- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 社会保障制度 >
- 医療保険制度 >
- 医師の分布構造-今後増加する高齢の医師には、どういう医療を担ってもらうか?
医師の分布構造-今後増加する高齢の医師には、どういう医療を担ってもらうか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――はじめに
本稿では、医師の分布にスポットライトをあてて、その構造をみていくこととしたい。
2――医師の年齢ごとの推移
1|医師資格の付与は、時代ごとに異なる
医師になるには、医師資格が必要である。そこで、医師になろうとする若者は、医学の研鑽を積んで医師資格の取得を目指す。ただし医師資格の付与は、各時代ごとに異なってきた。
戦前、国公立大学の医学部および医学校を卒業した者や、文部大臣の指定を受けた私立大学の医学部や医学校の卒業者には、無試験で医師免許が与えられていた。特に、1937年の日中戦争勃発以降1945年の第二次世界大戦終戦までの戦時下には、軍医として医師の増員が要望され、大学の臨時附属医学専門部や医学専門学校が各地に新設された。また、医学の教育年限の短縮も図られた。これにより、1920年代生まれの世代から多くの医師が生まれた。1
戦後、1946年に医師の国家試験が開始された。1949年には新たな学制がスタートし、戦前の大学医学部や医学校は、新制大学に移行した。医学専門学校は新制大学に転換されるものと、廃止されるものに二分された。そして、各大学には定員が設定された。定員数は、1960年代まで毎年3,000人前後とされていた。1970年代には、医学部未設置県の解消を図るために一県一医大構想が掲げられて、医学部が新設され、定員数が引き上げられた。1980年代半ばには、8,000人台でピークを迎えた。1979年の琉球大学医学部以降、医学部の新設はなく、定員数は8,000人程度で推移した。2010年頃より、既存医学部の定員増や2つの医学部の新設が行われた2。2019年度に、定員数は9,420人となっている。
1 1945年には、医学部、医学校の定員と、医学専門部、医学専門学校の入学者数の合計は1万人を超えており、現在(2019年度)よりも多かった。(「医学部入試の変遷と今後の方向」石原賢一(日本内科学会雑誌104巻12号, 2015年)を参考に、筆者がまとめた。)
2 2016年に東北医科薬科大学、2017年には国際医療福祉大学が、医学部を開設した。
3 本稿では、医師数は、医療施設従事医師数を表すこととする。なお、図表2以降の図表の出典は、いずれも「医師・歯科医師・薬剤師調査」(厚生労働省)。
つぎに、この同じグラフから、1970年代の定員数の増加の影響を読みとってみよう。1970年代の定員増加は、1950年代生まれ以降の世代に影響している。1950年代生まれは、1996年には40歳前後、2016年には60歳前後となっている。グラフをみると、この世代以降は、それ以前の世代よりも医師数が多いことがわかる(青点線枠囲み)。将来を見通すと、この世代は2026年には70歳前後、2036年には80歳前後と高齢にシフトするため、今後、高齢の医師は増加するものとみられる。
3――女性医師割合の変化
4 「女性医師キャリア支援モデル普及推進事業の成果と今後の取組について」(平成29年度女性医師キャリア支援モデル普及推進事業に関する評価会議(資料3), 厚生労働省, 2018年3月14日)に掲載のグラフより、筆者が読みとったもの。
5 ただし、85歳以上などの超高齢層では、男女の平均寿命の違いにより女性医師割合が高まる。(85歳以上では、12.5%)
4――病院・診療所別の医師の分布
6 このように、個別要素ごとにみた場合と総計でみた場合とで、割合の大小関係が異なるケースは、「シンプソンのパラドックス」として知られている。詳しくは、「シンプソンのパラドックス-合計で見ると、結果が変わる?」篠原拓也(ニッセイ基礎研究所, 研究員の眼, 2017年5月2日)を参照いただきたい。
(2019年10月15日「基礎研レター」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
篠原 拓也のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/28 | リスクアバースの原因-やり直しがきかないとリスクはとれない | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/04/22 | 審査の差の定量化-審査のブレはどれくらい? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
2025/04/15 | 患者数:入院は減少、外来は増加-2023年の「患者調査」にコロナ禍の影響はどうあらわれたか? | 篠原 拓也 | 基礎研レター |
2025/04/08 | センチネル効果の活用-監視されていると行動が改善する? | 篠原 拓也 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~ -
2025年04月30日
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話) -
2025年04月30日
米中摩擦に対し、持久戦に備える中国-トランプ関税の打撃に耐えるため、多方面にわたり対策を強化 -
2025年04月30日
米国個人年金販売額は2024年も過去最高を更新-トランプ関税政策で今後の動向は不透明に- -
2025年04月30日
ふるさと納税のピットフォール-発生原因と望まれる改良
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【医師の分布構造-今後増加する高齢の医師には、どういう医療を担ってもらうか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
医師の分布構造-今後増加する高齢の医師には、どういう医療を担ってもらうか?のレポート Topへ