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認知症介護の実態(2)-家族介護者の困りごとと負担感
生活研究部 主任研究員 井上 智紀
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こうした認知症やMCIの状態にある方の介護を担う家族は、日々どのようなことに困ったり、負担を感じているのだろうか。本稿では、弊社が昨年7月に実施した「認知症介護家族の不安と負担感に関する調査1」の結果から、認知症の方の介護を担う家族介護者の困りごとと負担の状況について概観した結果を示す。
1 調査概要は以下の通り。
調査対象:認知症(診断確定の段階を含む)の主たる家族介護者または家族介護者の配偶者である40~70代の男女個人
調査手法:インターネット調査
調査時期:2019年7月19日~23日
有効回収サンプル数:2,000s
家族介護者の困りごと
2 要介護者と配偶者の夫婦のみ世帯であり、主たる介護者は自身とする回答と、同居の配偶者であるとする回答に二分される結果となっている。
家族介護者の介護にまつわる負担感
このように、家族介護者の困りごとや負担感は、要介護者の認知症の状況や家族介護者自身の要介護者との同居の状況、要介護者の同居家族の有無によりそれぞれ異なっている。認知症の進行具合は人によってもそれぞれ異なるうえ、現在の医学では進行を遅らせることはできても完治できるものではないことが、「先の見通しが立たない」という困りごとにつながっているものと考えられる。また、症状が進み意思疎通が難しくなっていくなかでは、要介護者の意思を汲み取ってサポートしていくこと自体の困難さも増すことになる。また、症状が進む中で意思疎通の問題に加え、徘徊や妄想、幻覚などの周辺症状が現れることで、理解や対処に関わる心身の負担が増すことも家族介護者の大きな負担となっているといえる。こうした負担を抱えつつ行う認知症介護を在宅で続けることは、家族介護者にとって社会との接点の縮小や喪失につながっており、特に要介護者と離れて暮らす場合には、より深刻な問題となっているようにも思われる。認知症やMCIの予防に向けた取り組みが重要であることは当然ながら、家族の規模の縮小が続いている中では、このような家族介護者の負担を社会全体の中でどのように軽減していくかについても、考慮していくことが求められるのではないだろうか。
一方で、認知症介護では、家族介護者は心身の負担のみならず、収入の減少という形で経済的にも負担を強いられている様もみてとれた。次回は引き続き同じ調査の結果を用いて、家族介護者が負担する介護関連費用の状況について概観した結果を示す。
3 荒井ほか(2003)「Zarit介護負担尺度日本語版の短縮版(J-ZBI-8)の作成:その信頼性と妥当性に関する検討」『日本老年医学会雑誌』第40巻第5号pp.497-503
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03-3512-1813
(2020年03月13日「研究員の眼」)
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