- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 年金 >
- 公的年金 >
- 年金受給額アップの落とし穴-夫の健康管理も重要だ
コラム
2018年04月27日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
2016年10月から、一定の要件を満たせば週30時間以上働かなくても、週20時間以上働き、1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上ある人は厚生年金保険・健康保険の加入対象となった。加入対象の広がりを紹介する厚生労働省のHPには、加入するメリットが複数掲げられているが、サラリーマン等の妻で、配偶者の健康保険に加入している人(第3号被保険者)にとって最大のメリットは、将来もらえる年金が増えることだ。同HPには、月収88,000円を前提に、月々の保険料と加入年数別受取額も提示されている。保険料は月額8,000円で、40年間加入した場合の総支払額は384万円(8,000×12ヶ月×40年)に及ぶ。一方、厚生年金の受取額は年額231,500円なので、16年8ヶ月受給できれば、総受取額が総支払額を上回る。厚生年金の受給開始年齢が65歳なので、81歳8ヶ月まで生きれば元が取れる計算だ。女性の平均寿命はおよそ87歳なので、元が取れる可能性はかなり高い。
実は、この計算には嘘がある。夫が死亡した場合は話が異なるのである。夫が死亡した後、サラリーマンの妻は遺族厚生年金を受給できる1。遺族厚生年金の受取額は、夫の厚生年金の受取額の75%が原則だ。しかし、妻の厚生年金の受給権が発生した場合、遺族厚生年金の受取額が減額され、その程度は、夫の厚生年金の受取額と妻の厚生年金の受取額の大小関係によって決まる(図表1)。妻の厚生年金の受取額が夫の厚生年金の受取額より多い場合〔ケース1〕、遺族厚生年金は一切受給できない。しかし、妻の厚生年金を満額受け取れる。夫の厚生年金の受取額より少なくても、その半分以上ある場合〔ケース2〕、妻の厚生年金の受取額と遺族厚生年金の受取額の合計は減額される前の遺族厚生年金の受取額を上回る。しかし、夫の厚生年金の受取額の半分に満たない場合〔ケース3〕、遺族厚生年金から妻の厚生年金受取額と同額が減額され、減額される前の遺族厚生年金受取額と同額になる。結果的に、妻の頑張りは全く反映されない。
実は、この計算には嘘がある。夫が死亡した場合は話が異なるのである。夫が死亡した後、サラリーマンの妻は遺族厚生年金を受給できる1。遺族厚生年金の受取額は、夫の厚生年金の受取額の75%が原則だ。しかし、妻の厚生年金の受給権が発生した場合、遺族厚生年金の受取額が減額され、その程度は、夫の厚生年金の受取額と妻の厚生年金の受取額の大小関係によって決まる(図表1)。妻の厚生年金の受取額が夫の厚生年金の受取額より多い場合〔ケース1〕、遺族厚生年金は一切受給できない。しかし、妻の厚生年金を満額受け取れる。夫の厚生年金の受取額より少なくても、その半分以上ある場合〔ケース2〕、妻の厚生年金の受取額と遺族厚生年金の受取額の合計は減額される前の遺族厚生年金の受取額を上回る。しかし、夫の厚生年金の受取額の半分に満たない場合〔ケース3〕、遺族厚生年金から妻の厚生年金受取額と同額が減額され、減額される前の遺族厚生年金受取額と同額になる。結果的に、妻の頑張りは全く反映されない。
月収88,000円で40年間働いた妻の場合、妻の厚生年金の受取額は年額231,500円なので、ケース3とならないためには、夫の厚生年金の受取額が年額463,000円以下である必要がある。しかし、厚生年金を受給する男性の平均年額は150万円程度であり、実際はケース3となる可能性が高い。つまり、妻が支払った厚生年金保険料を上回る厚生年金を受け取るには、81歳8ヶ月より長く生きる必要があるが、妻が81歳8ヶ月になる前に夫が死亡すれば元は取れない。妻が働けるなら、収入や将来の年金受給額アップのために、頑張った方がいい。ただ、勤務年数や賃金の相違が原因で、夫の厚生年金の受取額の半分に届かないなら、夫が長生きするよう健康管理を怠らない事をお勧めする。
1 夫の老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある等、一定の要件がある
1 夫の老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある等、一定の要件がある
(2018年04月27日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1851
経歴
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/30 | ふるさと納税のピットフォール-発生原因と望まれる改良 | 高岡 和佳子 | 基礎研レポート |
2025/04/03 | 税制改正でふるさと納税額はどうなる? | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
2025/02/26 | ふるさと納税、確定申告のススメ-今や、確定申告の方が便利かもしれない4つの理由 | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
2025/02/18 | ふるさと納税、事務負荷の問題-ワンストップ特例利用増加で浮上する課題 | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【年金受給額アップの落とし穴-夫の健康管理も重要だ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
年金受給額アップの落とし穴-夫の健康管理も重要だのレポート Topへ