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- ドルコスト平均法を考える-過去データに基づく分析
1――ドルコスト平均法の比較対象
一方、毎月の購入金額に着目すると、定量投資では、毎月の購入金額が最大で1万円もの差がある。毎月の投資額と生活費とを調整しなければならない個人投資家にとって、支出額の大きな変動は好ましくなく、そもそも定量投資は現実的ではないであろう。
2――ドルコスト平均法の運用実績
そこで、過去の市場実績に基づき、ドルコスト平均法を実施した人と、ある程度の資金が貯まってから投資を実施した人との間で投資結果に差はあったのか、長期投資を前提とした分析を行いたい。具体的には、毎月定額で発生する積立可能額を活用するパターンとして、以下の3つを設定した。(ア)は、毎月の収入から投資可能額を捻出する場合、(イ)(ウ)は、毎月の収入からの投資可能額を預金(無リスク金利で運用)し、待機期間1年または5年後に貯蓄額を投資することを繰り返す場合とした。なお、(イ)(ウ)については、資金をためてから投資する人を想定しているが、ボーナスなどの臨時収入を原資に、定期的な投資を行う場合も想定できる。
実績リターンの平均値は、日本株式と米国株式いずれの投資対象においても、毎月積立、1年待機、5年待機、の順に大きいが、日本株式の場合、さほど変わらなかった。リスクの指標となる標準偏差は、日本株式に投資した場合は、リターンと逆で、5年待機、1年待機、毎月積立、の順に大きく、5年待機のリスクがかなり高い。米国株式のリターンは、日本株式と同様に、毎月積立、1年待機、5年待機の順に大きく、リスクも同じ順序だが、5年待機が若干低いだけで、どれもほぼ同様なレベルだった。しかし、投資効率性に着目すると、日米ともに、毎月積立、1年待機、5年待機、の順序となっており、毎月積立が最も効率が良かったという結果になった。
しかし、米国株式において、毎月積立をしていたことがリスク増大に繋がったということにはならない。標準偏差の高さは、実質的な投資期間の差が影響していると言える。株式に投資している実質的な期間は、待機期間を有するパターンよりも、毎月積立の方が長い。毎月積立の方が、長い間リスクに晒されているため、リターンとともにリスクも高くなったと解釈できる。つまり、米国株式では、実質的な投資期間が長い毎月積立のリスクが高くなったというだけであり、むしろ、長期投資により優れたリターンを得ることが出来ていたということになろう。
ただし、運用成果に与える影響は、定期的な積立頻度の差よりも、投資期間の長さや投資対象の違いが大きい。この違いをより具体的に示すため、図表4にて毎月の投資可能額を2万円とした場合の運用実績を、投資期間10年と30年で算出した。まず、投資期間の違いとして、ある意味当然ではあるが、日本株式、米国株式、ともに、リターンは投資期間30年の方が高かった。また、日本株式と米国株式のリターンの最小値を比較すると、投資期間10年と30年では、10年の方がかなり悪く、リスクが高いこともわかる。つまり、10年は30年と比べてリターンが低くリスクが高いということになる。
一方、日本株式と米国株式のリターンの差は歴然である。投資期間30年毎月積立をした場合、米国株式のリターンは実額ベースで2千万円ほど、日本株式より高かった。さらに、最小値に着目すると、米国株式に30年間長期投資した場合、いずれの場合も積立金額総額を上回っていた一方、日本株式の場合はいずれの場合も積立金額総額を下回っていた。今回の分析では、ドルコスト平均法に焦点を当てるため、投資対象を分散しなかった。結果として、長期投資の重要性とともに、投資対象の選定が重要であることが確認できた。
結論として、ドルコスト平均法は積立手法として有効な側面もあるが、万能ではなかった。長期的に上昇せず、レンジで動く投資対象の場合、さほど大きな差は出ない。一方で、長期的に上昇トレンドがある投資対象の場合、毎月積立はリターンを獲得するのに有効な手法であった。しかし、いずれにせよ、投資効率性において、ドルコスト平均法は長期投資による効果や機会分散の効果が期待できるため、優れた成果を出す手法だと考えることができる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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水野 友理那
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(2020年02月18日「基礎研レター」)
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