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なお、年金基金における基本資産配分の策定では、過度な利回りの下振れを抑制することも重要だ。実際の運用収益が予定利率を大きく下回った場合、母体企業は追加負担をしなければならない。母体企業の財務状況に悪影響を及ぼしかねないため、負担額に耐えられる範囲(許容リスク)に応じて、基本資産配分を策定する必要がある。しかし、平均分散法だけでは、基本資産配分の下振れリスクをどの程度抑制できるのかについては勘案できない。そのため、下振れリスクは、追加的に把握する必要がある。
下振れリスクを定量化する手法の1つに、「リターンが何%以下になる確率」を表す方法がある。平均分散法におけるリターンの平均と標準偏差を用いて、正規分布に従うことを前提に、下振れリスクを計算することも可能だ。しかし、実際の下振れリスクは、正規分布を想定して算出した下振れリスクより高くなる可能性がある。
実際のデータを用いて、「リターンがマイナス10%以下となる割合」を計算してみた。評価対象は、国内株式と外国株式を50%ずつ均等に組み入れたポートフォリオ(以下、均等ポートフォリオ)、国内株式100%、外国株式100%である。マイナス10%以下の割合について、実績値と、同期間におけるリターンの平均・標準偏差を用いた正規分布を想定した理論値とで比較したところ、いずれも、実績値の方が高かった(図表2)。実際のリターンは、正規分布ではなく、マイナスの分布が厚いことが示されている。
分散投資効果が効かなかったのは、一時的に、国内株式と外国株式の相関係数が高く変化したからだ。両資産の相関係数は、2006年1月以降の全期間においては0.83であったのに対し、均等ポートフォリオのリターンがマイナス10%以下の月のみで計測した場合は0.97だった(図表3)。平均分散法では、リスク特性をリターンの標準偏差だけで表し、これは、両資産の相関係数がリターンの水準に関わらず全期間一定であることを前提としている。実際、図表2の均等ポートフォリオの理論値は、両資産の相関係数を0.83として計算したものである。過度な下振れ期では相関係数が高くなるため、平均分散法では十分に対応しきれないと言える。
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水野 友理那
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(2020年01月08日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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