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厳しい状況が続く観光業-インバウンド需要が蒸発する中、頼れるのは国内旅行客だが-
藤原 光汰
1――はじめに
また、日本国内居住者による国内旅行(以下、国内旅行)も、外出自粛要請、緊急事態宣言の発令の影響で大きく落ち込んでいる。宿泊施設の客室稼働率は4、5月に10%台まで水準を切り下げた後、6月に22.4%まで回復したものの、深刻な被害を被っている状況に変わりはない。日本の観光業は、インバウンド需要の蒸発に加え、日本居住者の旅行需要の減少により、危機に直面している。
2――日本国内における旅行消費額
新型コロナウィルスの感染により大きく落ち込んだ観光業を回復させるには、これまでのインバウンドに重きを置いた戦略から、しばらくは国内旅行の需要を喚起する方針にシフトする必要がある。
国内旅行消費額に趨勢的な上昇傾向はみられないが、ウエイトを確認すると、旅行消費全体の78.5%を占めている。インバウンド消費額は増加傾向にあったものの、2割に満たない規模に留まっている(いずれも2019年のデータ)。
このように規模でみると国内旅行のマーケットは非常に大きいため、国内旅行の需要を喚起することは、観光業の回復に対して有効な手段であるといえる。また、これまでのアウトバウンド(日本居住者による海外旅行)需要が国内旅行に置き換わることも期待される。
3――旅行需要の地域格差
都道府県別の国内旅行消費額およびその名目GDPに占める比率を調べると、図表4のようになった。三大都市圏1は、地方部と比較すると、消費額が大きいことがわかる。一方で、三大都市圏における国内旅行消費額の名目GDPに占める比率は、京都府を除き、全国平均を下回る水準となっている。国内旅行は地方部ほどその恩恵を享受しているといえるだろう。
国内旅行消費額の割合は、三大都市圏が36%、地方部が64%である(図表5)。名目GDPの割合が53%と47%であることを踏まえても、国内旅行が地方創生に貢献していたことがわかる。したがって、国内旅行需要を早期に回復させなければ、それは地方経済にとっての重しとなろう。
1 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8都府県を指す。それ以外を地方部と呼ぶ。
4――需要喚起と感染対策
2 日本経済新聞2020年7月28日朝刊3面「4連休、人手戻らず」
5――おわりに
さらに、人々が3密を避ける傾向は今後も続く。観光地には日本各地(海外渡航が完全再開された後なら世界中)から観光客が集まるため、3密が形成されやすい。人々が旅行を敬遠する心理を払拭する取り組みとして、観光地の混雑期を外して旅行に行くことができるようになるための、休暇の分散といった制度設計が求められよう。
引き続き、観光業の落ち込みから回復させる取り組みが必要だ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
藤原 光汰
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(2020年08月07日「基礎研レター」)
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