2020年11月20日

「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(2)―2018年婚姻届全件分析(再婚男性編)―

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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はじめに

全国での講演会において「衝撃だった」という反響が非常に多かった日本の結婚適齢期データについてのレポート、今回はシリーズ第2弾となる。第1弾では、一般的な思い込みと統計的な事実との間の乖離が最も大きいと感じることの多い「初婚男性の結婚適齢期」について、婚姻届全件のデータ解析の結果を紹介した。
 
第2弾は「再婚男性」の結婚年齢に焦点をあて、結婚(再婚)適齢期を考えてみたい。

前回に同じく、データソースには、厚生労働省「人口動態調査」に掲載されている、2018年における婚姻届の集計結果を用いているため、ニッポンの結婚、についての全数分析結果である。
 

1――男性の再婚割合と妻の婚歴は

1――男性の再婚割合と妻の婚歴は

シリーズ第1弾にて、全婚姻に占める再婚者を含む婚姻(どちらかが再婚、双方が再婚を含む)の割合は、4組に1組であることを示した。これを今度は、男性のみの婚姻という視点からみてみると、全婚姻に占める初婚男性の婚姻は、37万1093件81%、再婚男性の婚姻は8万5055件19%となり、男性に関してだけでいうならば、再婚の割合は5組に1組程度、という状況である(図表1)。
 
総数において再婚者が占める4組に1組という割合から、「再婚もまあまあ珍しくはなくなった」と感じる度合いよりも、男性に関しては5組に1組程度となるため、再婚者全体と比べるとそこまで楽ではない(もう少し厳しい)ということが指摘できる。
【図表1】2018年 男性の初婚、再婚の件数割合(%)
次に、再婚男性の妻の婚歴について、初婚・再婚の割合で確認してみたい。

再婚男性の婚姻8万5055件のうち、妻が初婚は4万3051件の51%、妻が再婚は4万2004件の49%となっている(図表2)。
【図表2】2018年 再婚男性8万5055人の妻の初婚・再婚の割合
再婚男性の妻の婚歴は、ありとなしでほぼ半々、という状況である。

初婚男性の再婚女性との結婚割合が8.4%である状況と比べると、再婚男性の結婚に関しては、相手の女性の婚歴に強くはこだわらない姿勢が見てとれる。
 

2――男性の「再婚適齢期」も明確

2――男性の「再婚適齢期」も明確

これまで、再婚にあえて注目した適齢期分析はなされてこなかったといってよい。再婚者にも焦点をあてた今回の分析からは、男性の結婚の1/5を占める再婚男性にも、やはり初婚男性と同様、明確な適齢期が存在することが見えてくる。
 
まず、再婚男性の結婚の半数を占める初婚女性との結婚から見ていきたい(図表3)。

最頻値は35歳で、初婚男性のピークよりも6歳上昇する。該当する婚姻の婚姻届の過半数が提出される年齢を適齢期とするならば、再婚男性の初婚女性との結婚適齢期は38歳、ということになる。

また、婚姻届の7割が提出される年齢は43歳、8割が提出される年齢は46歳であるため、婚歴のある男性が初婚女性との成婚を望んでいる場合、40代後半以降は厳しい状況となる、といえる。また52歳で9割に達するため、50代での初婚女性との再婚に対して安易な期待をもつことは極めて厳しい状況である。
 
件数分布グラフからは、29歳が適齢期(シリーズ(1)参照)の初婚男性よりも9歳(=38歳-29歳)の適齢期のモラトリアムがあることが示されているものの、30代後半をピークに左右に急角度の綺麗な三角が形成されていることから、ピーク年齢を過ぎてものんびりと再婚に対して構えることは、相手を初婚女性に限定するのであれば、成婚を難しくすることに注意が必要である。
【図表3-1】再婚男性の結婚年齢/妻も初婚のケース(件)
【図表3-2】再婚男性の結婚年齢/妻も初婚のケース(件)

3――再婚女性との結婚は年齢上昇の障壁を引き下げる効果大

3――再婚女性との結婚は年齢上昇の障壁を引き下げる効果大

再婚男性が初婚女性との結婚を望む場合は、初婚男性よりも9年の適齢期モラトリアムがあることを示した。しかし、適齢期である38歳までに、結婚・離婚というプロセスを経てからの再婚を目指す、という状況を考えると、あまり悠長に構えられる話ではないといえる。実際、筆者が出会った非常に幸せな再婚を果たしたある地方の男性も、ピーク前の36歳で30歳の初婚の妻を得る、というスピード感のある結婚であったことを思い出す。
 
しかし、再婚男性が再婚女性との成婚を目指すケースにおいては、適齢期のモラトリアムがかなり延長されることが分析結果で示されているので、紹介しておきたい。
 
再婚男性の半数を占める再婚女性との結婚について、その発生年齢を見てみると、最頻値は44歳となる(図表4-1)。再婚同士の婚姻件数が5割を超える男性の年齢は45歳であることから、再婚男性が初婚女性との結婚を目指す場合よりも、再婚女性との結婚適齢期は7歳(=45歳-38歳)延長する。

また、再婚者同士の婚姻が7割を超える男性の年齢は52歳、8割を超える年齢は57歳にまで上昇するため、少なくとも50歳過ぎあたりまでは、成婚への道は一定程度開かれている、といってよい状況といえる。婚姻届が9割に達する年齢が還暦を過ぎた65歳であることからも、初婚男性や、初婚女性との成婚を目指す再婚男性に比べれば、長期戦が可能、という結果も示された。
【図表4-1-1】再婚男性の結婚年齢/妻も再婚のケース(件)
【図表4-1-2】再婚男性の結婚年齢/妻も再婚のケース(件)
以上から、再婚を目指す男性が、初婚女性との結婚を考える場合と、再婚女性との結婚を考える場合では、かなりの「適齢期の差」が出ることが示されている。

ここで念のため、相手が初婚女性と再婚女性、双方の婚姻の発生時期が比較可能なグラフを最後に示しておきたい(図表4-2)。
 
初婚女性との結婚は、グラフ上で底辺の短い角度のついた高い山をみせており、再婚を望む男性にとっては適齢期となる38歳を相当意識した活動が必要であり、40代後半からは厳しくなる、ということが示される。一方、再婚女性との結婚は底辺の広い緩やかな山が描かれており、50歳を過ぎてからも年々厳しくはなるものの、成婚活動が報われる可能性がある、という適齢期モラトリアムの明確な差をはっきりと読みみることが可能である。
【図表4-2】再婚男性の結婚年齢/妻が再婚+初婚合算のケース(件)
 
1 72歳以降は1歳あたり200件を、76歳以降は1歳あたり150件を切って婚姻数が徐々に減少していくが、政府統計では80歳以上がまとめて集計されており、80歳以上は累計438件となっている。棒グラフ上は高さがやや目立つものの、90歳までと仮定して、1歳あたり平均40件程度と考えると件数逓減の域を外れているとまではいえない。

4――成婚を希望する男性が留意すべきこと

4――成婚を希望する男性が留意すべきこと

36歳で30歳の初婚女性との結婚を果たした地方の再婚男性の例を先に挙げたが、彼は結婚相談所のマッチングデータ利用において、相手の女性の条件をたった1つだけに絞っていた。

彼の言葉で非常に印象的だったのは、「婚歴のある自分でも良い、と言ってくれる女性に絞りました」であった。

結果的に彼は6歳年下の初婚女性と結婚したのだが、初婚女性にこだわった相手探しをしたわけではなかったのである。

自分の過去をそのままに受け止めてくれる相手、であることが、彼が相手の女性に求めた唯一の条件であった。
 
初婚男性、再婚男性の結婚適齢期の解析結果を2回にわたって説明してきたが、初婚男性であれば、自分と離れた年齢の相手を求めない、再婚男性であれば、相手の婚歴にこだわらない、といった行動が成婚への鍵となることが示唆されている。
 
結婚から、望む幸せを与えられるイメージをもつよりも、ともに話し合いながら、2人だからこそもつことができる新たな視点で幸せを築きあげていくイメージをもつ、ということが、幸せな出会いへの近道になる、ということかもしれない。

【参考文献一覧】
 
厚生労働省.「人口動態統計」

天野 馨南子.「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(1)―2018年婚姻届全件分析(初婚男性編)―.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2020年11月16日

天野 馨南子.「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差婚の希望の叶い方.ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2017年2月20日

天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(上)-未婚少子化データ考- 平成ニッポンの夫婦の姿.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月14日

天野 馨南子.初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ.ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2018年5月28日
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

(2020年11月20日「基礎研レポート」)

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