2020年06月11日

感染拡大で外国人就労政策はどうなるか?-コロナ危機で顕在化した課題

総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也

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■要旨

外国人労働者を取り巻く環境は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて一変している。
 
戦後最長の景気拡大が続いた日本では、人手不足を補う外国人労働者への期待が高まっていた。日本で働く外国人労働者は、2013年以降7年連続して過去最高を更新し、構成もベトナムやネパール出身者が増加するなど多様化していた。しかし、今回のコロナ危機で「瞬間蒸発」とも言える需要の急減が発生し、雇用環境は急激に悪化している。
 
中でも外国人労働者は、コロナ危機による影響を大きく受けやすい3つの特徴がある。1つ目は、都心に集中する傾向にあることだ。コロナ危機は都市型の問題であり、移動制限などの影響を受けやすい。2つ目は、就業先の産業に偏りがあることだ。コロナ危機は、宿泊業や飲食サービス業などに大きな影響を及ぼしているが、その産業は外国人が多く流入した産業に重なる部分が大きい。3つ目は、雇用の受け皿となる企業についてだ。日本は、企業数で見ると9割以上が中小企業であるが、中小企業は危機への耐性が脆弱な部分があり、そこで就業する外国人労働者は相対的に影響を受けやすい。さらに、セーフティネットの面でも外国人労働者には不安がある。支援対象に制限が設けられている場合もあり、支援の手が届くのは一部に留まる。
 
上記のように今回のコロナ危機で、日本の外国人就労政策における様々な問題が明らかになった。足元にある問題への対応は、就労政策全体に大きな影響を及ぼす。
 
本稿では、外国人就労の現状とコロナ危機で浮き彫りになった問題を整理し、今後の外国人就労政策について考察する。

■目次

1――需要「超過」から「瞬間蒸発」へ
2――10年間でグローバル化した労働市場
  1|外国人就労は過去最高を更新中
  2|外国人労働者への依存度を高める産業界
3――外国人労働者を直撃したコロナ危機
  1|「都市型問題のコロナ危機」≒「都市部に集中する外国人労働者」
  2|外国人労働者依存度の高い産業にコロナ危機の影響
  3|危機への耐性の低い中小企業で働く外国人労働者
  4|感染拡大の見えない実態
4――コロナ危機で試される「外国人就労政策」
  1|万全ではないセーフティネット
  2|将来の日本の姿をどのように描くか
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総合政策研究部   准主任研究員

鈴木 智也 (すずき ともや)

研究・専門分野
経済産業政策、金融

経歴
  • 【職歴】
     2011年 日本生命保険相互会社入社
     2017年 日本経済研究センター派遣
     2018年 ニッセイ基礎研究所へ
     2021年より現職
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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