2019年08月06日

オフィス市況は好調維持。REIT市場は年初来高値圏で推移-不動産クォータリー・レビュー2019年第2四半期

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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1. 経済動向と住宅市場

2019年1-3月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比年率2.2%へ上方修正されて高い伸びとなった。ただし、その主因は国内需要の低迷を反映した輸入の減少と在庫の積み上がりによるもので国内景気は基調として弱い動きとなっている。経済産業省によると、4-6月期の鉱工業生産指数は前期比0.5%と2四半期ぶりに上昇したが前期(1-3月期)の大幅減産(▲2.5%)の後としては戻りが弱い(図表-1)。また、2019年6月の日銀短観によると、大企業・製造業の業況判断DIは+7(前期比▲5)となり2四半期連続で景況感が悪化した(図表-2)。
図表-1 鉱工業生産(前期比)/図表-2 日銀短観 業況判断DI(大企業)
ニッセイ基礎研究所は、6月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2019年度0.4%、2020年度0.8%を予想する(図表-3)1。10月に予定される消費税率引き上げの影響は前回時より小さくなる公算だが、米中貿易摩擦の激化や海外経済の減速などに伴う景気の下振れリスクに対して引き続き留意が必要である。
図表-3 実質GDP成長率の推移(年度)
住宅市場は価格が高値で推移するなか、首都圏では中古マンションの成約件数が伸びている。2019年4-6月期の新設住宅着工戸数は約23.3万戸(前年同期比▲4.7%)となり前期(1-3月、+5.2%)に増加した反動もあって減少に転じた(図表-4)。個人向けアパートローン融資の厳格化を背景に貸家が10カ月連続で減少する一方で、持家の着工が9カ月連続で増加した。国土交通省は「富裕層による面積の大きい持家の受注が増えており着工にも反映されている」としている。
図表-4 新設住宅着工戸数(全国、暦年比較)
2019年6月の首都圏のマンション新規発売戸数は2,259戸(前年同期比▲15.0%)と6カ月連続で減少し、4-6月累計では5,886戸(前年同期比▲21.1%)にとどまった(図表-5)。この結果、19年上期の販売戸数は13,436戸(前年同期比▲13.3%)、1戸当たりの平均価格は6,137万円(+2.9%)、㎡単価は90.7万円(+3.7%)、初月契約率は66.5%(▲0.2%)、販売在庫は7,438戸(+1,070戸)となった。
図表-5 首都圏のマンション新規発売戸数(暦年比較)
一方、東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2019年第2四半期の首都圏の中古マンション成約件数は9,679件(前年同期比3.6%)となり同四半期ベースで過去最高を記録した(図表-6)。新築に対する価格面での割安感に加えて、既存マンションのストックが拡充し購入者の選択肢が増えていることも中古の需要を押し上げている。また、日本不動産研究所によると、2019年5月の住宅価格指数(首都圏中古マンション)は前年比0.8%上昇し高値圏でもみあう動きとなっている(図表-7)。

今後の住宅市場については、今年10月の消費税率引き上げの影響や東京・晴海の五輪選手村跡地における開発プロジェクト「HARUMI FLAG(4,145戸)」の販売動向(7月開始)が注目される。
図表-6 首都圏の中古マンション成約件数(12カ月累計値)
図表-7 不動研住宅価格指数(首都圏中古マンション)

2. 地価動向

地価は引き続き上昇し上昇幅も拡大傾向にある。国土交通省の「地価LOOKレポート(2019年第1四半期)」によると、全国100地区のうち上昇が「97」、横ばいが「3」、下落が「0」となり、5期連続で上昇地区が9割以上を占めた(図表-8)。引き続き、繫華性や利便性の高いエリアでの不動産投資が活発で、今回「3~6%」上昇に「宮の森(札幌)」と「天王寺(大阪)」が加わるなど「3~6%」上昇の地点数は期を追う毎に増加している(「13」→「15」→「27」→「29」)。
図表-8 全国の地価上昇・下落地区の推移
一方、野村不動産アーバンネットによると、首都圏住宅地価格の変動率(2019年7月1日時点)は前期比0.1%となった(年間0.2%上昇)。「横ばい」を示した地点の割合は91.1%(前回92.3%)となり横ばいの傾向が続いている(図表-9)。
図表-9 首都圏の住宅地価格(変動率、前期比)
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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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