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- ユーロ圏消費者物価(7月)-値引きシーズン後倒しで+0.4%まで上昇
2020年08月03日
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1.結果の概要:前年同月比で+0.4%に加速
7月31日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
【総合指数】
・前年同月比は+0.4%、市場予想1(+0.2%)より上振れ、前月(+0.3%)から減速(図表1)
・前月比は▲0.3%、予想(▲0.5%)より上振れ、前月(同+0.3%)から減速
【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2】
・前年同月比は+1.2%、予想(+0.8%)より上振れ、前月(同+0.8%)から加速(図表2)
・前月比は▲0.2%、前月(+0.3%)から減速
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料もの除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。
2.結果の詳細:値引きシーズンの後倒しとVAT引き下げという特殊要因あり
まず、7月のHICPの品目別成長率を「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」「エネルギー」「食料品(アルコール含む)」の3分類に分けて見る。
コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」は前年同月比で加速しており(6月+0.8%→7月+1.2%)、内訳としては「エネルギーを除く財」が急上昇3(6月+0.2%→7月+1.2%)したことが主因だった(図表2)。他方、「サービス」が若干減速している(6月+1.2→7月+0.9%)。前月比ベースは、コア部分が前月比▲0.2%と若干下落しており、内訳は「エネルギーを除く財」が▲1.9%と下落、「サービス」が+0.7%の加速だった。コア部分は前月比で下落したが、例年7月は下落する季節性(後述)があり、例年と比較すると下落率は小さい(例えば19年7月は前月比▲0.6%)。
コア部分の「エネルギーと飲食料を除く総合」は前年同月比で加速しており(6月+0.8%→7月+1.2%)、内訳としては「エネルギーを除く財」が急上昇3(6月+0.2%→7月+1.2%)したことが主因だった(図表2)。他方、「サービス」が若干減速している(6月+1.2→7月+0.9%)。前月比ベースは、コア部分が前月比▲0.2%と若干下落しており、内訳は「エネルギーを除く財」が▲1.9%と下落、「サービス」が+0.7%の加速だった。コア部分は前月比で下落したが、例年7月は下落する季節性(後述)があり、例年と比較すると下落率は小さい(例えば19年7月は前月比▲0.6%)。
7月の国別のHICP上昇率を見ると(図表4・5)、前年同月比では未公表のオーストリアを除く18か国中12か国で加速、6か国で減速した。加速している国が多く、ベルギー・フランス・イタリアの上昇が目立つが、これは新型コロナの影響で衣類などの夏の値引きシーズンが後倒しされたことによる季節性のずれが要因と思われ、そのため、来月8月の物価はむしろ下落圧力が生じると思われる。一方、ドイツではVAT引き下げによってインフレ率が減速しており、この効果は今年12月まで継続する見込みである4。
ユーロ圏の7月の物価は特殊要因で「エネルギーを除く財」が若干上昇したものの、来月にはむしろドイツのVAT引き下げの効果が顕在化するため、下落圧力が大きくなると見られる。また、こうした一時的な要因を除いても、需要低迷からインフレ圧力は弱い状態が続くと言えるだろう。
3 飲食料も除く。
4 税率で19%→16%(軽減税率は7%→5%)への引き下げ。
ユーロ圏の7月の物価は特殊要因で「エネルギーを除く財」が若干上昇したものの、来月にはむしろドイツのVAT引き下げの効果が顕在化するため、下落圧力が大きくなると見られる。また、こうした一時的な要因を除いても、需要低迷からインフレ圧力は弱い状態が続くと言えるだろう。
3 飲食料も除く。
4 税率で19%→16%(軽減税率は7%→5%)への引き下げ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年08月03日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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