- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 金融・為替 >
- 金融市場・外国為替(通貨・相場) >
- 円高が進まなくなった理由~ドル円市場の構造変化
2020年02月07日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■要旨
- 円高ドル安が2つの意味で進まなくなっている。一つは「円高トレンドの消滅」だ。ドル円は2017年以降、概ね105円~115円のレンジ内で一進一退を続けており、かつて(2007年~2012年や2016年)のようにトレンドとして円高ではない。そして、もう一つは短期的な変動としての「リスクオフの円高の鈍化」だ。従来、市場の警戒感が高まる場面では、ドル円でも「リスクオフの円高」が進行してきた。しかし、特に昨年9月以降はリスクオフ局面での円高反応が鈍くなっており、今年年初の中東情勢緊迫化や足元の新型肺炎拡大に際しても、円高ドル安が殆ど進んでいない。
- 円高トレンド消滅の背景としては、(1)日米物価上昇率の格差縮小、(2)貿易収支の赤字化、(3)対外直接投資の拡大、(4)米金融緩和に伴うリスクオン地合いの形成が挙げられる。そして、「リスクオフの円高」鈍化の背景としては、(1)米金融緩和によるリスクオフ度合いの抑制、(2)「リスクオフのドル買い」の活発化、(3)国内投資家による円高時の米債購入、(4)投機筋の円売りポジション縮小が挙げられる。
- このように、近年、円高が進まなくなった理由として多くの構造変化が挙げられるが、今後も円高が進みづらい状況が維持される保証はない点には注意が必要だ。現在、円高を抑制している要因のうちの多く、具体的には「米金融緩和に伴うリスクオン地合いの形成」、「米金融緩和によるリスクオフ度合いの抑制」、「リスクオフのドル買いの活発化」、「国内投資家による円高時の米債購入」については、「米国経済は足元堅調で、先行きも堅調が維持される」という米国経済に対する信頼感や安心感が大前提にある。従って、今後もし米国経済に陰りが生じ、この前提に疑問符が付けば、ドル円でも再び円高が進行しやすくなるだろう。円高リスクへの警戒が不要になったわけではない。
■目次
1.トピック:円高が進まなくなった理由
・円高トレンド消滅の背景
・「リスクオフの円高」鈍化の背景
・「大幅な円高進行リスク」は無くなったのか?
2.日銀金融政策(1月):リフレ派の後もリフレ派を指名
・(日銀)維持
・今後の予想
3.金融市場(1月)の振り返りと予測表
・10年国債利回り
・ドル円レート
・ユーロドルレート
1.トピック:円高が進まなくなった理由
・円高トレンド消滅の背景
・「リスクオフの円高」鈍化の背景
・「大幅な円高進行リスク」は無くなったのか?
2.日銀金融政策(1月):リフレ派の後もリフレ派を指名
・(日銀)維持
・今後の予想
3.金融市場(1月)の振り返りと予測表
・10年国債利回り
・ドル円レート
・ユーロドルレート
(2020年02月07日「Weekly エコノミスト・レター」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/18 | トランプ関税発の円高は止まるか?~マーケット・カルテ5月号 | 上野 剛志 | 基礎研マンスリー |
2025/04/11 | 貸出・マネタリー統計(25年3月)~貸出金利は上昇中だが、貸出残高は増勢を維持、現金・普通預金離れが進む | 上野 剛志 | 経済・金融フラッシュ |
2025/04/07 | トランプ関税と円相場の複雑な関係~今後の展開をどう見るか? | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/04/01 | 日銀短観(3月調査)~日銀の言う「オントラック」を裏付ける内容だが、トランプ関税の悪影響も混在 | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
新着記事
-
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く -
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【円高が進まなくなった理由~ドル円市場の構造変化】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
円高が進まなくなった理由~ドル円市場の構造変化のレポート Topへ