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- 「東日本大震災による被害・生活環境・復興に関するアンケート」2016年調査結果概要-福島県双葉町民を対象とした第3回調査
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1――基本情報
本調査は世帯主の方を対象としており、年齢、性別の分布については図1、図2の通りである。このように、国勢調査の年齢・性別分布に比べると、回答者の年齢分布は60代、70代の方が多く、性別の分布は男性の回答者が多いという偏った分布である。加えて、震災という大変な状況が起こった後にご協力いただいた調査なので、回答者の傾向が一般的なアンケート調査とは大きく異なっている可能性も考えられる。そのため、本調査の結果が、必ずしも双葉町民全体の傾向を示すものではないことにご留意頂きたい。
1 本研究は、以下の研究助成によって実施されてきた。記して深謝する。
科研費(15J09313、26220502、LZ003)、日本経済研究センター研究奨励金
また、この調査は東京大学倫理委員会の承認(19-73)のもと実施した調査である。
2――健康状態について
また、調査時点で仮設住宅にお住まいだった双葉町民の方のK6の値を宮城県の仮設住宅にお住まいの方を対象とした調査結果と比較しても、双葉町民で仮設住宅にお住まいの方のK6の値は極めて高い可能性があることがわかった(図6参照)。さらに、双葉町の仮設住宅にお住まいの方のK6の値は2013年から2016年にかけて高くなっている傾向があることがわかる。長期的な仮設住宅での生活がこころの健康状態にストレスを与えている可能性がある他、こころの健康状態が悪化していると、仮設住宅から次の住まいへの移動が困難になっている可能性も考えられる。いずれにしても、長期的に仮設住宅に住まわれた方へのこころのサポートが重要であることが示唆された。
3――社会関係資本の変化について
社会関係資本を図る指標として一般的に使われている指標はいくつかあるが、ここでは3つの項目に注目する。「一般的な人への信頼感」「近所の人との助け合いの頻度」「近所の人への信頼感」である。図7、図8、図9から、この3つの指標はどれも、震災前と比較して減少しており、また、2013年から2016年での回復はほとんど見られず、一般的な人への信頼感は震災後さらに減少傾向が見られる。このことから、震災で減少させられた社会関係資本の回復にはさらに長い時間がかかる可能性があることがわかる。
4――避難先の住民の方との関係構築について
5――これまでの3回の調査分析で示唆されたことのまとめ
(2) 震災と避難で双葉町民の社会関係資本が大きく減少させられ、その回復にはとても長い時間がかかる可能性がある。
(3) 震災前からのつながりを保つこと、震災後ボランティア活動や趣味の会に参加することによってこころの健康状態を良好に保つ助けになる可能性がある。
(4) 震災前後の生活を比較して、失ったものが大きい方ほど、こころの健康状態が悪化した可能性がある。具体的には、震災前と比較して居住空間が大きく減少した方のこころの健康状態が悪化した可能性がある。
(5) 避難先の地域の住民の理解や、避難先の地域の住民との新たな関係構築がこころの健康状態の回復に重要な役割を果たす可能性がある。
これらの結果は国内外の学会で発表し、また国際的な学術誌で発表をしてきている。今後も分析を進め具体的な提案につなげていく所存である。
本調査結果は、調査にご協力頂いた約17%の双葉町の世帯の方のご回答のみを集計・分析した結果であり、この結果が双葉町民の方全員の傾向を表すものではございません。震災という大変な状況が起こったあとにご協力いただいた調査であるため、回答者の内訳は一般的なアンケート調査とは大きく異なっている可能性もございます。その為、健康状態の自己評価についての集計や、こころの健康状態についての集計においても、過大評価がされている可能性がございます。結果の解釈には十分な注意が必要であり、この調査結果のみによる断定的な判断は避ける必要がありますことにご留意いただれば幸いです。
(2020年02月07日「基礎研レポート」)
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03-3512-1882
- 【職歴】
2010年 株式会社 三井住友銀行
2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
2021年7月より現職
【加入団体等】
日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
博士(国際貢献、東京大学)
2022年 東北学院大学非常勤講師
2020年 茨城大学非常勤講師
岩﨑 敬子のレポート
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