2019年11月01日

【9月米個人所得・消費支出】個人所得(前月比)は+0.3%、消費支出は同+0.2%と市場予想通りの結果

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得、個人消費ともに市場予想通りの結果

10月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は9月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月改定値:+0.5%)となり、+0.4%から上方修正された前月値を下回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%に一致した(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月改定値:+0.2%)と、+0.1%から上方修正された前月値、市場予想(+0.2%)に一致した。また、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)も+0.2%(前月改定値:+0.2%)と、こちらも+0.1%から上方修正された前月値、市場予想(+0.2%)に一致した(図表5)。貯蓄率1は8.3%(前月:8.1%)と、前月値から+0.2%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比横這い(前月:横這い)と前月値、市場予想(横這い)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比横這い(前月:+0.1%)と、こちらは前月、市場予想(+0.1%)を下回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.3%(前月:+1.4%)と前月、市場予想(+1.4%)を下回った。コア指数は+1.7%(前月:+1.8%)と、こちらは前月を下回ったものの、市場予想(+1.7%)には一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:所得対比で消費余力を残す状況

名目個人消費(前月比)は7月に+0.5%と高い伸びとなったものの、8月、9月ともに小幅な伸びに留まっているほか、可処分所得の伸びを下回っており、貯蓄率は7月の7.8%から9月は8.3%と19年3月(8.4%)の水準となった。
(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 このため、個人消費は所得対比では抑制されており、消費余力を残す形となっている。

労働市場の回復持続、高水準の消費者センチメントなど消費を取り巻く環境は依然として良好となっており、消費は今後も堅調な伸びが期待される。米国では今月末から年末にかけて個人消費をみる上でもっとも重要な年末商戦の時期に入る。全米小売業協会は今年の年末商戦売上高の見通しを前年比で+3.8%~+4.2%と過去5年平均(同+3.7%)よりも高い水準で予想しており、米消費動向を見極める上で年末商戦の動向が注目される。
 
物価は(前年同月比)は、総合指数が18年11月以来、FRBが物価目標としている2%の水準を下回っているほか、物価の基調を示すコア指数も19年1月以来、2%の水準を下回る状況が持続しており、物価上昇圧力は抑制された状況が持続している。

3.所得動向:利息配当収入が高い伸びを示すも、賃金・給与所得は低調な伸び

個人所得の内訳をみると、賃金・給与が横這い(前月:+0.6%)と高い伸びとなった前月の反動もあって、16年2月(▲0.2%)以来の低調な伸びとなった(図表2)。また、自営業者所得も前月比+0.4%(前月:+2.3%)と高い伸びとなった前月から大幅に伸びが鈍化した。これは、農家に対する農業補助金で農家の所得が前月比+26.5%(前月:+107.3%)と倍増した前月から伸びが鈍化した影響が大きい。一方、利息配当収入は+0.9%(前月:▲0.5%)と前月から19年4月(+1.4%)以来となる大幅なプラスに転じた。

一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、9月が+0.3%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。さらに、価格変動の影響を除いた実質ベースでも+0.3%(前月:+0.5%)とこちらも前月から伸びが鈍化する結果となった。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:非耐久財が2ヵ月連続で減少

9月の名目個人消費(前月比)は、財消費が横這い(前月:横這い)となった一方、サービス消費が+0.2%(前月:+0.3%)と前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費では、耐久財が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持したものの、非耐久財が▲0.1%(前月:▲0.1%)と2ヵ月連続でマイナスとなった。

耐久財では、自動車・自動車部品が+1.0%(前月+0.2%)と前月から伸びが加速した一方、家具・家電が▲0.2%(前月:+0.7%)、娯楽財・スポーツカーも▲0.1%(前月:+0.7%)とマイナスに転じるなど、まちまちの結果となった。

また、非耐久財では衣料・靴が+0.4%(前月:▲0.4%)と前月からプラスに転じた一方、食料・飲料が▲0.1%(前月:+0.2%)とマイナスに転じたほか、ガソリン・エネルギーが▲1.7%(前月:▲3.1%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。

サービス消費は、外食・宿泊が+0.1%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じたほか、住宅・公共料金が+0.3%(前月:+0.1%)と伸びが加速した。しかしながら、娯楽が+0.2%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化したほか、金融サービスが▲0.2%(前月:+0.8%)とマイナスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格が前月比、前年同月比ともに物価を押上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲1.3%(前月:▲2.0%)と2ヵ月連続でマイナスとなった(図表6)。一方、食料品価格指数は横這い(前月:▲0.2%)とこちらは僅かながらプラスに転じた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が▲4.8%(前月:▲4.5%)と5ヵ月連続のマイナスとなった(図表7)。一方、食料品価格指数は+0.8%(前月:+0.8%)とこちらは17年7月以来27ヵ月連続のプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2019年11月01日「経済・金融フラッシュ」)

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