コラム
2017年09月01日

正しい投資への道~失敗しないための具体的な方法のいくつか~

金融研究部 常務取締役 部長 CFA   安孫子 佳弘

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「正しい投資」、つまり目的に適った一番効果がある投資をするのにはどうしたら良いだろうか。

そのためには、まず、適切な「投資の目的」の設定が必要だが、これが案外難しい。投資の目的を適切に設定するためには、投資期間の設定と、投資家による投資成果の明確なイメージ、できれば具体的な中間・最終の数値目標等があると良い。

もし、投資の目的が「老後の生活資金の確保」という大きな目的であれば、投資成果のイメージと具体的な数値目標設定のために、投資する人の年齢や財産状況、今後の収入見込み等も考慮しなければならない。投資成果の評価も難しい。これは投資の成果が時間と共に変化する一方で、投資の成果に対する評価が投資する人の期待によってかなり違うからだ。以上の点は前稿で詳しく述べた。
 
こうしたことを自分だけで考えるのは大変なので、実際には信頼できる金融機関や詳しい知人等に相談するのが近道であるが、もちろん、自分自身で情報収集して、自分なりに真剣に考えるというのも大切だと思う。一般的な個人投資家がパソコンや金融機関窓口で投資をする際に、有益と思われる、やった方が良いこと、やらない方が良いことについて、いくつか私見を述べてみたい。
 
(1)前稿でも述べ、繰り返しになるが、投資の本質は、リスクを取らないとリターンは得られないことにある。一方で、リスクを取ってもリターンを得られるとは限らないことも忘れてはならない。

これが投資をする際の大前提である。「素晴らしい投資」やシミュレーションでの良すぎるリターンは要注意である。この点は何度繰り返しても良いくらい重要である。
 
(2)少額投資非課税制度=NISA(ニーサ)、個人型確定拠出年金=iDeCo(イデコ)等、政府が個人向けに用意した投資促進の仕組みは、節税メリットがあるため、制度の概要を理解した上で利用しないともったいない。

但し、例えばNISAでは節税メリットがある一方で、損益通算できない等の各種制約があると共に、節税メリットはプラスのリターンがある場合にだけ享受できることを理解する必要がある。例として投資期間5年でNISAで投資する一般的なケースであるが、年120万円の節税枠全部を国内債券系に投資し、年0.1%のリターンだった場合、通常の投資では、年間リターン1200円の約20%が源泉徴収されるので、NISAでは約240円が実際の節税金額となる。一方、年120万円全額を日経225ファンドに投資し、5年間の内どこかで累計20%のリターンとなった場合に売却すれば、リターン24万円の約20%の約4万8000円が節税金額となる。このようにNISAでそこそこの節税メリットを得るためには、一定以上のリターンが期待できるリスクが高い投資商品を選ぶべきであろうと思う。低リスクの投資をわざわざNISAで選択する必要はないのではないだろうか。

もちろん、投資においては、値上がりが期待できるというのは、同様に値下がりするリスクもあるということだ。下がったら買うとか、上がったら売るとか自分で随時判断していくか、または投資する商品を数種類に分散したり、ドルコスト平均法等で投資のタイミングを分散するなど、投資の工夫が必要であろう。信頼できる金融機関の窓口でのアドバイスや各種セミナーも有益であると思う。

尚、個人型確定拠出年金(iDeCo)は「老後の生活資金の確保」用なので、短期的な節税メリットではなく、長期的な資産形成という観点で、慎重に検討して投資選択すべきである。
 
(3)投資の初心者はインデックス(パッシブ)商品の投資からはじめてはどうか。

インデックス商品はNIKKEI225、TOPIX、BPI等の各種指標(インデックス)に連動する運用を図る商品で、一般の個人投資家の場合、インデックスに連動するETFか公募投資信託が投資対象となる。インデックスには国内株式、外国株式、国内債券、外国債券、国内REIT、外国REIT等のカテゴリーがあるので、各カテゴリーを組み合わせて、各カテゴリーの中で手数料が安いインデックス商品を選べば良いと思う。インデックス商品の場合、同じインデックスであれば手数料控除前のリターンは投資商品間での違いはほとんどないが、公募投資信託の場合には手数料は結構異なるので、当たり前だが安い方が良いだろう。過去3年とか5年の実績を見て、手数料控除後の実際のリターンが良いファンドを選べば良い。投資信託であれば「基準価格の騰落率(税引前分配金再投資)」を年数で割って、毎年かかる運用管理費用と監査費用と購入時だけにかかる購入時手数料等を引けば実際のリターンが出る。普通は売買を前提とするので、購入時手数料が無い商品を選ぶのが良いと思う。

難易度は上がるが、アクティブ系やスマートベータ系を選びたいのであれば、一定以上の残高があって、手数料控除後でリターンが良好なファンドから選ぶのが無難であろう。Web上で各種ファンド比較が掲載されているので、それを参考にするのも良いと思う。手数料のチェックは重要である。
 
(4)参考に私が現時点でどう考えているかを紹介する。今は低金利なので、国内債券系商品への投資は、今後金利が上昇していくと価格が下がるので控えたい。現状、国内債券系ファンドは、手数料を引くとマイナスのリターンになる投資商品が多いのではないかと思う。いつになるかは分からないが、日銀の目論見通りに物価が上がり、金利が上昇して、債券のインカム収益が満足できるレベルになったら、その時に投資を再開したい。

国内外のREITは不動産からの賃料を主な収益源とし、その大半を分配する仕組みなので、インカム収益は安定しており相対的に高水準である。価格変動リスクはあるが、長期保有でインカムを得るという意味で継続的にETFや投資信託に投資していきたい。また、規模が大きめで配当利回りが高い国内の個別REITへの投資を検討しても良いと思う。

国内株式も配当水準レベルが近年上昇してきており、国内債券よりは高いインカム収益が望めるので一定割合は投資したい。詳しい説明は省くが、私は、株であれば何らかの選択基準がある、NIKKEI225やJPX400等のなるべく銘柄数の少ないインデックスまたはスマートベータ系のETFや投資信託が良いと思う。

外国株式は日本より高成長を期待できる外国企業への投資であるため、一定割合はETFや投資信託で投資したい。為替はオープンでヘッジしない。現状ではヘッジコストが高く、リターンに見合わないと考えているからである。

外国債券は日本ほど低金利ではないものの、先進国中心に今後金利上昇が見込まれるため、大きなウエイトで投資する時期ではなく、無理に投資しなくても良いと考えている。リスク分散のため、少ないウエイトで投資する場合は、投資情勢変化に即応する必要があるため、プロがアロケーションを適宜判断するアクティブ系の投資信託を選択したい。為替はオープンでヘッジしない。
 
なお、投資のカテゴリーに関わらず、インカム収益は実力ベースでみるべきであるので、投資信託であれば、元本を取り崩す特別分配金を出し続けて基準価格が長期にわたって下落し続けているようなファンドは選ばない。
 
以上見てみると、私はインカム重視で、価格変動はなんとかなる、たぶん長期的には価格は上がると考えており、やや楽観的傾向であるのが分かる。こういう投資への感覚や好みは前述したように、人それぞれ違うので、あくまでご参考ということになる。
 
(5)確定拠出年金や投資信託等で「老後の生活資金の確保」のためのポートフォリオを作る場合は、投資商品選びは真剣に考えるべきだと思う。この低金利下では、確定拠出年金で元本保証型の運用商品に全額投資というのはお勧めできない。リスクは無いとの判断であろうが、実際はリターンを得られず十分な資産形成ができないというリスクを負っている。特に、金利が極めて低い銀行預金に長期間投資するのは、得策ではないと思う。確定拠出年金では、銀行預金は他の投資をするタイミングを計るために、一時的に保有する待機資金用ということになろう。銀行預金は確定拠出年金でなくても普通にできる。ただ、以上を分かった上で、節税メリットだけ享受するという考え方はある。

なお、「老後の生活資金の確保」という目的であれば、終身年金である公的年金等と合わせ、確定拠出年金の終身年金で十分な水準の年金となるのであれば、死亡するまでもらえる終身年金も有効な選択肢の一つとなる。

年金支給の方法を選択する際に「長生きする自信が無く、損するかもしれないから、15年確定年金を選ぶ」という人がいるが、これは「投資の目的」が「老後の生活資金の確保」でなく「損をしない投資」になっているということだ。もちろん、「投資の目的」の設定は各自の責任で自由であり、どちらでも良いが、長生きするリスクと生活資金や収入を踏まえ、「投資の目的」をどちらにすべきかを考えるべきであろう。確定年金終了後は銀行預金だけで対応していくという場合、低金利だと残高を取り崩していくことになり、想定以上に長生きした場合、生活資金が足りなくなるリスクがある。

いずれにせよ、十分な「老後の生活資金の確保」のためには、銀行預金と資産運用、年金等の適切な組み合わせによる、定年までの資産形成が非常に重要となる。

若い方も、遠い将来の話と考えず、老後資金のシミュレーションを早めに実施し、できれば早い時期から、節約等も含めた計画的な資産形成を始めるべきだと思う。
 
(6)最後にお勧めするのは、少額で良いので実際にETFや投資信託に投資してみるということだ。NISAで、好きな企業や株主優待狙いで個別株を買っても良いと思う。

確定拠出年金(特に企業型)であれば、是非とも運営管理機関のWebページにアクセスして、自分の投資の状況を確認してほしい。そして大半が銀行預金なのであれば、運用内容をちょっとでも良いので見直してほしい。投資は、実際にやってみないと実感できない。短期間で損が発生した場合、我慢ならないのか、回復を期待して待てるのか。損が絶対嫌だという人には無理に投資はお勧めしないが、このままのリターンでどのくらいの資金が準備できるのかの試算は是非してほしい。リターンが無い前提で、単純に定年までの月々の掛け金合計が資産残高と考えても良い。繰り返しになるが、その資産と公的年金等の収入を合わせて、老後の生活資金がどうなるかを実際の数値で確認した上で、どう感じるかを自分自身で確認し、判断してもらいたい。

実際に株式等に投資を始めると、やはり「儲けたい」し、「損したくない」となるので、投資関係の情報収集にも熱心になるし、相場の感覚もつかめてくる人が多いと思う。そうなると自分の財産状況や将来の見通しに合った資産形成計画等にも興味が湧き、一層の情報収集や勉強にも励みが出て、経済・金融環境の変化に合わせて、自分のポートフォリオを変えていくということもできるようになるのではないかと思う。投資は難しく面倒なものだと思わず、是非とも面白いものだと実感してほしい。
 
なお、資産運用は60歳までという前提での資産形成プランや投資商品があるが、必ずしも資産運用は、定年とか年金支給開始時点で終了すべきものではないと思う。定年後や年金支給開始後は、リスクを取らず、銀行預金等の元本保証型や債券等の安定資産で運用すべきという意見もあるが、長生きするリスクを考えると、十分な収入や資産形成がない限り、このゼロ金利という低金利状況では、必ずしも合理的な判断ではないと思う。定年後も資産運用は重要な選択肢のひとつとなる。

但し、国内金利が十分に高ければ、銀行預金や国債等への投資が十分合理的であろうと思う。本稿のメインテーマとは異なるが、つくづく、長年にわたる低金利政策は、一般の国民から安全で確実な資産運用手段を奪っているのだと思う。100万円の預金や国債で1年間に数万円の利息が付いた時代もあったのである。私たちは、安定的な資産形成を阻害している現在の低金利政策にもっと怒っても良いのではないだろうか。これで社会保険料や消費税だけが上がっていったらどうしたら良いのか。
 
そうぼやいても、現状の低金利下では、老後の生活資金の確保や資産形成のためには、自分の責任において、各自がもっと投資信託や株式等の投資、資産運用に興味を持ち、必要な情報収集をして、能動的にアクションを起さなければならないのだと思う。そうしたアクションに役に立つよう、今後も投資に関する実用的で有益な情報提供に努めていきたい。
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金融研究部   常務取締役 部長 CFA

安孫子 佳弘 (あびこ よしひろ)

研究・専門分野
資産運用、運用リスク管理

(2017年09月01日「研究員の眼」)

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