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- 貸出・マネタリー統計(19年10月)~現金通貨の伸びが約7年半ぶりに2%割れに、投資信託はプラス圏へと急回復
2019年11月12日
1.貸出動向: 地銀貸出の伸び率が久々に上昇
(貸出残高)
11月11日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、10月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.18%で前月(同2.18%)から横ばいとなった(図表1)。
業態別では、都銀等の伸び率が前年比2.00%(前月は2.05%)と3ヵ月連続で低下した(図表2)。M&Aに絡む資金需要などから伸び率の水準としては近年の平均よりも高めだが、伸び率が大口M&Aに左右されやすくなっている。
一方、地銀(第2地銀を含む)の伸び率は前年比2.34%(前月は2.29%)と若干上昇した(図表2)。地銀では、過熱が問題視されたアパートローンのほか、中小企業向けや地公体向け貸出の低迷などから、伸び率の低下が続いてきたが、小幅ながら8カ月ぶりに上昇に転じた(図表3)。
11月11日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、10月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.18%で前月(同2.18%)から横ばいとなった(図表1)。
業態別では、都銀等の伸び率が前年比2.00%(前月は2.05%)と3ヵ月連続で低下した(図表2)。M&Aに絡む資金需要などから伸び率の水準としては近年の平均よりも高めだが、伸び率が大口M&Aに左右されやすくなっている。
一方、地銀(第2地銀を含む)の伸び率は前年比2.34%(前月は2.29%)と若干上昇した(図表2)。地銀では、過熱が問題視されたアパートローンのほか、中小企業向けや地公体向け貸出の低迷などから、伸び率の低下が続いてきたが、小幅ながら8カ月ぶりに上昇に転じた(図表3)。
(主要銀行貸出動向アンケート調査)
日銀が10月23日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2019年7-9月の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は3と前回(2019年1-3月)の▲2から上昇した。上昇は3四半期ぶりであり、D.I.の水準も2四半期ぶりにプラス圏(すなわち、「増加」との回答が優勢)に回復した(図表5)。
企業規模別では、大企業向けは▲4(前回は▲5)と前回からほぼ横ばいに留まったが、中小企業向けが4(前回は▲1)へと持ち直したことが全体の回復に寄与した(図表6)。中小企業向けでは、製造業の持ち直しが顕著になっており、需要が「(やや)増加」とした先にその要因を尋ねた問いでは、「設備投資の拡大」、「手許資金の積み増し」を挙げた先が多かった。
また、個人向け資金需要判断D.I.も8と、前回の▲1から上昇し、プラスに転じた(図表5)。D.I.の水準は2017年7-9月以来の高水準にあたる。主力の住宅ローンが5(前回は▲1)へと回復したことが寄与した。住宅ローン需要が「(やや)増加」とした先にその要因を尋ねた問いでは、「住宅投資の拡大」を挙げた先が最も多かった。消費増税前の駆け込み資金需要が一部銀行で発生した可能性もあるが、前回増税前(2014年1-3月)の住宅ローンD.I.が14であったことを鑑みると、その規模は限定的であったとみられる。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けD.I.が▲1、個人向けが▲3となった。企業向け・個人向けともに、資金需要の弱含みが見込まれており、消費増税に伴う国内需要の落ち込みが一部で警戒されている可能性がある(図表5)。
日銀が10月23日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2019年7-9月の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は3と前回(2019年1-3月)の▲2から上昇した。上昇は3四半期ぶりであり、D.I.の水準も2四半期ぶりにプラス圏(すなわち、「増加」との回答が優勢)に回復した(図表5)。
企業規模別では、大企業向けは▲4(前回は▲5)と前回からほぼ横ばいに留まったが、中小企業向けが4(前回は▲1)へと持ち直したことが全体の回復に寄与した(図表6)。中小企業向けでは、製造業の持ち直しが顕著になっており、需要が「(やや)増加」とした先にその要因を尋ねた問いでは、「設備投資の拡大」、「手許資金の積み増し」を挙げた先が多かった。
また、個人向け資金需要判断D.I.も8と、前回の▲1から上昇し、プラスに転じた(図表5)。D.I.の水準は2017年7-9月以来の高水準にあたる。主力の住宅ローンが5(前回は▲1)へと回復したことが寄与した。住宅ローン需要が「(やや)増加」とした先にその要因を尋ねた問いでは、「住宅投資の拡大」を挙げた先が最も多かった。消費増税前の駆け込み資金需要が一部銀行で発生した可能性もあるが、前回増税前(2014年1-3月)の住宅ローンD.I.が14であったことを鑑みると、その規模は限定的であったとみられる。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けD.I.が▲1、個人向けが▲3となった。企業向け・個人向けともに、資金需要の弱含みが見込まれており、消費増税に伴う国内需要の落ち込みが一部で警戒されている可能性がある(図表5)。
2.マネタリーベース: 紙幣発行高の伸びがさらに低下
11月5日に発表された10月のマネタリーベースによると、日銀による通貨供給量(日銀当座預金+市中に流通する紙幣・貨幣)を示すマネタリーベースの前年比伸び率は3.1%と、前月(同3.0%)を若干上回った(図表7)。伸び率の上昇は2ヵ月連続となる。内訳の約8割を占める日銀当座預金の伸び率が前年比3.3%(前月は3.2%)と2ヵ月連続でやや上昇したことが寄与した(図表8)。
一方、日銀券(紙幣)発行高の伸びは前年比2.3%(前月は同2.4%)と6ヵ月連続で低下した。伸び率の水準は、2012年9月以来7年ぶりの低水準にあたる。タンス預金の増勢一服、キャッシュレス化の進展、経済活動の停滞などの影響が考えられる。
10月末のマネタリーベース残高は523兆円で前月末比2.6兆円の増加となった。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても前月比2.8兆円増と4ヵ月ぶりの増加幅となった(図表9)。日銀の長期国債保有残高の増加ペースは前年比20兆円増(めどは80兆円増・図表10)と引き続き縮小し、マネタリーベースの鈍化要因になっているが、短期国債の残高減少が一服していること、9月以降、マネタリーベースの吸収要因である国債(短期を含む)の発行超(発行-償還)が縮小していることが下支え要因になっている。
ただし、日銀は金利の過度の低下を抑制するために国債買入れの減額を続けており、今月も一部減額に踏み切っているだけに、引き続きマネタリーベースへの鈍化圧力は続いている。
一方、日銀券(紙幣)発行高の伸びは前年比2.3%(前月は同2.4%)と6ヵ月連続で低下した。伸び率の水準は、2012年9月以来7年ぶりの低水準にあたる。タンス預金の増勢一服、キャッシュレス化の進展、経済活動の停滞などの影響が考えられる。
10月末のマネタリーベース残高は523兆円で前月末比2.6兆円の増加となった。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見ても前月比2.8兆円増と4ヵ月ぶりの増加幅となった(図表9)。日銀の長期国債保有残高の増加ペースは前年比20兆円増(めどは80兆円増・図表10)と引き続き縮小し、マネタリーベースの鈍化要因になっているが、短期国債の残高減少が一服していること、9月以降、マネタリーベースの吸収要因である国債(短期を含む)の発行超(発行-償還)が縮小していることが下支え要因になっている。
ただし、日銀は金利の過度の低下を抑制するために国債買入れの減額を続けており、今月も一部減額に踏み切っているだけに、引き続きマネタリーベースへの鈍化圧力は続いている。
3.マネーストック: 現金通貨の伸びが2%割れに、投資信託はプラス圏へと急回復
11月12日に発表された10月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比2.45%(前月は2.39%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.06%(前月は2.01%)とともに3ヵ月連続で上昇した(図表11)。
M3の内訳では、現金通貨(前月2.21%→当月1.99%)の伸び率が低下、2012年3月以来の2%割れとなる一方、普通預金等の預金通貨(前月5.55%→当月5.60%)の伸び率が上昇したほか、定期預金などの準通貨(前月▲2.05%→当月▲1.95%)の伸び率もマイナス幅を縮小している(図表12)。
M3の内訳では、現金通貨(前月2.21%→当月1.99%)の伸び率が低下、2012年3月以来の2%割れとなる一方、普通預金等の預金通貨(前月5.55%→当月5.60%)の伸び率が上昇したほか、定期預金などの準通貨(前月▲2.05%→当月▲1.95%)の伸び率もマイナス幅を縮小している(図表12)。
なお、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比2.14%(前月は1.80%)と大きく上昇した(図表11)。
内訳では、既述の通り、M3の伸び率がやや上昇したほか、残高が大きい金銭の信託(前月2.40%→当月2.61%)、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース・前月▲1.52%→当月3.55%)の伸び率が上昇し、広義流動性全体の伸び率上昇に寄与した(図表13)。
とりわけ、投資信託は急回復を見せた。伸び率は2016年12月以来約3年ぶりにプラス圏に浮上し、残高も90兆円台を回復している(図表14)。10月は米中協議で部分合意に向けた前向きな動きが生じたタイミングであるため、家計や企業やリスク選好的になり資金流入が発生した可能性もあるが、残高の増加幅(前月比で4兆円増)が統計開始以来で突出して大きいだけに、特殊要因が働いた可能性もある。
内訳では、既述の通り、M3の伸び率がやや上昇したほか、残高が大きい金銭の信託(前月2.40%→当月2.61%)、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース・前月▲1.52%→当月3.55%)の伸び率が上昇し、広義流動性全体の伸び率上昇に寄与した(図表13)。
とりわけ、投資信託は急回復を見せた。伸び率は2016年12月以来約3年ぶりにプラス圏に浮上し、残高も90兆円台を回復している(図表14)。10月は米中協議で部分合意に向けた前向きな動きが生じたタイミングであるため、家計や企業やリスク選好的になり資金流入が発生した可能性もあるが、残高の増加幅(前月比で4兆円増)が統計開始以来で突出して大きいだけに、特殊要因が働いた可能性もある。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年11月12日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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