅首相の2050年「カーボン・ニュートラル」宣言
菅首相は10月26日の所信表明演説で、はじめて2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明した。世界では、日本の次に宣言した韓国を含め、すでに122ヵ国が「2050年実質ゼロ」の目標を掲げている。これまでの「50年にできるだけ近い時期に」との表現を改め、国際社会で消極的だと受け止められたイメージの払しょくを図った。
ただ、実現へのハードルは相当高い。例えば、既にある省エネ計画においても、2013年度実績から2030年度までに年間最終エネルギー消費を、対策前比で原油換算▲5,030万kl程度削減することを目標に掲げている。
これはエネルギー消費効率を同期間に35%程度改善することに相当し、石油危機後の20年間に我が国が実現した省エネと同程度の改善を目指す、かなり野心的な計画だった。
日本が今回示した2050年「実質ゼロ」では、エネルギー消費効率の更なる向上が求められるだろう。世界に対して宣言した数値目標は、これまでの野心的な計画とは重みが異なる。相当な覚悟と計画が必要になる。
日本経済は、4-5月を底に持ち直して来てはいるが、依然、力強さを欠いた状態にある。気になるのは、日本の競争力や将来の供給力にも関わる設備投資の弱さだ。7-9月期の設備投資は、前期比▲3.4%と2四半期連続で減少した。
挽回の策として期待が高まるのが、コロナ禍で停滞した社会を、環境投資で立て直そうという「グリーン・リカバリー」だ。デジタルと合わせて、日本復活の起爆剤にしようとの構想が、実質ゼロ宣言の裏にある。
米国でも、次期大統領のバイデン氏が今後4年間で2兆ドルを、クリーン・エネルギーなどのインフラに投資する計画を明らかにしている。
イノベーションは、民間が起こすものであるが、新たな社会に移行するとの政府の強い意志が見えないと、民間はなかなか動けない。ましてや、カーボン・ニュートラルを実現するためには、単なるイノベーションではなく、革新的イノベーションを起こして、社会構造を抜本的に転換する必要がある。
政府は、水素・蓄電池・洋上風力などの重点分野について、年末までに目標や実行計画を策定し、支援策などと合わせて、グリーン成長への道筋を明らかにする方針だ。制度の詳細や支援策、規制緩和などの具体策が、どのように示されるのか。政府の強いコミットが、どこまで示されるのか。その内容に注目したい。
(2021年01月12日「基礎研マンスリー」)

03-3512-1837
- ・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員
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