- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- 新型コロナへの生活者の不安ー全国6千名の定量調査から見えること、不安を軽減させるには
新型コロナへの生活者の不安ー全国6千名の定量調査から見えること、不安を軽減させるには
基礎研REPORT(冊子版)5月号[vol.278]

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
このレポートの関連カテゴリ
1―はじめに
2―新型コロナへの不安
2|職業別
職業別に見ると、男性では不安層は「公務員( 管理職以上)」(75.3%)で最も多く、次いで僅差で「正社員・正職員(管理職以上)」(72.4%)、「公務員(一般)」(72.2%)、「正社員・正職員( 一般)」(69.4%)「、経営者・役員(」68.4%)と続く。
男性では、出社制限やテレワークへの切り替え指示といった現場のマネジメントを担う管理職層では、負担感が強いために不安が強い様子がうかがえる。
一方、女性では不安層は「専業主婦」(84.8%)で最も多く、次いで僅差で「自営業・自由業」(81.0%)、「嘱託・派遣社員・契約社員」(79.6%)、「パート・アルバイト」(78.1%)、「正社員・正職員(一般)」(74.3%)と続く。
女性では、子の休校による負担が大きな層ほど不安が強い様子がうかがえる。負担には家庭で子の世話をすることのほか、就業者ではフリーランスや非正規雇用者などの不安定な立場で働く者は、休業が収入減少に直結するという金銭面の問題もある。
3|家族の状況別
家族の状況別に見ると、未婚者より既婚者(配偶者あり)で、子がいないよりいる方が、単身世帯より同居家族の人数が多い方が不安層は多い。家族の人数が多いと自分だけでなく家族の心配がある上、自宅での罹患リスクが高まる懸念があるのだろう。
なお、男性と比べて休校の影響を受けやすい女性について、就業状態別・子の有無別に見ると、就業者では子の有無によらず、自営業・自由業>非正規雇用者>正規雇用者の順に不安層が多いが、いずれも子のいる女性が子のいない女性を上回る[図表2]。また、子のいる女性では、自営業・自由業の不安層は専業主婦を上回る。
このほか、新型コロナに関係がありそうな日頃の行動や価値観別に見ると、「情報は自分で検索して手に入れたい」や「情報取得に時間をかけている」などの情報収集に積極的な層のほか、「SNSを使う人は多いが、結局、マスメディアの影響が最も大きいと思う」というマスメディア志向の強い層で不安層が多い傾向がある。
これらより、増え行く感染者数や食料・日用品の買い占め騒動といった不安を増すような情報に対して、他者と比べて多く接することで、自ら不安を高めている様子がうかがえる。
3―新型コロナによる外出抑制~
新型コロナへの不安別に見ると、外出抑制層は、「非常に不安」と「やや不安」をあわせた不安層では74.9%、「全く不安でない」と「あまり不安でない」をあわせた非不安層では20.9%であった。
なお、外出抑制層は不安層が多い属性とおおむね合致しており、男性より女性で、年齢は高いほど、未婚者より既婚者で、子がいないよりいる方が、男性は管理職層で、女性は専業主婦のほか、自営業・自由業>非正規雇用者>正規雇用者の順に多い。
地域別には、当調査の実施直前に、知事から外出自粛要請が出た北海道で、最も不安層が多く、外出抑制層も多い。
4―外出抑制で増えた行動
「外出を控えて、どのような行動が増えたか(複数選択)」についてたずねると、全体では「テレビの視聴」(51.4%)が最も多く、次いで「ネットサーフィン」(43.8%)、「動画配信サービスの視聴」(27.5%)、「睡眠」(22.6%)、「インターネットショッピング」(20.9%)と続く。また、「その他」の自由記述では、「ゲーム」が比較的多いほか、「裁縫」や「除菌」といった項目もあがっている。
外出抑制で増えた行動について、不安層・非不安層別に見ると、不安層ではいずれの項目も選択割合が高い傾向があるが、特に「テレビの視聴」( 非不安層より+18.8%pt)や「ネットサーフィン」( +13.9%pt)、「インターネットショッピング」(+10.8%pt)で非不安層との差がひらく[図表3]。
5―おわりに
未知の感染症との闘いにおいては、まだ不確かな情報も少なくない。このような中では、時には、ある程度、意識的に情報を遮断する時間を作ることも必要ではないか。
さらに、終息には数年を要するという見方もある。今、個人ができることは、自分の生活をしっかりと守ることだ。政府の経済支援策を十分に活用する一方で、不安感を不要に高めるような情報を自ら探しにいくのではなく、日々の健康管理など、すべきことをしっかりとやっていくことが精神の健康にもつながるだろう。
また、情報を出すメディア側には、感染者だけでなく退院者の状況など俯瞰した情報提供を求めたい。負の情報だけでなく、正の情報もあわせて見ることで、生活者は現状をより冷静に捉えられるのではないか。
(2020年05月12日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/02/06 | インバウンド消費の動向(2024年10-12月期)-2024年の消費額は8.1兆円、訪日客数は3,687万人で過去最高 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/11/19 | 家計消費の動向(~2024年11月)-緩やかな改善傾向、継続する物価高で消費に温度差 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/11/08 | Z世代の消費志向とサステナブル意識-経済・社会的背景から見た4つの特徴 | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
2024/10/30 | 訪日外国人消費の動向(2024年7-9月期)-9月時点で2023年超えの5.8兆円、2024年は8兆円も視野 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年02月07日
金価格は史上最高値を更新、まだ上昇余地はあるか? -
2025年02月07日
英国金融政策(2月MPC公表)-利下げ決定、今後の段階的・慎重姿勢は維持 -
2025年02月07日
基礎研REPORT(冊子版)2月号[vol.335] -
2025年02月07日
Jリート市場回復の処方箋 -
2025年02月07日
海底資源探査がもたらす未来-メタンハイドレートと海底金属
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【新型コロナへの生活者の不安ー全国6千名の定量調査から見えること、不安を軽減させるには】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
新型コロナへの生活者の不安ー全国6千名の定量調査から見えること、不安を軽減させるにはのレポート Topへ