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日本海溝・千島海溝における地震・津波想定の公表~災害・防災、ときどき保険(11)

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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1―はじめに~地域別の地震・津波への対応
検討されている自然災害としては、風水害、火山(噴火)、地震・津波と、全体に共通する対策全般などがあって、さらに細分化されたテーマに沿って、ワーキンググループ・調査部会・検討会などが設置・開催されている。
このうち地震・津波に関しては、現在、南海トラフ沿いの巨大地震に関する調査会などが、予測可能性、防災体制などに分けていくつかある。
2020年4月21日に公表されたのはこれまでに検討会で検討されてきた日本海溝・千島海溝沿いにおける最大クラスの地震・津波の想定など1の報告と、「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ」が設置されることである。その背景と内容を紹介する。
1 日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデルの検討について(概要報告)http://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/model/pdf/honbun.pdf
2―日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震についての報告
まさに東北地方太平洋沖地震がそうであるように、日本海溝で発生する地震の震源となりうる地域は広大で岩手県沖から茨城県沖まで及んでおり、大すべり域は宮城県沖にある。現在の科学的知見ではマグニチュード9を超える地震が発生した際にどの程度の断層のすべりになるのか見極めることは困難である。しかし一方で過去の津波堆積物をみると、宮城県等の海岸域での調査から、東北地方太平洋沖地震と同じ規模の巨大津波は550~600年間隔で5回発生したことがわかるという。他の地域ではまだこうした資料が不足しているが、今後の調査の進展により最大クラスの地震・津波を推定することで起こりうる事態を想定していくことになっている。
日本海溝(三陸・日高沖)モデル・千島海溝(十勝・根室沖)モデルと呼び、どちらでも東北地方太平洋沖地震と似たマグニチュード9以上の地震の規模が予想されている。
震度については、いろいろなケースがあるものの、一例を挙げると
・北海道厚岸町付近で震度7
・北海道えりも町から東側の沿岸部では震度6強
・青森県太平洋沿岸や岩手県南部の一部で震度6強
などと推定されている。
地震の規模でもそうだが津波の想定にもいろいろな困難があり、採用した前提条件にもよることには注意すべきではあるが、得られた結果の例は以下のようなものである。
・北海道 根室市からえりも町 30m弱、苫小牧市・函館市など 10m程度
・青森県 八戸市 25m
・岩手県 宮古市 30m
・宮城県以南 場所により10mを超えるが、東日本大震災よりも低い程度
3―新たなワーキンググループの設置
日本海溝・千島海溝も過去に大きな地震が発生してきた地域のひとつとして、2006年に策定された防災基本計画に基づいて防災計画が推進されてきた。ところが、2011年の東北地方太平洋沖地震の発生により、甚大な被害が発生した。その教訓も踏まえて専門調査会が設定され、さらには巨大地震モデル検討会が設置されるなかで検討が進められてきた。
今般、そこにおける最大クラスの地震・津波の検討を踏まえ、当ワーキンググループがあらたに設置され、今後被害想定と防災対策を検討することとなったものであり、それに先立ち、今後の検討に資するために地震・津波モデル検討の基本的な考え方や震度分布・津波高・浸水域などの現時点における主要結果が公表されたということである。
4―おわりに~今後の検討スケジュール
・想定される最大クラスの地震・津波による人的物的経済的被害の想定
・これら想定される被害を軽減するための防災対策
・特に、寒冷地、積雪地特有の被害の想定、防災訓練
が例示されている。
並行して、上に紹介した地震・津波想定を提示した検討会においても、さらに点検や詳細な分析・整理が行われ、あらためて報告書として取りまとめられることになっている。
(2020年05月12日「基礎研レター」)

03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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