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- 新型コロナでREIT市場は急落。不動産市場は曲がり角に直面-不動産クォータリー・レビュー2020年第1四半期
2020年05月14日
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5 日本アコモデーションファンド投資法人(2020年2月期)によると、テナント入替時の賃料変動率は+7.0%に拡大した。また、更新時の賃料変動率も緩やかに上昇している。
6 J-REITが所有する物流施設の賃料も堅調である。GLP投資法人(2020年2月期)の賃料増額改定率はプラス4.4%、日本プロロジスリート投資法人(2019年11月期)の改定賃料変動率はプラス1.6%であった。
4. J -REIT(不動産投信)市場
今年に入ってからしばらくは、Jリート市場は昨年末比プラス圏で推移しコロナ禍とは遠く離れた立ち位置にあった。しかし、金融市場がひとたび強烈なショック安に見舞われると、上場金融商品であるJリート市場もその影響を免れなかった。東証REIT指数は2月第4週以降急落し、直近高値からの下落率は一時▲49%に達した(3/19時点)。その後は反発に転じたものの、東証REIT指数は2015年9月以来の水準まで落ち込んでいる。
今回の急落要因としては、(1)投資家があらゆるリスク性資産を売却し現金化を急ぐ「需給要因」、(2)日増しに悪化するパンデミックへの不安感といった「心理要因」のほか、(3)将来の不動産価格の下落を見据えた「ファンダメンタタルズ要因」が挙げられる。このうち、(3)ファンダメンタルズ要因についてみると、市場全体のP/NAV倍率が0.9倍と1倍を下回っており、今後の不動産価格の下落を織り込む水準となっている。そこで、各社の開示資料(P/NAV倍率、負債比率、アセットタイプ別保有比率)をもとに、価格下落リスクをどの程度織り込んでいるかアセットタイプ別に確認すると、大きい順に、ホテル(▲34%)<商業施設(▲20%)<市場全体(▲8%)<オフィス(▲6%)<住宅(▲1%)<物流施設(+5%)となった(図表-18)。つまり、Jリート市場はコロナ禍のダメージはホテルや商業施設で大きくなる一方で、住宅や物流施設では相対的に小さいと評価しているようだ。
いずれにしても、不動産市場の先行きは、新型コロナウイルスの終息時期や各国の金融・財政対応、今後の景気回復状況によるところが大きい。感染拡大に衰えがみえず厳しい状況が続くが、この危機を克服し社会に日常が戻るよう、各国間のさらなる連帯を願いたい。
今回の急落要因としては、(1)投資家があらゆるリスク性資産を売却し現金化を急ぐ「需給要因」、(2)日増しに悪化するパンデミックへの不安感といった「心理要因」のほか、(3)将来の不動産価格の下落を見据えた「ファンダメンタタルズ要因」が挙げられる。このうち、(3)ファンダメンタルズ要因についてみると、市場全体のP/NAV倍率が0.9倍と1倍を下回っており、今後の不動産価格の下落を織り込む水準となっている。そこで、各社の開示資料(P/NAV倍率、負債比率、アセットタイプ別保有比率)をもとに、価格下落リスクをどの程度織り込んでいるかアセットタイプ別に確認すると、大きい順に、ホテル(▲34%)<商業施設(▲20%)<市場全体(▲8%)<オフィス(▲6%)<住宅(▲1%)<物流施設(+5%)となった(図表-18)。つまり、Jリート市場はコロナ禍のダメージはホテルや商業施設で大きくなる一方で、住宅や物流施設では相対的に小さいと評価しているようだ。
いずれにしても、不動産市場の先行きは、新型コロナウイルスの終息時期や各国の金融・財政対応、今後の景気回復状況によるところが大きい。感染拡大に衰えがみえず厳しい状況が続くが、この危機を克服し社会に日常が戻るよう、各国間のさらなる連帯を願いたい。
7 P/NAV倍率とは、市場時価総額がリートの解散価値(NAV:Net Asset Value)の何倍で評価されているかを表わす指標。
(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2020年05月14日「不動産投資レポート」)
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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