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平成の労働市場を振り返る-働き方はどのように変わったのか

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎
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1――はじめに

筆者が推計した構造失業率2は1990年代前半までは概ね2%台前半だったが、直近では2%台後半となっている。実際の失業率から構造失業率を差し引いた需要不足失業率は1980年代後半から1990年代初頭にかけての▲0.1%前後に対して、2018年中は▲0.3%程度となっている(図表2)。足もとの労働需給は平成初期のバブル期よりも引き締まった状態とみることができるだろう。
1 2012年12月に始まった第16循環の景気回復が2019年1月まで続いていれば、戦後最長を更新することになる。
2 欠員率(V)と失業率(U)の関係を表すUV 曲線を推定し、その両者が均衡する点を構造失業率とした。
2―就業者数増加の主役は女性、高齢者
次に、平成30年間の就業者数の推移を見ていこう。就業者数は平成が始まった1980年代終盤から1990年代初頭にかけて年100万人以上の大幅増加が続いた後、1990年代半ばにかけてほぼ横ばいの推移となった。失業率は1990年代前半には悪化し始めていたが、就業者数が減少に転じたのは1997年の消費税率引き上げやその後のアジア通貨危機などによって景気が大きく悪化した1998年であった。就業者数は1998年から2003年まで6年連続で減少した後、2004年からはやや持ち直したものの、2008年からは再び減少し2012年には6280万人となり、ピーク時の1997年(6557万人)から▲277万人の大幅減少となった。アベノミクスが始まった2013年からは6年連続で増加し、2018年にはようやく1997年の水準を上回る6664万人となった。平成30年間の就業者数の増加幅は653万人、この間の増加率は10.9%、年平均0.3%である。
一方、女性は幅広い年齢層で就業率が大きく上昇しているが、20歳代後半から30歳代半ば、60歳以上の上昇幅が特に大きい(図表7)。
日本の女性の労働力率(労働力人口/15歳以上人口)は結婚、出産期に当たる年代にいったん低下し、育児が落ち着いた後に再び上昇するという、いわゆる「M字カーブ」を描くことが知られてきたが、近年はM字カーブの底が浅くなってきている(図表8)。
1988年の女性の労働力率を年齢階級別に見ると、20~24歳が73.7%と最も高く、25~29歳、30~34歳にかけて急低下している。30~34歳の労働力率は50.9%と20~24歳に比べて20%ポイント以上も低くなっていた。その後、労働力率が全体として上昇する中で、M字の左側の山、谷が右方向にシフトするとともに、M字の谷が徐々に浅くなっている。2018年の山(25~29歳の83.9%)から谷(35~39歳の74.8%)までの低下幅は9.1%ポイントと30年前に比べて大きく縮小している。
3 配偶関係には未婚、有配偶のほかに死別・離別があるが、ここでは捨象している。
(2019年07月22日「ニッセイ基礎研所報」)

03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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