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- 英国雇用関連統計(7月)-潜在失業者は213万人に
1.結果の概要:失業保険申請件数は再び悪化
【7月】
・失業保険申請件数1は前月(259.43万件)から9.44万件増の268.87万件となった(図表1)。
・申請件数の雇用者数に対する割合は7.5%となり、前月(同7.2%)から上昇した。
【6月(4-6月の3か月平均)】
・失業率は3.9%で前月(3.9%)から変わらず、市場予想2(4.2%)を下回った。
・就業者は3292.4万人で3か月前の3314.4万人から22.0万人の減少となった。
増減数は前月(▲12.5万人)から減少したものの、市場予想(▲30.0万人)は上回った。
・週平均賃金は、前年同期比▲1.2%で前月(▲0.3%)から減速し、市場予想(▲1.1%)も下回った(図表2)。
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2.結果の詳細:求人件数は改善したものの、他の指標は総じて悪い
失業保険申請件数と同じく7月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、5-7月の平均求人数は37.0万件となった。4-6月期の平均は33.7万件であり、求人数については最悪期を脱したと見られる。
ONSは6月後半から一時休業者が戻ってきていること8、VAT減税による雇用刺激などの好材料についても言及しているが、雇用環境の先行きは不透明な面が大きいと言えるだろう。
3 ONSは失業保険申請件数が失業者と一致しない点について、3-5月の失業保険申請件数のうち、27%(40万件)は自営業者所得支援策(SEISS)受給者や一時休業者などの労働者であるとの外部報告を引用して指摘している。
4 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した実験統計。直近データは利用可能な情報の85%ほどを集計して算出。
5 雇用維持制度(Job Retention Scheme、10月末まで)により一時休業している従業員は給与所得者としてカウントされるため、雇用維持制度の恩恵を受けられなかった人が一定いると見られる。労働力調査(LFS)ベースの就業者は前述の通り、22.0万人の減少だが、雇用者(employees)は5.2万人増、自営業者(self-employed)が23.7万人減となっている。雇用者数は給与所得者データと整合的でないが、この差異についてONSは賃金が払われていない休業者の存在に一因があるとしている。
6 新規流入者は既存雇用者よりも40%ほど給与水準が低いため、人材の流出入が滞ると給与所得は高くなりやすいと指摘している。
7 職は欲しいが職探しをしていない人(149万人)、自営業者でコロナ禍のため仕事をしておらず、SEISSの対象にもならない人(23万人)、雇用者でコロナ禍のため仕事をしておらず無給の人(42万人)の合計。1-3月期は110万人で103万人の増加。
8 6月29日から7月12日にかけて7%の労働者が一時休業から復帰していると指摘している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年08月12日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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