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- 貸出・マネタリー統計(20年8月)~通貨量の伸びがまたまた過去最高を更新、地銀の貸出が加速
2020年09月09日
1.貸出動向:地銀の貸出がさらに加速
業態別では、都銀の伸び率が前年比8.03%(前月は7.92%)と、高水準ながらも一服感がみられる一方で、地銀(第2地銀を含む)の伸び率は同5.47%(前月は5.16%)と引き続き順調に拡大している(図表3)。
大企業では、前倒しの資金調達によって当面の資金繰りにメドを着けた先も増えていることが、大企業向け割合の高い都銀の伸び率一服の背景にあると推察される。一方、中小企業において、政府が経済対策の一環で実施している無利子・無担保融資の利用が拡大していることが中小企業向け割合の高い地銀の伸び率拡大に繋がっているとみられる。実際、同融資のバックファイナンス等に充てられる日銀の新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの残高は8月末にかけても大幅に増加している(図表5)。
景気の最悪期は一旦脱しているものの、新型コロナの感染がなかなか収まらず、景気のV字回復は見込めない。従って、企業の資金繰りには厳しさが残り、今後も無利子・無担保融資をはじめとする高い資金需要が予想される。銀行貸出も高い伸びが維持されるだろう。
大企業では、前倒しの資金調達によって当面の資金繰りにメドを着けた先も増えていることが、大企業向け割合の高い都銀の伸び率一服の背景にあると推察される。一方、中小企業において、政府が経済対策の一環で実施している無利子・無担保融資の利用が拡大していることが中小企業向け割合の高い地銀の伸び率拡大に繋がっているとみられる。実際、同融資のバックファイナンス等に充てられる日銀の新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの残高は8月末にかけても大幅に増加している(図表5)。
景気の最悪期は一旦脱しているものの、新型コロナの感染がなかなか収まらず、景気のV字回復は見込めない。従って、企業の資金繰りには厳しさが残り、今後も無利子・無担保融資をはじめとする高い資金需要が予想される。銀行貸出も高い伸びが維持されるだろう。
1 1992年7月
(貸出金利)
なお、直近7月の新規貸出平均金利は、短期貸出(一年未満)が0.459%(前月は0.418%)、長期貸出(1年以上)が0.776%(前月は0.742%)と、それぞれ前月からやや持ち直した。振れを均すために3カ月移動平均で見た場合(図表6)、短期が過去最低圏で低迷する一方、長期はやや持ち直しがみられる。
5月以降、経済対策としての無利子・無担保融資制度の利用が銀行貸出金利の押し下げ要因になっているとみられるが(ただし、利子相当分は都道府県等から金融機関に補給される仕組み)、国債増発を受けて、長期貸出に影響する長期国債の利回りがやや上昇していることが長短貸出金利の差の一因になっていると推察される。
2.マネタリーベース: 通貨供給量の伸びが2桁に到達
9月2日に発表された8月のマネタリーベースによると、日銀による通貨供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベースの前年比伸び率(平残)は11.5%と、前月(同9.8%)を大きく上回り、2017年11月以来の高水準となった(図表7)。
日銀当座預金の減少要因となる政府による国庫短期証券の大規模な発行が続いたが、日銀が大規模な買入れを維持したほか(図表8)、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペが増加し、日銀当座預金の増加要因となった。なお、長期国債の買入れ額は3月以降増加基調に転じているが、伸びは限定的に留まっている(図表9)。
また、日銀券発行高の伸び率が前年比5.8%(前月も同じ)と高止まりしたほか、貨幣流通高の伸び率が同1.6%(前月は1.3%)と持ち直したことも、マネタリーベースの高い伸びに寄与している。キャッシュレス化の流れは逆風だが、ATMの利用減少で家計に滞留する現金が増加したとみられるほか、経済活動再開に伴って現金需要がやや回復したことが影響したと推測される2。
なお、8月末時点のマネタリーベース残高は583兆円と前月末比で6.6兆円増加した。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、8月は前月比9.7兆円増と高めの伸びを維持している(図表10)。
日銀は引き続き前向きな緩和姿勢を維持し、各種資産の買入れや資金供給を積極的に続けると見込まれることから、マネタリーベースは当面高い伸びが続く可能性が高い。
日銀当座預金の減少要因となる政府による国庫短期証券の大規模な発行が続いたが、日銀が大規模な買入れを維持したほか(図表8)、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペが増加し、日銀当座預金の増加要因となった。なお、長期国債の買入れ額は3月以降増加基調に転じているが、伸びは限定的に留まっている(図表9)。
また、日銀券発行高の伸び率が前年比5.8%(前月も同じ)と高止まりしたほか、貨幣流通高の伸び率が同1.6%(前月は1.3%)と持ち直したことも、マネタリーベースの高い伸びに寄与している。キャッシュレス化の流れは逆風だが、ATMの利用減少で家計に滞留する現金が増加したとみられるほか、経済活動再開に伴って現金需要がやや回復したことが影響したと推測される2。
なお、8月末時点のマネタリーベース残高は583兆円と前月末比で6.6兆円増加した。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても、8月は前月比9.7兆円増と高めの伸びを維持している(図表10)。
日銀は引き続き前向きな緩和姿勢を維持し、各種資産の買入れや資金供給を積極的に続けると見込まれることから、マネタリーベースは当面高い伸びが続く可能性が高い。
2 日銀券発行高と貨幣流通高の動向については、「二極化が進む現金流通高~一万円札は急増、五円玉は減少止まらず」(基礎研レター、2020年08月13日)をご参照ください。
3.マネーストック: 通貨量の伸びが4ヵ月連続で過去最高を更新
9月9日に発表された8月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比8.62%(前月は7.88%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同7.12%(前月は6.52%)とともに大きく上昇した(図表11)。伸び率はともに4カ月連続で2004年4月の現行統計開始以降の最高を更新している。既述のとおり、企業向け貸出の伸びが高止まりしているほか、家計・法人向け給付金支給の進展もあり、預金の伸びが押し上げられたことが主因となった。
M3の内訳では、普通預金等の預金通貨(前月14.3%→当月15.3%)の伸び率が引き続き大きく上昇し、過去最高を更新したほか、現金通貨(前月5.5%→当月5.5%)の伸び率も高水準を維持している(図表12)。また、CD(譲渡性預金・前月▲6.1%→当月▲5.2%)、定期預金などの準通貨(前月▲2.6%→当月▲2.4%)の伸びも依然マイナス圏ながら、マイナス幅を縮小している(図表13)。
M3の内訳では、普通預金等の預金通貨(前月14.3%→当月15.3%)の伸び率が引き続き大きく上昇し、過去最高を更新したほか、現金通貨(前月5.5%→当月5.5%)の伸び率も高水準を維持している(図表12)。また、CD(譲渡性預金・前月▲6.1%→当月▲5.2%)、定期預金などの準通貨(前月▲2.6%→当月▲2.4%)の伸びも依然マイナス圏ながら、マイナス幅を縮小している(図表13)。
なお、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率も前年比5.31%(前月は4.78%)と上昇し、過去最高を更新したが、M2やM3と比べると伸び率の水準は低いままだ(図表11)。
内訳を見ると、既述の通り、M3の伸び率が上昇したほか、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース前月2.4%→当月4.3%)や国債(前月1.5%→当月2.1%)の伸び率も上昇したが、M2やM3の伸びには及ばず、さらに規模の大きい金銭の信託(前月▲1.6%→当月▲1.7%)、外債(前月0.7%→当月0.3%)の伸び率も低下したためだ(図表13)。
今後も企業の根強い資金需要に基づく貸出の高い伸びが予想されるほか、経済対策の一環としての各種給付金等の支給が続くため、マネーストックの伸びも当面高止まりする可能性が高い。
内訳を見ると、既述の通り、M3の伸び率が上昇したほか、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース前月2.4%→当月4.3%)や国債(前月1.5%→当月2.1%)の伸び率も上昇したが、M2やM3の伸びには及ばず、さらに規模の大きい金銭の信託(前月▲1.6%→当月▲1.7%)、外債(前月0.7%→当月0.3%)の伸び率も低下したためだ(図表13)。
今後も企業の根強い資金需要に基づく貸出の高い伸びが予想されるほか、経済対策の一環としての各種給付金等の支給が続くため、マネーストックの伸びも当面高止まりする可能性が高い。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年09月09日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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