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年金を通して夫婦を考える(3)-やはり健康管理も重要だ

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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所得税法第九条で定める非課税所得の一つとして、恩給、年金その他これらに準ずる給付のうち、遺族の受ける恩給及び年金(死亡した者の勤務に基づいて支給されるものに限る)が掲げられている。税務大学講本 所得税法(平成30年度版)において、非課税所得はその趣旨によって6つに分類されており、遺族の受ける恩給及び年金は、非課税の趣旨が「社会政策的配慮(担税力)に基づくもの」のグループに分類されている。
最初に、共に老齢厚生年金を受給する夫と老齢基礎年金のみ受給する妻を前提に、夫の老齢厚生年金受給額が異なる2夫婦を比較する。一方は夫の老齢厚生年金受給額が月額12万円で夫が妻より先に亡くなる場合、他方は夫の老齢厚生年金受給額が月額9万円で妻が夫より先に亡くなった場合であるが、実は配偶者の死後に両者が受け取る受給総額に差はない。月額12万円の老齢厚生年金を受給する夫を亡くした妻は、遺族厚生年金月額9万円(12万円の75%)と自身の老齢基礎年金を受給し(図表1(1))、妻を亡くした夫は、引き続き老齢厚生年金月額9万円と老齢基礎年金を受給する(図表1(2))。しかし、妻が受け取る遺族厚生年金は非課税なので、所得税額の計算において課税扱いとなる所得金額に差が生じ、税負担や社会保険料負担にも差が生じることとなる。しかしながら、果たしてこの二人の間に担税力の差があると言えるのだろうか。
次に、共に老齢厚生年金受給額月額12万円を受給する夫を有するが、老齢厚生年金を受給できない妻と老齢厚生年金受給額月額6万円を受給する妻から構成される2夫婦を比較する。両夫婦とも夫が妻より先に亡くなった場合、老齢厚生年金を受給できない妻は、遺族厚生年金月額9万円(12万円の75%)と自身の老齢基礎年金を受給する(図表1(1))。一方、老齢厚生年金受給額月額6万円を受給する妻は、自身の老齢厚生年金月額6万円及び老齢基礎年金に加え、遺族厚生年金月額3万円も受給できる(図表1(3))。先の例と同様、両者が受け取る受給総額に差はないのに、前者は非課税の遺族厚生年金が多いため、課税扱いとなる所得金額に差が生じる。収入が公的年金だけならば、そもそも所得が少ないため税負担も社会保険料負担にも実態として差は生じないが2、個人年金など他の所得があれば、税負担や社会保険料負担に差が生じる。
1 研究員の眼「年金を通して夫婦を考える(1)-パートナーってありがたい」
2 妻が65歳未満の場合は、税負担や社会保険料負担に多少の差が生じる
3 研究員の眼「年金受給額アップの落とし穴-夫の健康管理も重要だ」
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年07月31日「研究員の眼」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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