2020年04月07日

Z世代の情報処理と消費行動-若者マーケティングにおける試論的考察

基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.277]

生活研究部 研究員   廣瀨 涼

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1―Z世代とは

変わりゆく消費文化の中で、その先頭にいたのはいつも「若者」であり、若者の消費を理解することは、現代消費文化そのものの理解に繋がると筆者は考える。本レポートではZ世代(1996~2012年の間に生まれた層)を若者と位置づけ、彼らの消費行動について考えを深める。
 
まず、それ以前の世代であるY世代(1980~1995年の間に生まれた層)と比較し、Z世代との価値観の差について考えてみる。Y世代はインターネットが普及した環境で育ったデジタルネイティブである。また、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使用していた先駆けの世代でもあり、主に写真を使用することで自身を表現し、共感を受ける事で、自分らしさを構築してきた。しかし、彼らの繋がりは主に実社会における人間関係の延長であったため、ネットにおける人間関係においても「共感」することに重きが置かれている。
 
一方、Z世代においてはWeb2.0と呼ばれる変革により、動画共有サービスが次々と登場したことで、思春期を動画投稿中心にSNSを利用して過ごしている。動画投稿やライブストリーミングによりSNS上に他人の経験(疑似体験)が溢れているので、多くの点で、その消費や経験を自分でする必要があるか否かを考えてから行動をとる傾向がある。また、彼らのネットにおける繋がりは、広く、多様になり、繋がり方によってSNSで複数のアカウントを使い分けてきたという特徴がある。これによりZ世代は、オンライン空間を、自身の多面性やアイデンティティを受容してくれる場所と認識しており、多様性を受け入れ「協調」するという価値観を持っている。

2―若者マーケティングはなぜ困難か

多様でそれ以前の世代とは異なる価値観を持つZ世代を対象にしたマーケティングは骨が折れる。例えばSHIBUYA109ラボ/産業能率大学小々馬ゼミの調査では、生活価値観や行動特性を基に女子高生を10のグループに分類し、各グループで消費行動や支出額が異なることを明らかにして、女子高生そのものを一つのターゲットとして捉える事は困難であるとした。
 
女子高生の類型化
また渋谷系や原宿系といったエリアによる分類も、エリアそのものではなく、ジャンルとして指すことが近年では一般的になった。個人レベルでみても、従来なされてきた“〇〇系”という分類も、TPOに合わせて若者が日々ファッションの系統を変えていることを踏まえると、不毛なものになりつつある。以上のような背景から、若者を属性でセグメンテーションすることは困難となり、「クラスタ」を用いたターゲティングが有用であると筆者は考える。クラスタとは若者が使う“仲間や〇〇が好きな人たち”という意味を持つ俗語で、何かしらの対象や趣味に集中して消費することがオタク的であるという考え方から「オタク」と同義で使われている。また、現代ではオタクという言葉自体が趣味を表しており、Z世代は、オタクを趣味から転じてアイデンティティと同義で使っている。以上を整理するとクラスタはZ世代にとってのアイデンティティとなるわけである。
 

3―いくつもの顔を持つ若者

特にSNSにおいて、クラスタは、繋がり合うために投稿内のタグとして使われる「ハッシュタグ#」を用いて世界観を共有している。オタクの関係性や分類は、ハッシュタグによって顕在化し、1つの共有された指標のように、その価値観に対して同調しているユーザー同士で共有されている。例を挙げるとジャニーズ関連のハッシュタグは、ジャニーズに関する投稿にしか使われず、そのハッシュタグを用いることで交流をしたいクラスタを選別することができるのである。

また、クラスタには、コミュニケーション相手選別以外に、帰属意識を満たす機能もある。ハッシュタグを検索することで、クラスタ内のトレンドや共通意識を探ることができる。例えば、クラスタ内でブランド・キャラクター・色など共通の記号が存在し、その記号を消費することでクラスタメンバーに対して同調性や親和性を要していることを発信する事ができる。言い換えるとそのクラスタの一員として見てもらうために、そのクラスタ内で多用されるハッシュタグを使用したり、共通の記号を消費したりすることが、帰属意識の充足に繋がるのである。
 
一方で、帰属意識を持とうとする事で、ファッションがクラスタ内で画一化する傾向がある。ファッションが自身のアイデンティティを表現していた時代とは反対に、自身のアイデンティティ(趣味)がファッションに影響を与えていると捉える事もできる。そのため、その日のアイデンティティによってファッションの系統が異なる。同様にその場その場でアイデンティティの源泉に対して演じるキャラを変える事で、自身の居場所を生み出している。電通若者研究部の「2015年若者が所属しているグループ数の調査」によると、若者は平均7つのグループに所属していたという。また、日常において平均5キャラを使い分けていたという。
 
併せて、電通ギャルラボの「2017年#女子タグ”発掘のための女子大生調査」によると、調査対象の81.8%が、何かしらのオタクであり、一人当たり平均5.1個のジャンルにおいてオタク的資質を持ち合わせていたという。若者は所属するコミュニティやクラスタごとに見せる顔を使い分けており、その顔の一つ一つが自身のアイデンティティであり、一人の若者は様々な世界観で構成されていると考えることができるのではないだろうか。
 
ハッシュタグから構成される

4―“#”の3つのメリット

以上の事から筆者は、属性でセグメンテーションするのではなく、共有されたアイデンティティであるハッシュタグ(#)に基づいてターゲティングする事で3つのメリットがあると考えている。

まず、クラスタ内で消費が画一化するため消費傾向が把握しやすい点である。ハッシュタグに基づくターゲティングは、クラスタ内の消費傾向やトレンドが把握しやすいという利点があるだけでなく、消費者がクラスタ内で画一的な消費をし合うため、ハッシュタグの持つ世界観を顧みて消費してくれるという利点がある。
  
次に、属性では分断される消費者も、クラスタは同じである可能性がある点である。属性による分類では消費者像を明確にしたうえでターゲティングする必要があったため、見た目や年齢で消費者を分断する必要があった。しかし、消費者をハッシュタグごとにみると、一見別の世界に住んでいる消費者同士でも繋がる事がある。例えば属性で見るとファッション市場では、同じターゲットとして括られる事はないが、クラスタで見ると猫好き、洋楽好きなど同じ世界観(タグ)を共有している可能性があり、同一ターゲットとしてみなす事ができるのである。
 
クラスタは異なるが…
最後に消費者同士の間接的な繋がりを見つけやすい点である。例えばアイドル・アニメ・K-POPとジャンルによって住み分けされているオタクが、うちわを持って好きな人を応援するという文化を共有しているため、「#手作りうちわ」というハッシュタグは、ジャンルを跨って利用されている。これは「うちわ」を媒介として様々なクラスタが間接的に繋がりあい、多岐にわたるクラスタに対し、市場可能性を有していることを意味する。

5―まとめ

若者文化には、嗜好による繋がりによって構成されるクラスタが存在している。各クラスタはそれぞれ世界観を持っており、SNSにおいてはハッシュタグを用いて共有される。Z世代は一人の消費者が持つ趣味嗜好が多様でそれぞれが自身のアイデンティティとなっており、一人の消費者は様々な世界観によって構成されている。このことから多様化する若者をターゲティングする際には、属性によってセグメンテーションをするよりもクラスタに訴求するようなアプローチが有効であると筆者は考える。
 
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生活研究部   研究員

廣瀨 涼 (ひろせ りょう)

研究・専門分野
消費文化、マーケティング、ブランド論、サブカルチャー、テーマパーク、ノスタルジア

(2020年04月07日「基礎研マンスリー」)

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レポート紹介

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