2019年08月26日

外貨建て資産のパフォーマンス評価について-より良い投資選択をする方法-

金融研究部 専務取締役 部長 CFA   安孫子 佳弘

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4―― 一般的なパフォーマンス測定では問題が生じうる

【表2】が実績値だとして、アクティブ株式運用を想定し、投資ウェイトを以下の【表5】のようにアクティブに変更した場合のパフォーマンス分析をしてみたい。実績は【表6】のようになる。
【表5】アクティブアロケーション想定
【表6】アクティブアロケーションの投資パフォーマンス実績想定
上記の【表5】と【表6】を前提にパフォーマンス実績を分析する一般的な方法だと、以下の【表7】のようになる。株式銘柄選択はウェイト×(実績-各国indexリターン)、株式市場選択と通貨選択は(ウェイト-25%)×(各国indexリターンor各国金利-index合計リターン)で計算している。
【表7】パフォーマンス分析<一般的な方法>
一番の問題点はアクティブリターン8.385%とパッシブリターン7.75%の差である超過収益の+0.635%と上記表の合計である▲1.265%の符号が逆で、差の1.900%が不明となることである 。

また、内容的には株式市場の選択で本来であれば株式リスクプレミアムが相対的に大きい日本株市場のオーバーウェイト(indexで25%のところを60%に)は株式市場選択でパフォーマンス評価上、プラス評価となるべきところ、マイナス評価となっている等、このケースにおいては正当なパフォーマンス評価の分析とは言い難い結果となっている。

それではリスクプレミアムに注目したパフォーマンス分析ではどうなるか見てみよう。
 

5―― リスクプレミアムに注目したパフォーマンス測定

5―― リスクプレミアムに注目したパフォーマンス測定

まず最初に【表2】【表6】を元に、(1)外貨建て資産の外貨建てリスクプレミアム、(2)外貨建てリスクフリーレート+為替リターン、に分けると、以下の【表8】ようになる。
【表8】リスクプレミアムに注目した方法
これを元に【表7】での分析で、株式リターンをリスクプレミアムリターン、為替リターンを円換算金利に変更すると【表9】のようになる。尚、株式銘柄選択は一般的な方法と全く同じである。

この【表9】の分析に基づくと、超過収益の内訳の合計欄がアクティブ運用の超過収益の数値と完全に一致し、不明な部分がなくなる。また、オーバーウェイトすべき日本株式のオーバーウェイトが大幅にプラス寄与とされており、正しく評価、分析されていることが分かる。
【表9】パフォーマンス分析-リスクプレミアムに注目した方法

6―― 最後に

6―― 最後に

これまで、繰り返し述べてきたように外貨建て資産リターンについては各資産のリスクプレミアムに注目し、
(1)「外貨建て資産外貨リターン」+「為替リターン」 ではなく、
(2)「外貨建て資産外貨リターン-現地通貨金利」+「現地通貨金利+為替リターン」
に分解して見ていく方が、パフォーマンス分析のみならず、アロケーションや投資方針を決めていく際に、より良い手法であると考えられる。

無論、こうした分析手法を適切に活用するためには、各国の為替や金利の動向、金融・証券市場、政治状況等のファンダメンタル分析が不可欠であり、このモデル自体は分析手法の1つに過ぎない。

また、具体例で示した数値が現実的にありうるのかという点も当然ながら問題視されうる。実際、多くの先進国で低金利が長期間継続しており、リスクフリーレートを引いても手数料等を考慮すると、誤差の範囲内と見ることも合理的かもしれない。実務的に面倒という批判もあるであろう。

しかし、本稿で示した考え方や手法自体は有効であると考えており、現時点でも、高金利国への投資等、金利がゼロから乖離している場合には有益な手法であると思う。

今後、各投資家が実際に投資をする際に、より適切な投資分析や投資意思決定のために、今回ご紹介した考え方や手法が有効活用されていくことを期待したい。
 

補足

【補足】

今回説明した各資産リスクプレミアムに注目する方法は決して新しいものではなく、むしろ証券投資理論においては古典的な考え方であると言える。

例えば有名なCAPM(資本資産価値モデル)の式は以下の通りである。

Ri = Rf + βi( Rm - Rf ) ---------  (1)式

Ri=i証券のリターン、Rf=リスクフリーレート、Rm=証券市場全体のリターン、

βi=i証券のベータ(証券市場全体の動きとの連動性)

(1)式は容易に次のように変換できる。

Ri - Rf = βi( Rm - Rf ) ---------  (2)式

(2)式の左辺はi証券のリスクフリーレートを上回るリスクプレミアムであり、右辺は証券市場全体のリターンがリスクフリーレートを上回るリスクプレミアムである。

(2)式の右辺と左辺、つまりリスクプレミアムの連動性(相関係数)がβiとなっていることが分かる。

このようにリスクフリーレートを上回るリスクプレミアムに注目するという手法は、特段新しいものではなく、オーソドックスな考え方であるということがお分かりいただけると思う。

【参考文献】
・ Denis S. Karnosky, Ph.D.,Brian D. Singer, CFA, Brinson Partners, Inc., Feb 1994 ”Global Asset  Management and Performance Attribution”, The Research Foundation of The Institute of CFA
・ Brealy, Myers and Allen “Principles of Corporate Finance”(MBAファイナンスでの必読教科書)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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金融研究部   専務取締役 部長 CFA

安孫子 佳弘 (あびこ よしひろ)

研究・専門分野
資産運用、運用リスク管理

(2019年08月26日「基礎研レポート」)

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