2020年09月16日

英国雇用関連統計(8月)-賃金・労働時間に改善の兆し

経済研究部 准主任研究員   高山 武士

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1.結果の概要:失業率は微増だが、賃金・労働時間に改善の兆し

9月15日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【8月】
失業保険申請件数1前月(266.42万件)から7.37万件増の273.79万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は7.6%となり、前月(同7.4%)から上昇した。

【7月(5-7月の3か月平均)】
失業率は4.1%で前月(3.9%)から上昇、市場予想2(4.1%)と同じだった(図表1)。
就業者は3297.9万人で3か月前の3299.1万人から1.2万人の減少となった。
増減数は前月(▲22.0万人)から増え(減少幅の縮小)、市場予想(▲11.8万人)も上回った。
週平均賃金は、前年同期比▲1.0%で前月(▲1.2%)からやや改善、市場予想(▲1.3%)も上回った(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:今後は、失業率の悪化圧力も強まる

8月の失業保険申請件数は7月に引き続き増加、申請者数の割合は7.6%と悪化した。

失業保険申請件数と同じく8月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、6-8月の平均求人数は43.4万件となった。4-6月(平均34.1万件)を底に改善を続け世界金融危機時の底(09年4-6月期43.2万件)を上回った(図表3)。

給与所得者データ3を見ると、8月の給与所得者は2830.8万人となり、前月差▲3.6万人と減少が続いている4(図表4)。月あたり給与額(中間値)は前年同月比+2.7%と7月(同+2.4%)に続き加速している。流出(退職など)と流入(就職など)の傾向を見ると7月までは流出入ともに低水準であったが8月には改善していることが指摘されており、給与所得者は減少が続いているものの、雇用市場は以前より活発化していると言える。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)給与取得者データの推移
続いて7月までのデータを確認する。

5-7月の失業率は4.1%となり4%を超えたもののコロナ禍での急速な悪化は避けられている(前掲図表1)。ONSでは潜在的な失業者が5-7月平均で203万人に達すると推計5、4-6月(213万人)から減少した部分が、失業者の増加(130→142万人)と整合的であることに言及しており、こうした潜在的な失業者の一部が失業として顕在化した可能性がある。

賃金関係では、5-7月の平均賃金が前年同期比▲1.0%(実質は▲1.8%)となり、マイナス圏にあるものの前期からマイナス幅を縮小させている(前掲図表2)。労働時間も26.3時間(前年同期差▲5.7時間)、フルタイム労働者で30.8時間(同▲6.4時間)となり、こちらも水準は低いが改善の兆しが見えてきた。
(図表5)英国の雇用統計(週次データ) 雇用関係の多くのデータが改善傾向を示しており、事業環境としてはコロナ禍の影響による最悪期を脱した可能性が高いと言えるだろう。ただし、雇用維持政策の利用者は8月時点でも940万人とされ、週次データ(実験統計)を見ても、休業者が依然として多い(図表5)。そして、政府は雇用維持政策の段階的な負担引き下げを実施・予定しているため6、今後は、政策効果の低減による失業率の悪化圧力が強まっていくものと見られる。
 
3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した実験統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。
4 雇用維持制度(Job Retention Scheme、10月末まで)により一時休業している従業員は給与所得者としてカウントされるため、雇用維持制度の恩恵を受けられなかった人が一定いると見られる。給与所得者の減少の方が、労働力調査(LFS)ベースの就業者減より大きいが、ONSは(下記注記における)無給の人が労働力調査において「就業者」と報告している可能性を指摘している。
5 職は欲しいが職探しをしていない人(149→142万人)、自営業者でコロナ禍のため仕事をしておらず、SEISSの対象にもならない人(23→26万人)、雇用者でコロナ禍のため仕事をしておらず無給の人(42→35万人)の合計。これらを失業者とみなすと潜在的な失業率は9.6%となる。コロナ禍前から職探しをしていない人(1-3月110万人)を除いた場合は潜在的な失業率は6.7%である。
6 8月1日に社会保障を政府負担から雇用主負担に変更、9月1日に賃金の政府負担率・上限額を引き下げ(月2500ポンドを上限に給与の80%まで支給→月2187.5ポンドを上限に70%支給、残額は雇用主負担)。10月1日以降はさらに政府負担率の引き下げを予定。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   准主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、国際経済

(2020年09月16日「経済・金融フラッシュ」)

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