コラム
2020年03月19日

認知症介護の実態(3)-家族介護者の介護(関連)費用の負担状況

生活研究部 主任研究員   井上 智紀

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先日の拙稿では、弊社が昨年7月に実施した「認知症介護家族の不安と負担感に関する調査1」の結果から、認知症の方の介護を担う家族介護者の困りごとと負担の状況について概観した結果、家族介護者の困りごとや負担感は、要介護者の認知症の状況や家族介護者自身の要介護者との同居の状況、要介護者の同居家族の有無によりそれぞれ異なること、認知症が進むに連れ、理解や対処に関わる心身の負担が増すことを示した。また、家族介護者は心身の負担のみならず、収入の減少という形で経済的にも負担を強いられていることも示された。

本稿では、引き続き家族介護者の経済的な負担の面に焦点をあてた結果を示す。
 
1 調査概要は以下の通り。
調査対象:認知症(診断確定の段階を含む)の主たる家族介護者または家族介護者の配偶者である40~70代の男女個人
調査手法:インターネット調査
調査時期:2019年7月19日~23日
有効回収サンプル数:2,000s

介護費用の負担者

図表 1 介護費用の負担者 はじめに、要介護者の介護費用の負担者についてみると、全体では「要介護者が全額負担」が62.8%と6割を占めて最も多く、「あなたが一部を負担(折半を含む)」(22.2%)、「あなたが全額または大半を負担」(12.2%)の順となっている(図表 1)。これを要介護者の居所別にみると、有料老人ホームなどで「要介護者が全額負担」が68.6%と7割近くを占めて高く、介護保険施設入所中、病院・診療所入院中で「あなたが一部を負担(折半を含む)」(24.3%、25.6%)が4分の1を占めて高くなっている。

要介護者の介護費用

要介護者の介護費用についてみると、全体では一時費用2が51万円、月々の介護費用2が75,600円となっている(図表 2)。要介護者の居場所別にみると、一時費用は介護保険施設入所中で60万円、月々の介護費用は有料老人ホームなどで165,900円と、それぞれ高くなっている。また、認知症の日常生活自立度別では概ね認知症が進行するほど高くなる傾向にあり、Ⅳ以上では一時費用が80万円以上、月々の介護費用が10万円以上とそれぞれ高くなっている。
図表 2 介護費用
 
2 「一時費用」は住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用の合計、「月々の介護費用」は公的介護保険の自己負担分やその他の介護サービス費用など月々支払っている介護費用を指す。

家族介護者が負担している費用

図表 3 家族介護者の介護費用負担割合 要介護者の介護費用について、一部でも負担している方を対象に、介護費用のうちの負担割合についてみると、全体では45.6%となっている(図表 3)。要介護者の居場所別にみると、その方のご自宅では51.0%と5割を超えて高く、認知症の日常生活自立度別ではII-bで49.5%と最も高く、M(48.1%)、II-a(47.2%)の順で続いている。
図表 4 家族介護者が負担した一時的にかかった介護費用や月々の介護費用以外の負担額 前述の介護費用とあわせると、全体では家族介護者は、一時費用として232,500円、月々の介護費用として34,500円を負担していることになる。

一方、これらの介護費用以外にも家族介護者は交通費や通信費、ごみの処理費用など様々な費用負担が求められる。家族介護者および配偶者が負担した一時的にかかった介護費用や月々の介護費用以外の負担額についてみると、全体では11,900円となっている(図表 4)。要介護者の居場所別にみると、有料老人ホームなどで22,600円と高く、次いでその方のご自宅(18,100円)、病院・診療所入院中(15,000円)の順となっている。認知症の日常生活自立度別にみると、II-aで36,800円と高く、IV(18,900円)II-b(10,700円)の順で続く。ただし負担の程度別では「あなたが全額または大半を負担」では17,700円、「あなたが一部を負担(折半を含む)」では10,400円となっている。ただし負担額のバラツキの程度を表す標準偏差は、全体では62,600円、「あなたが全額または大半を負担」が81,000円、「あなたが一部を負担(折半を含む)」は54,600円となっていることから、負担額は回答者による個人差が大きい。

介護資金の出所

家族介護者が拠出している介護資金の出所についてみると、全体では「月々の生活費の中から」が74.1%で最も多く、「自分たちの老後資金や介護資金として蓄えてきたもの」(24.1%)、「余裕資金として蓄えてきたもの」(19.2%)の順となっている(図表 5)。負担の程度別でみると、全額または大半を負担では「自分たちの老後資金や介護資金として蓄えてきたもの」が32.5%と3割を超えて高く、要介護者自身が介護費用を準備できていない場合には、自身の老後資金や介護資金の蓄えを取り崩す必要に迫られる可能性が高いことがわかる。
図表 5 拠出している介護資金の出所 このように、認知症の方の介護費用はその方の居場所や認知症の進行度合いによっても異なり、一時費用として30~50万円、月々の介護費用としては数万円から十数万円がかかっている。これらの介護費用は、要介護者自身が負担している場合が多いものの、家族介護者自身についても少なからず負担している状況にあり、なかには全額または大半を家族介護者自身が負担している場合もあることが示された。実際の負担額については、回答者ごとのバラツキが大きくなっているものの、一時費用として20万円程度、月々の介護費用として3万円程度の負担になるほか、介護費用以外の諸費用としても既に数万円程度の負担がかかっている。こうした家族介護者の介護費用負担は、月々の生活費から捻出している方が大半を占めているものの、自身の老後資金や介護資金を取り崩して賄っている場合もあるようである。このように、自身の老後資金や介護資金の取り崩しを迫られる状況は、自身の生活設計に与える影響も大きいといえよう。

次回は引き続き同じ調査の結果を用いて、家族介護者が必要とする情報ニーズについて概観した結果を示す。
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生活研究部   主任研究員

井上 智紀 (いのうえ ともき)

研究・専門分野
消費者行動、金融マーケティング、ダイレクトマーケティング、少子高齢社会、社会保障

(2020年03月19日「研究員の眼」)

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