- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 家計の貯蓄・消費・資産 >
- 年金を通して夫婦を考える(1)-パートナーってありがたい
年金を通して夫婦を考える(1)-パートナーってありがたい

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
公的年金だけで期待できる生活水準を客観的に俯瞰する
そのような反応が返ってくるのは、筆者が明確に説明しきれていないからだろうと少し反省している。筆者は老後にどの程度の生活水準を望むのかが重要なポイントだと考えているため、冒頭の質問に対しはっきり肯定も否定もできないのだが、公的年金だけで期待できる生活水準をもう少し客観的に説明できれば、少しは満足して頂けたのではないかと思う。そこで、平成28年国民生活基礎調査の概要と、平成26年財政検証を基に、公的年金だけで期待できる生活水準を客観的に俯瞰したい。
貧困には、必要最低限の生活水準が満たされていない状態の「絶対的貧困」、これに対して、ある地域社会の大多数よりも貧しい状態の「相対的貧困」という見方がある2。平成28年国民生活基礎調査の概要によると、相対的貧困状態にある人の割合(以下、相対的貧困率)は15.7%に及ぶ。相対的貧困状態にあるか否かは世帯の等価可処分所得によって判断する。等価可処分所得とは、可処分所得をベースに、世帯人員数を考慮し世帯の生活水準を表すよう調整したものである。具体的には、世帯人員数による生活コストの違いを考慮し、可処分所得を世帯人員数の平方根で割ることで得られる。なお、相対的貧困状態にあると判断されるか否かの分岐点である貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は、年額122万円である。
これに対し、平成26年財政検証によると、モデル世帯3が受け取る年金は月額21.8万円(年額261.6万円、2014年時点)だから、等価可処分所得は年額185.0万円(261.6万円÷√2)で、貧困線を大きく上回るが、年額185.0万円だと等価可処分所得の中央値(年額244万円)つまり、日本の中間層の等価可処分所得をはるかに下回る。現役世代とは異なり貯蓄に回す必要性が低下するとはいえ、年金だけで日本の中間層と同程度の生活水準を維持することは難しい。退職後も日本の中間層と同程度の生活水準を維持したければ、やはり老後に2~3千万円の資産を各世帯で用意する必要がある。しかしながら、これを理由に、貧困線を大きく上回る生活水準を維持できるモデル世帯が「公的年金だけでは生活できない」と公的年金制度に不平を言ったら、相対的貧困状態にある15.7%の人たちはどう思うだろう。
1 基礎研レポート「50代の半数はもう手遅れか-生活水準を維持可能な資産水準を年収別に推計する」
2 ユニセフT・NET通信45号(2010.4)参照
3 40年間厚生年金に加入し、その間の平均収入が厚生年金(男子)の平均収入と同額の夫と、40年間専業主婦の妻がいる世帯
恵まれているのはモデル世帯だけなのだろうか?
4 老齢厚生年金は標準報酬月額だけでなく標準賞与額の影響も受けるが、ここでは標準賞与額は標準報酬月額と概ね比例関係にあることを前提に計算している
中長期的にはどうだろう?
多くの場合、夫婦世帯もいずれは一方の単身世帯になる
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年07月17日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/30 | ふるさと納税のピットフォール-発生原因と望まれる改良 | 高岡 和佳子 | 基礎研レポート |
2025/04/03 | 税制改正でふるさと納税額はどうなる? | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
2025/02/26 | ふるさと納税、確定申告のススメ-今や、確定申告の方が便利かもしれない4つの理由 | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
2025/02/18 | ふるさと納税、事務負荷の問題-ワンストップ特例利用増加で浮上する課題 | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【年金を通して夫婦を考える(1)-パートナーってありがたい】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
年金を通して夫婦を考える(1)-パートナーってありがたいのレポート Topへ