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- 若者の消費行動の現在と10年後の未来-消費のデジタル化、新型コロナで変化が加速
2020年06月05日
1―コロナでデジタル化が加速
近年、若者を中心に消費行動のデジタル化が進んでいる。インターネット通販や動画配信などのサブスクリプションサービス、キャッシュレス決済サービスの利用に加えて、SNSによるコミュニケーションも活発だ。個人と個人がネットを介して容易につながることのできるシェアリングエコノミーも広がりを見せている。
さらに、今、新型コロナウィルスによる外出自粛や非接触志向の高まりによって、若者をはじめ幅広い消費者層で消費のデジタル化は加速している。
本稿では、今年3月に実施した「暮らしに関する調査*」を用いて、若者(20~34歳の未婚者)の現在や若者が10年後に予測する消費行動について捉える。
さらに、今、新型コロナウィルスによる外出自粛や非接触志向の高まりによって、若者をはじめ幅広い消費者層で消費のデジタル化は加速している。
本稿では、今年3月に実施した「暮らしに関する調査*」を用いて、若者(20~34歳の未婚者)の現在や若者が10年後に予測する消費行動について捉える。
2―若者の消費行動の特徴
この背景には、(1)デジタル消費に慣れ親しんでいること、(2)モノがあふれた中で育ってきたために所有欲が弱いこと、(3)経済不安による節約志向の高さなどがあげられる。
また、家事代行サービスの利用にも積極的であり、背景には夫婦共働きが標準となっていることがあるのだろう。
このほか、若い男性ではメリットがあれば個人情報を登録することへの抵抗が弱い傾向が、若い女性ではフリマアプリの利用意向が高く、欲しいものとの出会いを求めてネットを見る傾向がある。また、女性ではモノを買うよりも旅行やレジャーなどの体験にお金を使う「モノよりコト」志向も高い。
また、家事代行サービスの利用にも積極的であり、背景には夫婦共働きが標準となっていることがあるのだろう。
このほか、若い男性ではメリットがあれば個人情報を登録することへの抵抗が弱い傾向が、若い女性ではフリマアプリの利用意向が高く、欲しいものとの出会いを求めてネットを見る傾向がある。また、女性ではモノを買うよりも旅行やレジャーなどの体験にお金を使う「モノよりコト」志向も高い。
これらより、スマホやSNSに慣れ親しんで育ってきたデジタルネイティブらしい様子がうかがえる。
一方で、「SNSを使う人は多いが、結局、マスメディアの影響が最も大きいと思う」は4割前後を占めて高く、「(略)SNSの情報が一番信用できると思う」を1割程度も超える。
つまり、若者はSNS志向が高い一方で、SNSよりもマスメディアの影響力が勝ると考えている。
SNSでは誰もが気軽に発信できる一方、マスメディアでは誰もが発信できるわけではない。プロが技術や情報収集力、企画力などを駆使してコンテンツを作成している。こういったメディアとしての性質の違いに、若者は一定の価値を認めているのかもしれない。
また、最近ではTV番組がSNSアカウントを持つように、メディアの垣根を超えて情報が配信されている。よって、発信媒体よりも、発信主体が誰かということに一層、主眼が置かれるようになった可能性もある。
一方で、「SNSを使う人は多いが、結局、マスメディアの影響が最も大きいと思う」は4割前後を占めて高く、「(略)SNSの情報が一番信用できると思う」を1割程度も超える。
つまり、若者はSNS志向が高い一方で、SNSよりもマスメディアの影響力が勝ると考えている。
SNSでは誰もが気軽に発信できる一方、マスメディアでは誰もが発信できるわけではない。プロが技術や情報収集力、企画力などを駆使してコンテンツを作成している。こういったメディアとしての性質の違いに、若者は一定の価値を認めているのかもしれない。
また、最近ではTV番組がSNSアカウントを持つように、メディアの垣根を超えて情報が配信されている。よって、発信媒体よりも、発信主体が誰かということに一層、主眼が置かれるようになった可能性もある。
4―若者の考える10年後の未来
所有より利用志向は、現在は主に若者で見られる傾向だが、将来は幅広い消費者層に広がりそうだ。
また、環境配慮志向も伸びているが、この背景には、現在、日常生活において環境問題を肌で感じる機会が増えていることがあげられる。近年、地球温暖化の影響等により、日本では猛暑や台風などの異常気象が増えている。
貯蓄志向の伸びについては、現役世代では少子高齢化による将来の社会保障不安に加えて、新型コロナによる先行き不安が大きいことがあげられる。
情報収集行動については、SNS志向やネット交流志向の伸びが目立ち、将来的にデジタル交流は若者だけでなく幅広い層へ広がりそうだ。一方で、マスメディア志向は低下するわけではなく、現在と同程度を維持しており(たずね方の違いもあるため、同程度という見方が妥当だろう)、10年後の影響も大きい様子がうかがえる。
若者について見ても、全体と同様に、所有より利用志向や貯蓄志向、環境配慮志向、SNS志向の伸びが目立つ。一方、ネット交流志向はもともと比較的高いためか、未来も現在と同程度である。そして、マスメディア志向も現在と同程度であり、今後ともマスメディアとSNSの共存は続きそうだ。
なお、全体と若者について、現在と未来のあてはまる割合の差を比較したところ、貯蓄志向で若者が全体をやや上回る。この背景には若い世代ほど将来の経済不安が強いことがあるのだろう。
また、環境配慮志向も伸びているが、この背景には、現在、日常生活において環境問題を肌で感じる機会が増えていることがあげられる。近年、地球温暖化の影響等により、日本では猛暑や台風などの異常気象が増えている。
貯蓄志向の伸びについては、現役世代では少子高齢化による将来の社会保障不安に加えて、新型コロナによる先行き不安が大きいことがあげられる。
情報収集行動については、SNS志向やネット交流志向の伸びが目立ち、将来的にデジタル交流は若者だけでなく幅広い層へ広がりそうだ。一方で、マスメディア志向は低下するわけではなく、現在と同程度を維持しており(たずね方の違いもあるため、同程度という見方が妥当だろう)、10年後の影響も大きい様子がうかがえる。
若者について見ても、全体と同様に、所有より利用志向や貯蓄志向、環境配慮志向、SNS志向の伸びが目立つ。一方、ネット交流志向はもともと比較的高いためか、未来も現在と同程度である。そして、マスメディア志向も現在と同程度であり、今後ともマスメディアとSNSの共存は続きそうだ。
なお、全体と若者について、現在と未来のあてはまる割合の差を比較したところ、貯蓄志向で若者が全体をやや上回る。この背景には若い世代ほど将来の経済不安が強いことがあるのだろう。
5―アフターコロナの消費行動
消費者心理全体では厳しい状況にあるが、デジタル消費などの一部の消費行動は活性化している。
本稿で見た、所有より利用、ネット交流、貯蓄、環境配慮といった消費者の志向は、何事もなくとも幅広い層に広がっていったものだろう。しかし、新型コロナの影響によって加速している部分がある。
外出が制限されることで、ネット通販やオンラインサービスのサブスク利用が増えている。「モノよりコト」志向とも重なる、モノの購入よりもデジタル消費にお金を費やすという面での所有より利用志向は、今、消費者の希望如何によらず、一気に高まっている。(一方で、モノを買うよりも借りるという面での所有より利用志向は、リスク回避意識の高まりから、今後、見直しが図られる可能性もある。)
さらに、人と外で会えないためにコミュニケーションのデジタル化が進むことでネット交流志向が高まり、経済不安から貯蓄志向も高まっている。深刻な災害等が生じた後は社会貢献意識が高まる傾向があるのだが、これは環境配慮志向の高まりにもつながる。
アフターコロナの消費行動は、ビフォーコロナに戻るのではなく、これまで生じていた変化が一気に進んだところで始まるのだろう。そこで消費者は何に価値を感じ、何に不便さを感じるのか。これらを読み解くことで商機が見えるのではないか。
*20~59歳、約6千名を対象に実施したインターネット調査。株式会社マクロミルのモニターを利用。
本稿で見た、所有より利用、ネット交流、貯蓄、環境配慮といった消費者の志向は、何事もなくとも幅広い層に広がっていったものだろう。しかし、新型コロナの影響によって加速している部分がある。
外出が制限されることで、ネット通販やオンラインサービスのサブスク利用が増えている。「モノよりコト」志向とも重なる、モノの購入よりもデジタル消費にお金を費やすという面での所有より利用志向は、今、消費者の希望如何によらず、一気に高まっている。(一方で、モノを買うよりも借りるという面での所有より利用志向は、リスク回避意識の高まりから、今後、見直しが図られる可能性もある。)
さらに、人と外で会えないためにコミュニケーションのデジタル化が進むことでネット交流志向が高まり、経済不安から貯蓄志向も高まっている。深刻な災害等が生じた後は社会貢献意識が高まる傾向があるのだが、これは環境配慮志向の高まりにもつながる。
アフターコロナの消費行動は、ビフォーコロナに戻るのではなく、これまで生じていた変化が一気に進んだところで始まるのだろう。そこで消費者は何に価値を感じ、何に不便さを感じるのか。これらを読み解くことで商機が見えるのではないか。
*20~59歳、約6千名を対象に実施したインターネット調査。株式会社マクロミルのモニターを利用。
03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
(2020年06月05日「基礎研マンスリー」)
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【若者の消費行動の現在と10年後の未来-消費のデジタル化、新型コロナで変化が加速】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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